15年前に
この部屋を出てから
オレは
この部屋の夢ばかりを見ていたような気がする
あるときオレはヘルシンキにいた
ホテルの部屋の居心地の悪さに
ふとこの部屋のことを思い出した
オレンジ色の暖かい部屋
太陽の陽がさんさんと降り注ぎ
カクテルグラスのなかにまで
透けるような虹がかかっていた
翌年
ケープタウンで泊まった宿は
土色の壁がむき出しで
心もカラダもぐったりしていたので
つい
この部屋の心地良さを思い出していたっけ
心おちつくこの部屋は
白壁が美しく光り
お前とオレは
水色のテーブルクロスの上にビールとクッキーを置き
ロックのリズムに合わせて戯けていたのが
昨日のようだと思った
そして数日後
お前はこの部屋にさよならを告げたんだ
モスクワは
寒いしんしんと寒い
雪景色を眺めながら
オレは
ホテルの部屋の黄色いマントルピースに
かじり付いていた
相変わらず
オレの部屋は無人で
それでも心のなかでジャズは流れ
オレの気持ちは
しっとりと安らいでいたっけ
甘い甘い部屋
幻の白い部屋
夢のなかで
夢のなかで
それはいつも
夢のなかで
白い天井
白い壁
白い床
何もかもが
それは
白い誘惑
何ものにも変えがたいこの安堵感は
オレに届く
太古の自分よりのメッセージなのか?
やすらぎに愛をもう一度!
そう
この部屋からやり直せば
きっと再び
愛がはじまる
クリームの「ホワイトルーム」と、ポエムのコラボ。
両方がそれぞれ異なる光をスパークさせながら、お互いにぶつかり合い、共鳴しあい、独特の世界を構築しています。
スパンキーさんの YOU TUBE シリーズの新境地ですね。
「白い部屋」 が暗示する世界は、非常に奥行きが深くて、万華鏡のように多彩で、一筋縄ではいかない複雑さにまみれていますけれど、主人公の心の原風景として、死ぬまで離れない情景であることが分かります。
そこから出て、放浪の果てに、今そこに帰ろうとしている主人公。
それはなんだか 「死の甘い誘惑」 にも似て、「愛の始まり」 も 「死の決意」 に近いのではないかと予感させるような筆運びですね。
エッジが利きすぎるくらいの鮮烈な言葉の数々。しかし、その背後に流れる空気は、甘く、けだるく、物憂い。
味わい深い、素敵な作品ですね。
町田さん)
大きさが分からない、広さが分からない、どこにあるのかも忘れてしまった白い部屋が、ホワイトルーム!
このラリったようなイメージのホワイトルームは、心のなかにある部屋。ここに住むと、「オレ」は凄く落ち着くけれど、墜ちてゆくんですよね。
恐いです、ホワイトルーム!
町田さんのいわれるように、この部屋は「死の甘い誘惑」に満ちています。
クリームってそういういい味を出している、伝説のグループだと思います。