その1
学生時代は海ばかり行っていた。
潜ってウニを採る。
こう書くと、どこの海?となるが、
葉山あたりでも、昔はウニが
うじゃうじゃいたのだ。
で、潜りに飽きると、今度は波乗りとなる。
下手なくせに、低気圧がくると聞くと、
みんなで海に出る。
で、ここでとんでもない目に遭った。
大波に挑戦しようと、
パドリングで沖をめざす。
目前に山のようなうねりが近づいた。
これはまず恐怖しかない。
次第に、波の先が白じれて崩れ始める。
このあたりでうまく波に乗らないと、
後が怖い。
が、カラダが立ち上がらない。
必死でバランスを取っているうちに、
波が崩れる。
もうこれは水の壁に襲われるようなもので、
ボードが吹っ飛ぶ。
我がカラダが、
洗濯機の中の洗い物のようになってしまった。
それも横でなく縦水流なので、
息がもたない。
上下の感覚が麻痺する。
必死で海上に顔を出し、荒い呼吸をする。
と、次の波にのまれる。
こんなことを繰り返し、
なんとか浜に辿り着いたとき、
もう二度とこうした遊びはすまいと、
心に誓った。
その2
信州へでかけるため、
中央高速を突っ走っていたときのこと。
冬晴れの気持ちのよい日だった。
談合坂S・Aを過ぎて左車線に寄り、スピードダウン。
のんきに音楽を聴きながら前をみていると、
斜め前方にぼろい長距離トラックが走っている。
積み荷をみて、過重オーバーと思った。
それはタイヤと車体の揺れをみれば分かる。
一時期、トラックドライバーをやっていたので、
そこは敏感に反応する。
嫌な予感。
と、そのトラックの後輪のダブルタイヤのホィールキャップが外れ、
いきなり高速道路上に転がり始めた。
その直径は1㍍くらいだが、当たればダメージは大きい。
こっちは80㌔相当で走行しているのだ。
銀色に光るホィールキャップが、みるみるこちらに迫る。
このままだと激突する。
ハンドルを切ろうとするが、トラックの後方、
即ちこっちのクルマの横に、1台の乗用車が並走している。
高速での急ハンドルは危ない。
もう避ける方法がない。
アクセルを踏むか減速するか一瞬躊躇し、
そのままという決断に至る。
銀色に光るホイールキャップは、
我が愛車の1㍍前あたりを横切って、
ガードレールに激突した。
この光景は、バックミラーで確認したので、
鮮明に覚えている。
あー、怖かった!!
その3
防空ごうというのは、
飛来した戦闘機から身を隠す穴のことだが、
私の幼かった頃の横浜の町には、
こんな穴がいくつも口を空けていた。
いまでは考えられないが、
当時はこうした穴が放置されていて、
子供の格好の遊び場だった。
京浜工業地帯の一角に、或る進学高校があって、
私は、なぜかそのグラウンドで遊んでいた。
海を望む高台のそのグラウンドの端には、
やはり防空ごうがいくつか放置されていて、
私はその穴の中で近所の子と遊んでいた。
で、その防空ごうの入口付近が、突然落盤した。
そのとき、穴の中に私と数人がいた。
なにが起こったのか、分からない。
私は土を被り、しばらく動けないでいた。
少しだけ息ができたが、苦しい。
もがいていると、もう駄目なような気がした。
と、まわりで大人が数人叫んでいる。
土の中の私の手を、誰かが掴んでくれた。
気を失う前に、数人の大人が、
私を引きずり出してくれた。
防空ごうの中の他の子は、みな大丈夫だった。
以来、私は閉所恐怖症だ。
その4
大学時代、スキー合宿とかなんとか名称をつけ、
みんなで長野の野沢にでかけた。
ただの仲良しサークルだったが、遊びにかけては、
皆抜きんでているグループだった。
当時はスキー全盛の時代で、
金のない私も、一応スキー道具を揃えた。
初心者は私だけだったが、
2日目頃から滑れるようになり、
中級コースでもなんとか滑れるようになった。
それまで、スケートとかサーフィンとかをやっていたので、
上達も早いと皆に言われた。
そこで、調子に乗ってしまうのが私の悪いところで、
帰る頃はすでにベテラン気取り。
遅いスキーヤーをひょいと抜いてゆく。
これは快感だった。
混んでいる林道コースでも、
並み居るスキーヤーを次々に抜いているうちに、
スピードの制御が効かなくなった。
林道コースは細いので、カーブで大きくはみ出た私は、
次の瞬間、コースの下に転落し、
雪の崖にストックを立てて、必死にしがみついていた。
これには皆驚いて、
というか、馬鹿な奴もいるもんだという顔で見下ろされた。
助けてもらうまでの時間のなんと長いことか。
よくよく下を見ると、足元の崖下から途中が急な勾配に変わり、
あそこまで落ちていたらと思うと、
ホント、ゾッとした。
その5
小学校時代は、工場地帯でよく遊んでいた。
工場の空き地は、どこも塀で囲まれていて、
私もそこで、よく鉄くずを拾っていた。
その日は、晴れた日だったが、
突然空が暗くなり、風が吹き出した。
雨もぱらついてきた。
空き地は、3方がトタンの塀で囲まれ、
奥まったところにいた私が帰ろうと思って振り返ると、
入口付近で風が埃を舞上げて、渦を巻いている。
それがだんだん大きくなり、2階ほどの高さになると、
今度は近くに転がっていたブリキのトタンを巻き込んだ。
すると、高く舞い上がったトタンがつむじ風に乗って、
どんどんこちらに近づいてくる。
逃げ場を失った私たちは塀に張り付くようにして、
そのトタンに恐怖した。
トタンの切り口は鋭い。
あれは、刃物と変わらないのだ。
と、ここまで書いてうんざりしてしまった。
こうした話はまだあるのだが、
なんだか言い知れ感情が噴き出し、
体調まで悪くなってきたので、
ここらでやめることにしました。
スイマセンネ