その道は
確かに
頂へと続く筈だった
両脇が小高く切り立ち
赤土が木の根を覆うのを
常として眺めながら
皆この道を歩いている
笹の枝が垂れ
その隙間を探すように
わずかな日射しが
ときに顔を照らし
それは温かく美しい光だった
敷かれた石はどれも苔に覆われ
そこを踏みしめ
来る日も来る日も
人はその勾配を登る
汗を拭って振り返ると
ふとした不安がよぎるが
しかしだ…、と
人は皆そこで
語気を強めるのだ
ここまでくると
あきらめとともに
もう引き返すこともない
再び足を運び
前へ前へ
それしかないと
そりが宿命であれ
私なりの頂をめざそうと
皆
歯を食いしばる
やがて笹が途絶え
敷石が消え
その道がまさしく
人を裏切るように忽然と姿を消すと
あたかも知っていたかのように
もう慌てることもやめ
ときに
しょうがないなぁと口走り
鳥も羽ばたかない
暗い森のなかを
独り彷徨う様は
もはや
死への旅路と化すのだった
もしかしたら、実際にご覧になった夢をベースに書かれたものなのかもしれませんが、リアルな描写とともに、深い哲学的詳察が宿っている詩であると感じました。
「死出の旅」 という言葉があるようですが、小学館の辞書を見ると、どうやら文字通り 「死出の山に登ること」 を意味するようです。
人間は苦労して、死に向かうきつい勾配の山を登っていく。
頂上に至ると、そこには苦役を果たした甘い果実が待っているわけではなく、「鳥も羽ばたかない、暗い森」 が待っている。
なるほど… ですね。
それが人生の真理なのですかね。
厳粛な気分にさせられると同時に、どこか甘味な官能が漂う詩ですね。
「死出の旅」という言葉は知りませんでした。辞書にあるのですか?
それに驚きました。
私の人生観は、重い荷を背負って山を登る、です。割と地味でしょ。
根は暗いですからね。
このことを昔奥さんに話したら、そんな人生は嫌だと言われましたよ(笑)
この詩は、勝手に頭の中で映像をつくって書いてしまいました。
もっとしっかりとしたメッセージを考えられるといいなと思うのですが、
いや難しいです。
コメント、いつもありがとうございます。