イラストレーターの鈴木英人さんは、
影というものを主役に据え、
大胆な影の描写で夏の日差しの強さを強調し、
そのコントラストの美しさをあらわした。
オールドカーが木陰に停車しているイラストなど、
ぐっときます。
この人の作品は、どれも真夏の昼下がり、
といったものが多い。
実は朝なのかも知れないが、
その陰影を観るにつけ、真夏の昼下がり、
と私が勝手に思い込んでいるのかも。
まだ世の中がカセットテープ全盛だったころ、
よく英人さんのイラストを切り抜いて
カセットケースに貼り付けていた。
中身は、主に山下達郎だったような。
さらに時代を遡って、
私がちいさい頃に好きだった影絵は、
どれも藤代清治さんの作品だった。
だいたい夕暮れから夜の世界が多い。
笛を吹いている少年のシルエットが心に残った。
作品はどれも上質のステンドグラスにも負けない、
神秘性と物語を内包している。
昨年、藤代さんの画集を買って、
時間ができるとぺらぺらと開いている。
もう90歳をとうに過ぎておられると思うが、
この方の作品は常にファンタジー性に溢れていて、
その世界が衰えることはない。
好きなことに没頭する美学がそこにある。
ここは、学びが多いと、自分に言い聞かせている。
近頃は夜景の写真が人気を集めている。
湾岸に立ち並ぶ工場群も、
ライトに照らされた夜の姿は、
妙な魅力を放っている。
私は京浜工業地帯で生まれ育ったので、
工場の立ち並ぶ姿にうんざりしていて、
一時は、こうした写真を引き気味にみていたが、
最近はそうした幼い頃のトラウマ?もなくなり、
しっかり鑑賞できるようになった。
さて、自然の織り成す陰影といえば、
夕暮れ時のマジックアワーである。
夕陽は、ときに緊張した人の心を緩ませる力を
秘めているようだ。
私が夕陽の魅力を初めて知ったのは、
小学校の入りたての頃だった。
近所の子と砂場で夢中になって遊んでいて、
さあ帰ろうと思って立ち上がり、
空を見上げたときだった。
いままさに沈もうとする太陽がオレンジ色に光って、
手前の丘は大きな黒い影となり、
その丘のふちだけが燃えるように輝いていた。
いずれ、光と影の織り成す風景って、
人の琴線のようなものを刺激するのだろう。
映画「夕陽のガンマン」、「三丁目の夕日」
拓郎の「歌ってよ、夕陽の歌を」
石原裕次郎のヒット曲「夕陽の丘」
夕陽は歌になる。
絵になる。ドラマになる。
どこか影のある女性…
夕暮れの冬の木立
そんなものばかり追いかけても、
深みにはまるだけ。
ただただ、陽が暮れるだけなのになぁ。