やがて22世紀に入ると
人々はますます傷つくことを恐れ
感情を表すこともなく
ただ淡々と毎日を過ごすのだが
政府は少子化以前に
まず若い男女が出会わなければ
何も始まらないと考え
出会いの場をいくつも設定し
カップルが誕生すれば
それを後押しする策を考えた
そこで
恋愛保証書なるものを考案し
結婚に至るまでの意志のあるふたりに
それを発行することとなった
恋愛保証書の効力は絶大で
その保証を破った者には
禁固刑を科すものとした
本人の意志の確認と共に
恋愛保証書は発行されるのだが
この保証書がないと
いつフラれても文句は言えないし
心が傷つくので
誰もが恋愛保証書を求めて
相手探しに躍起となった
恋愛保証書の効果は徐々に広がりをみせ
街にはカップルが目立つようになってきた
彼らは一様に恋愛保証書を取得しているので
結婚までを約束されている
いわば国のお墨付きだ
失恋などというものは過去のものであり
新たな恋人の出現などというややこしい問題もなくなり
カップルはほぼみんな結婚へとゴールインするのだが
なかには恋愛保証書を破棄する者も現れ
そこにも政府は懲役刑を科したため
誰もが慎重に相手を選ぶのだが
ゴールインしたどこの家庭でも
子供が一人生まれ
公園へ行ったりすると
子供が砂遊びをしていたりする光景を
みんなが微笑ましく見ているのだが
不思議なのは
遊んでいるどの子もおとなしく
「能面」のような顔を
していることだった