人恋しくなると、
街へ出て雑踏にまぎれる。
すると、理由は不明だが、
とても落ち着くことがある。
小さいとき、
木の傍らにしゃがんで、
アリの行列をじっと眺めていた。
おのおの個性や違いなどというものは、
ほぼないようにみえる。
ある一匹が、取り立てて目立つことは
ほぼないに等しい。
雑踏にまぎれる行為も、アリの行列も、
どちらもその他大勢という括りで、
一応、アタマの中では整理がつく。
思うに、アリも一匹でフラフラするのは、
不安なのではないか。
人恋しいではなく、アリ恋しいか。
こちらも、きっとそんな深層心理から、
たまに雑踏へ出てゆくのかなぁ、
と思ったりする。
であるならば、
渋谷のスクランブル交差点の人混みも、
週末の新宿の混雑も悪くはない。
がしかし、それが通勤とかで
毎日となると話は全く違ってくる。
たちまち拒否反応が出てしまう。
雑踏うんざり、また街中嫌いとなる。
都心勤め5年で嫌気がさし、
のち出勤なしのフリーになった私が思うに、
何事も程々が良いのである。
そのあたりのさじ加減というのが
また結構難しい。
よって住むところ、
働くスタイルや場所というのは、
現役にとっては重要項目である。
いや、引退してからもつきまとう。
新宿のど真ん中のマンションも、
山の中の一軒家もゴメンである。
だってライフスタイルの問題であるからして。
いつも静かで広い空が見渡せる。
で、たまに街中に直行できて、
雑踏の人になれる、
そんな程々の場所が一体どこにあるのか?
そうした理想の地こそが、
私の終の棲家に違いないと
最近になって分かった訳。
首都圏のいなか。
地方都市の静かな住宅地。
具体的に、伊豆半島とか軽井沢、
八ヶ岳山麓というような都会風の別荘地。
はたまた、
瀬戸内海に面した陽当たりの良いところ、
沖縄県南城市(ここに友人が移住したから)、
札幌郊外とか、金沢とか…
いやぁ夢は広がりますなぁ。
とここまで書いておいて、
ふとあることに気がついた。
生まれてから、
約十数回引っ越している身として、
いまの場所に飽きているのではないかという、
自己に対する疑念ですな。
実は、ここではない、どこかへ、
を探しているのかも知れない。
都会とかいなかとか、
あれこれと御託を並べたが、
もっと根深い問題が潜んでいるような…
学生時代に書いたもののなかに、
えんぴつとノートとカメラを持って
世界をまわる、というのが幾度も出てくる。
ああ、そういうことかと気づいた次第。