ペア・ファクトリーのYusukeです。皆さんは「ポモドーロ」という、仕事をするためのメソッドをご存じですか?簡単に説明すると、時間を25分の間隔に区切り、作業を行うとてもシンプルな時間管理術です。ただ、闇雲に25分ごとに作業を行うだけではなく、作業をする前の計画、作業後の振り返りなど、時間を有効に使うためのテクニックがポモドーロにはいくつもあります。今回は公式解説書『ポモドーロテクニック入門』を読み、ポモドーロを実践した感想をまとめました。
マルチタスクとシングルタスク
前提として、人間はマルチタスク(複数の作業を同時に行う)ではなく、シングルタスク(ひとつの作業を行う)が最も効率性を発揮するという事実があります。「今この瞬間に取り組む作業をひとつに絞る」ことは仕事の効率化に欠かせません。
ポモドーロは時間をあえて25分間に限定することで、今取り組むことをシンプルに提示します。
「この25分だけは、このことだけをやる」
こうしたシンプルな目的意識は生産性を向上させるための大切な要素です。
人の活動は3つに分けられる
まず、本書では人の活動は下記の3つに分けられると定義しています。
- 実行(ひとつの作業に集中して取り組む)
- 計画・管理・振り返り(全体を見通して、スケジュールを考える)
- 休息
いざ実行(作業を行う)の際には、ひとつのことに取り組む集中力が求められます。しかし、計画(スケジュールを考える)のときに求められるのは、俯瞰で物事を見渡す視野の広さです。相反する実行と計画、それぞれの性質を理解し、そのときに最適な意識と視点を持つことが重要だと本書で述べられています。
また、2つの異なる活動を混同するのはとても非効率です(たとえば作業をしながら、明日の予定を考えてしまうなど)。そのため、ポモドーロにおける「実行の25分間」には一度決めた作業を黙々と取り組みます。
簡単に消え去る決意
「選択と集中」
ビジネスに限らずあらゆる分野で耳にするキーワードです。
「今日はこの仕事を終わらせる!」
こうした決意を固めたにも関わらず、いつまで経ってもその作業が進展しないことがあります。原因はクライアントからの突然の連絡でしょうか?それとも、上司からのメール?あるいはパソコンを開いたら、別のやるべき作業を見つけてしまったこともありそうです。
割り込みの原因はいたるところに溢れています。ポモドーロはこれらの外部的・内部的な要因をできる限り排除し、ひとつのことに集中するための環境を実現するツールです。
「1ポモドーロ=25分間」は不可侵領域
ひとつの作業に集中する時間は25分間。このひとかたまりの時間を「1ポモドーロ」という単位で表します。1ポモドーロの25分間は、誰にも侵すことのできない神聖な時間です。「やるべきこと」を決め、タイマーをセット。作業がスタートしたら、その25分間はひとつのことを必ずやり通さなければなりません。もし、その作業を遮るなにかがやってきてしまった場合も、基本はすべて後回し。一度決めたことは最後まで完遂することがとても重要です。
しかし、予期せぬ緊急事態が飛び込んできたときはどうするのでしょう?
この場合はいま実行中のポモドーロを破棄し、割り込みの案件に対処します。たとえ、25分の内の24分まで作業が進んでいたとしても、そのポモドーロを破棄して記録に残さないことが絶対のルールなのです(厳しい!)。
なぜ25分間なのか?
著者によると、いろいろと試行錯誤した結果、「20分は短すぎる、40分以上だと長すぎる」という結論に至ったと書いていました。ただ、これはあくまで個人的な感覚で、人、作業内容、環境によって、時間の調整が必要であることも述べられています。
しかし、この1ポモドーロの時間設定を頻繁に変更するのはNGです。なぜなら、「今日は調子が悪いから20分」、「今日は調子がいいから50分」など、ポモドーロの基準がぶれると、「今日は10ポモドーロできた」といっても、はたしてそれが他の人比べてよい結果なのか、悪い結果なのかがわからなくなってしまうからです。
ポモドーロの簡単フロー
- やるべきことをすべて書き出す
- やるべきことを選ぶ(見積もり)
- やるべきことを実行する(実施)
- 成果を計測する(振り返り)
基本はこの流れで進めていきます。ひとつひとつ見ていきましょう。
やるべきことを書きす
いま、抱えている仕事、作業などをガンガン書き出します。これはGTDなどと同様ですね。仕事の大小、重要度などは区別せず、とにかくすべての抱えている仕事を書き出すことが重要です。
見積もりを行う
やるべきことをすべて書き出したら、具体的な取り組むことを選びます。また同時に、その作業がどのくらいの時間が掛かりそうか、だいたいの「見積もり」も行います。この「見積もり」が、実はポモドーロのかなめとも言える重要なプロセスです。
