旅行の帰りはレッカー車

前々回に載せた旅行記事「八ヶ岳逃避行」ですが、
最終日の午前まではホントに良かった!

実はその後がたいへんだった訳です。

2泊3日の最終日。

小淵沢のこじゃれた中華レストランで
優雅に昼食を摂り、日曜ということもあり、
混雑を懸念して早めに帰路につきました。

中央高速はまだ混雑もなく、
車はほどよい間隔で走行している。

で、甲府を過ぎた頃、
帰りに富士五湖でも寄ろうということで、
山梨の大月ジャンクションから大きく道を逸れようと、
奥さんと話しながら走行していました。

車は絶好調、と思ったんですがね…

あの長くて有名な笹子トンネルを通過しているときでした。
突然、警告灯が点灯しました。
ん? なんだなんだ。

最初は「空気圧が低下している」
次に「ラジエターの水量が足りない」
「横滑り防止装置が機能しない」
「すみやかにエンジンを停止してください」

トンネルのなかで、これらの警告メッセージが、
めくるめく表示され点滅なんかしている。

僕は即座にハザードを点滅させ、
減速して横と後部の車に異常を知らせました。

即判断しなくてはならないのは、
この全長5キロの笹子トンネルのなかで、
果たして停車していいものなのか?
だった。

みんな飛ばしているので、
スピードダウンもかなり危険だ。

左側に等間隔であらわれる緊急用のスペースを
確認するも、狭すぎてうまく停車できないと判断。

トンネルはあと4キロは続く。
トンネルは上り勾配でエンジンは高回転。

オーバーヒートが頭をよぎる。

が、こんなトンネルで止まる訳にはいかない。
奥さんはパニクると黙ってしまう癖がある。

水温計に目をやると数値は正常値をさしている。

僕はやけくそでトンネルを出るまで
突っ走ることに決めた。

前方が白々とみえたときはホッとしたが、
外に出ると、そこから急な下り坂だと分かった途端、
ブレーキの警告も出ていたことを思い出す。

ふたたび僕は緊張を強いられた。

逃げられる路肩を探しながら、
僕はふたたびハザードを点滅させ、
ブレーキをテストしてみた。

思い起こすと、このときが一番怖かったのかな、
と思う。

幸運にもブレーキは効いてくれた。

車には真空倍力装置なるものが付いていて、
電気系統がイカれると、普通に踏んだだけでは、
ブレーキなんか効かない。

僕はこの一瞬にすべてを賭けたといっても過言ではない。

やがて左前方にバスの停留所のようなものを発見。
車を減速して、僕はそのスペースに飛び込んだ。

保険会社に電話するまで5分は放心していた 笑

レッカー車がくるまで40分、僕ら夫婦は山梨県大月の
山中で時間を潰した。

さいわいエアコンは効いてくれていたし、
腹は減っていないし、
ペットボトルも何本か座席に放ってあったので、
それが幸運だった。

 

 

この日の大月の気温は34℃くらいだったので、
いろいろ想像すると怖い結末が待っていたような気がする。

僕は、このレッカーの若いおにいさんに、
この車の異常はセンサー類の故障では?と問うた。
彼はこのクソ暑いのに満面の笑みで「さあ」と
話すと、ものすごい手際の良さで車をレッカーに
積載してくれた。

思えば、この人はレッカーのプロだが、
故障のプロではないのだ。

(後日、この車はセンサーが壊れていたことが判明した)

次のインターでマイカーを積載したレッカー車とお別れし、
僕らは地元のタクシーに乗り、
そこから家路についた訳だが、
いろいろと時間がズレたので、
中央高速は大渋滞となってしまい、
家についたときはすでに夕方になっていた。

この素晴らしい旅行に訪れた、
最後の悪魔のような出来事。

当分はトラウマとして、
僕の脳裏に刻まれることだろう。

奥さんも同様なのは、間違いない。

 

八ヶ岳逃避行

 

2年ぶりの八ヶ岳。

 

前回も猛暑だったことを思い出した。

 

途中、立ち寄った山梨県・双葉サービスエリアで、

車のドアを開けると、

外はたき火の横にいるような熱気に包まれていた。

 

食堂は人の列。

僕は自販機でアイスコーヒーを買い、

そのまま立ち去った。

 

標高1200メートルの山小屋に着いたときはホッとした。

 

その日の夜は肌寒くもあった。

 

 

そして今回の宿は、小淵沢。

山梨県と長野県の県境あたり。

標高600メートルくらいだろうか。

 

昼間はぜんぜん涼しくないが、

夕方になるととても心地の良い風が吹く。

 

近くにサントリーの白州工場がある。

水がおいしくて豊富だからだ。

 

 

八ヶ岳は晴天率も飛び抜けて高い。

首都圏は相当天気が荒れていたらしいが、

こちらは小雨が降った程度で、あとはサッと晴れる。

 

この日は小淵沢へ行く途中の、

中央高速の長坂インターを降りて

まず清里へ向かった。

 

ずっと上り坂なので、

車のエンジンは回転数を上げ、

なかなか良い音と振動が伝わる。

 

山の緑の陰影が美しい。

空がデカい。青い。

 

 

雲がぽかんと浮かんでいる。

 

車を清泉寮の牧場にとめ、

コーヒーを飲みながら、

ずっと雲が流れてゆく様をみていた。

 

陽差しは強いが、

気温は25度くらいだろうか。

 

遠くに人の声。

草のなびく音。

 

近くにいた家族ずれ。

小さな女の子がソフトクリームを頬張っている。

その向こうに、初めてのデートと思われる若いカップル。

ふたりの仕草がなんだかぎこちない。

(懐かしい風景)

 

 

いまこの空に、たとえばペガサスが飛んでいたとしても

何の違和感もないようなひととき。

 

日常と奇跡は、ひょっとして紙一重なのかも知れない…

 

 

僕は思わず居眠りをしてしまった。

 

 

 

↑清里は閑散としている