詩人はいつも
ビルの谷間を歩き
3番線のホームに立ち
そして地下鉄東西線に乗って
暗闇のなかの景色から
着想したりしていた
あるとき
野山を吹く風のように
詩人は海を渡り
砂漠を横断し
ヒマラヤで眠りについた
そこで空を昇る術を手に入れ
詩人は大気圏を脱出し
天を垣間見たりした
ときに詩人は
そうして天の川に身を浸し
ほうぼうを思索したりした
そんな話を誰にもしたことがない
妻や子供にも言わなかった
詩人は実は一編の詩も
まともにかけない詩人だったが
あなたの夢に
すっと入り込むことはできる
しあわせな朝が
訪れますようにと
詩人の詩人たる所以である
(本編は、過去に掲載したものを編集し、再掲載しました)