彷徨う夢

その道は

確かに

頂へと続く筈だった

両脇が小高く切り立ち

赤土が木の根を覆うのを

常として眺めながら

皆この道を歩いている

笹の枝が垂れ

その隙間を探すように

わずかな日射しが

ときに顔を照らし

それは温かく美しい光だった

敷かれた石はどれも苔に覆われ

そこを踏みしめ

来る日も来る日も

人はその勾配を登る

汗を拭って振り返ると

ふとした不安がよぎるが

しかしだ…、と

人は皆そこで

語気を強めるのだ

ここまでくると

あきらめとともに

もう引き返すこともない

再び足を運び

前へ前へ

それしかないと

そりが宿命であれ

私なりの頂をめざそうと

歯を食いしばる

やがて笹が途絶え

敷石が消え

その道がまさしく

人を裏切るように忽然と姿を消すと

あたかも知っていたかのように

もう慌てることもやめ

ときに

しょうがないなぁと口走り

鳥も羽ばたかない

暗い森のなかを

独り彷徨う様は

もはや

死への旅路と化すのだった

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「彷徨う夢」への2件のフィードバック

  1. もしかしたら、実際にご覧になった夢をベースに書かれたものなのかもしれませんが、リアルな描写とともに、深い哲学的詳察が宿っている詩であると感じました。
    「死出の旅」 という言葉があるようですが、小学館の辞書を見ると、どうやら文字通り 「死出の山に登ること」 を意味するようです。
    人間は苦労して、死に向かうきつい勾配の山を登っていく。
    頂上に至ると、そこには苦役を果たした甘い果実が待っているわけではなく、「鳥も羽ばたかない、暗い森」 が待っている。
    なるほど… ですね。
    それが人生の真理なのですかね。
    厳粛な気分にさせられると同時に、どこか甘味な官能が漂う詩ですね。
     

  2. 「死出の旅」という言葉は知りませんでした。辞書にあるのですか?
    それに驚きました。
    私の人生観は、重い荷を背負って山を登る、です。割と地味でしょ。
    根は暗いですからね。
    このことを昔奥さんに話したら、そんな人生は嫌だと言われましたよ(笑)
    この詩は、勝手に頭の中で映像をつくって書いてしまいました。
    もっとしっかりとしたメッセージを考えられるといいなと思うのですが、
    いや難しいです。
    コメント、いつもありがとうございます。

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