1ポモドーロ=25分として、選んだ作業が何ポモドーロで完了できるか予測します。「この作業は簡単だから1ポモドーロで充分」、「この作業は難しいから4ポモドーロ見ておこう」など、ひとつひとつ見積もりを行います。
ここまでが作業を実行するまでの準備です。一見、面倒に思えるかもしれませんが、こうした実行前の見積りが後々とても役立つことになります。
作業を実行する
タイマーを25分にセットして、作業を開始します。この間は、いっさい他のことに目を向けてはいけません。本書では、あらゆる割り込みの要素を排除するよう推奨しています。実際には、デスクの電話が鳴ったり、隣の上司や同僚が話かけてきたり、割り込みの要素をすべて無くすことは難しいかもしれません。それでも、「この25分間だけは一心不乱に作業する」ことを決意し、黙々と作業をこなしていきます。
5分間の小休止
25分間の作業の後は「5分間の休憩」です。作業が途中でも、まだまだ作業を続けたいと思っても、必ず休憩を取ることがポモドーロの絶対のルールです。ポモドーロを実践してみると、意外とこの「休憩を取る」ことが難しかったりします。特に継続的な作業(文章執筆、コーディングなど)を行っていると、「ようやく集中してきたのに……」といった場面もしばしば。
本書によると人が本当に集中できる時間はそれほど長くなく、この25分間に一度の5分休憩が高い集中力を持続させる秘訣になるそうです。
振り返り
作業の後は「振り返り」です。事前に見積もった作業時間と、実際に掛かった時間を照らし合わせます。多くの場合、事前の見積りと実際の作業に掛かった時間には大きな隔たりが出てきます。
短めに見積もっていた作業に多くの時間が掛かってしまった場合は反省や改善が必要です。反対に予測より早く終わった場合は?この場合も問題の本質は変わりません。予測と現実のギャップを埋めるためには何が必要かを考え、今後に活かすようにします。
予測を立てること
ポモドーロを実践して、最も有意義だったことは見積もりと振り返りのプロセスです。作業の前にどの程度の時間=ポモドーロが掛かるかを検討することで、時間に対する意識が高くなります。
たとえば、「ブログ記事を書く」という作業について、どのくらいの時間が掛かるかを考えてみます。「だいたい、3ポモドーロ=約1.5時間で、すべて書き上げられそうだ」。このような予測の元、実際に記事を書いてみたところ、内容が膨らみ、結局、書き上げるまでに5ポモドーロが掛かってしまいました。
見積もりと結果には2ポモドーロ(約1時間)のギャップがあったわけです。この原因は何か?を考え、次の機会に活かす。こうした予測→実行→振り返りのプロセスを繰り返すことで、作業の効率化や時間の見積りの精度を高めることができるのです。
ポモドーロ単位で自分の作業を振り返る
ポモドーロのもうひとつのメリットは、日々の作業をポモドーロ単位で振り返ることができる点です。今週はどのくらいの作業を行うことができたのか?この仕事にはどのくらいの時間が掛かったのか?こうした疑問も、ポモドーロ単位で記録を残しておくことで、簡単に把握できます。
自分の感覚と実際のポモドーロ作業の記録を比べると、プラス・マイナスに関わらず、驚くほどのギャップが出てきます。こうした感覚のズレを修正しながら、日々の効率化を時間の使い方を考えることも「ポモドーロ」のメリットです。
ポモドーロの良いところ、悪いところ
以上が大雑把な「ポモドーロ」の解説と実践録になります。最後のまとめとして、「ポモドーロ」は万能ではないということを書きたいと思います。
ポモドーロの良いところ
- やる気が出ないときも、この25分間だけはやろうというきっかけをつくることができる
- 時間を25分単位で管理することで、業務効率や改善を可視化できる
- 休憩を適切に取ることで、継続的に作業が行える
ポモドーロの悪いところ
- 集中力を発揮しているときにも作業を中断しなければならない
- 管理や見積もりが煩わしくなってくる
- オフィスなどの自分以外が他人がいる場所で、ポモドーロを完璧に実践することが難しい
現在は限定的に「ポモドーロ」を活用中です。掛かった時間を正確に割り出したい作業や休日の自宅作業、また、「今日はやる気が出ない……」といった際にポモドーロを使っています。
仕事内容や環境に左右される面も多々ありますので、他の人の感想や考え方も聞いてみたいところです。ただ、今後も部分的にポモドーロは使っていきたいなと思っています(この記事もポモドーロ管理で書きました)。
「ポモドーロ」は仕事への閉塞感やモチベーションの低下などの問題を抱えている人にとって、変化を起こしたり、ヒントを得るきっかけになるメソッドです。ぜひ、気になった人は本書『ポモドーロ・テクニック入門』を読んでみてください。翻訳や文体にすこし癖があるものの、ポモドーロのことがよくまとまっている一冊です。
アスキー・メディアワークス
売り上げランキング: 315,104