広告&メデイアから離れ、今日は商品企画の話から。
ノンアルコールビールが登場したとき、果たしてこんなものが売れるのか?
こうした予想は誰もがしていたように思う。
パチモン、偽物。
当初はネガティブなイメージがつきまとっていた。
が、意外にも、ノンアルコールビールは、欧米では古くからあった。
アメリカの禁酒法とか宗教上酒を飲まないアラビア諸国への輸出とか。
そうした需要だから、やはりメジャーな商品にはなり得ないし、少しづつ廃れていく。
しかし、日本におけるノンアルコールビールのポジションは、
そうしたネガティブを次第に払拭しつつある。
メーカーとしては、それなりの調査に基づいたうえでの決断なので、
売る自信があったのは当然のことと思う。
が、英断には違いない。
冒険的マーケティングという用語があるのだろうか?
私の酒飲みの友人は、この飲み物を邪道と斬り捨てる。
が、或るときからアルコールを止めた私としては、
ノンアルコールビールは、気になる存在だった。
そもそも、アルコールを止めた一端が、自宅が駅から離れていて、
クルマが手放せなかったのが一因であり、
深夜のタクシーのバカ高さに呆れたことに始まる。
重ねてその頃、アルコールを飲むと鼻が詰まって苦しくなる症状を発症、
自然と飲む気が失せていった。
以来、酒は止め、あれ程足繁く通った酒場へも、
ピタリと行かなくなってしまった。
が、性分は変わらなかった。
或るときから、酒場に未練が出てきた。
やはり、あの雰囲気が落ちつくことが分かった。
それが大衆の焼き鳥屋だろうと気取ったバーだろうと、
どこでもOKということも確認。
最近はよく、食事の際に、ちょっと立ち寄るようになった。
ドリンクは当然ノンアルコールビールとなる。
私的には、タイムリーな飲み物であり、味も遜色ない。
酔えると言ったら嘘になるが、それに近い気分を味わえる。
ノンアルコールビールは、そのポジションが微妙な位置にあり、
性急に考えると、ネガティブまたは不要のものと考え勝ちだ。
が、よくよく考えると、そこに商機はあったのだ。
そのキメの細かいマーケティングは、
私たち日本人にしか発想し得ないものとも思える。
例えば、お酒の飲めない人たちに、飲むというスタイルとマインドを味わってもらう。
また、お酒を飲まなければならないシーンで、飲めない人がそれなりに飲めるもの。
かようにこの商品は、場とシーンで、
そこにどんな商品があるとみんなハッピーか、から発想されている。
パイは多くはないが、その市場は確実に存在する。
そこに、新しいライフスタイルも垣間見える。
そこを掘り当てたのが、日本のノンアルコールビールという商品なのかも知れない。
冒険的マーケティングの勝利だ。