新月の夜に
願いごとをすると叶う
そんな習わし
昔からの言い伝え
それはなぜ…
意味など導き出せない
とりあえずは願いごとを紙に書いて
すっと夜の窓辺へと差し出してみる
もっと楽な仕事がみつかりますように
別れてしまった妻が戻りますように
つまらない望みごと
だけどなにかいい予感がするなぁ
ちょっと嬉しい気になっている
願いごとをするとはそういうことなのか
見上げると夜空は漆黒かつ寒々しく
今夜は星さえでていない
月は明らかにそっぽを向いている
いや 宇宙の果てなどへでかけて
留守にしているに決まっている
この闇夜に乗じたのか
家のまわりを狐がうろつく
異様に光る複数の目
よそ者はかえれと警告している
しまいに雨さえ降ってきて
ああ そろそろ町へ下ろうか