どこまでも吹く風
曖昧な空間に
ひとつ板を浮かべ
想いを描いたという
一振りで、山をひとつ
指先をちょっと押し当て
海を深く
そしてあのひとは
愛をひとつふりかけ
世界を創った
という
そのわずかな
残りカスのなかから
お互いが出会って
私たちに続く道は
開けた
鳥も虫も花も
空も雲も大地も
過去も未来も
愛し合い、憎しみ合い
殺し合い、助け合い
夢を育み
明日を信じ
絶望し
息絶え
それでもなお生きてゆく
それでもまた死んでゆく
あのひとが
私たちに伝えた
ひとつのものがたり
いまだ見たこともない
誰も辿り着かない
その彼方に
真実はあると
そこに夢があり
そこにもやはり
失望があり
だから皆ただ歩くのみだと
だから生きるものも
死したものも
なおめざすのだと
あのひとは
生きるものすべてに
あの世のすべての想念に
絶え間なく
語りかけるのだ