夏の匂い

さわさわと降る雨に

草花はいっせいに蘇り

細い小径が湧き立つ

よける枝を掴んで歩くと

やはりいのちなんだなぁ

その葉

匂い 

葉のしずく

むせ返る生々しさに

遠い風景が重なる

夢をそんなことと笑っていたその頃

私はどんな色をしていたのだろう

忘れられない一葉の写真に沁みた

或る日

埋もれた記憶は呼び起こされ

白い砂浜に波の音が流れて

背後に

ざわざわとさとうきびが揺れている

18の夏だろうな…

きょうも小径は

青々と勢いが増し

いのち匂い立ち

陽ざしが無数のドラマを紡いで

この夏の日がはじまる

さあ

いまさらだけれど

などと思いながら

私の物語を

始めるとしようか

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