ホテル・パシィフィック

編集者時代、湘南を取材したことがある。

私は学生時代から遊んでいたところなので

先導役となった。

しかし、取材となると知らないところが多いことに気づく。

学生時代は、浜で遊んでいるだけ。周りのことには無関心だったので

ちょっと恥をかく。

鎌倉の名月院で、蕎麦をいただく。

紫陽花がきれいな季節だった。

北鎌倉という場所さえ把握していなかったから、いい加減なものだ。

材木座を左に進み、逗子の渚ホテル。ここは、いまはもうない。

当時は海岸線沿いにひっそりと建ち、いぶし銀のようなオーラを

放っていた。

時の重鎮が常連客だった。昭和天皇もお泊まりになったとのこと。

作家の伊集院静もこのホテルを常宿としていたと聞く。

ここのスウィートで一泊させていただいたが、庶民には居心地が良くない。

ここから134号線を江ノ島方面に走れば、七里ヶ浜、鵠沼を過ぎて

茅ヶ崎へ入る。

いまはないが、チサン・ポイントというのがあって、サーファーのメッカだった。

海岸線に下りてサーファー君たちに取材をしていると、なんと私の後輩が

波乗りに興じているではないか!

ひとが仕事をしているのに、コイツはなにやってるんだ!と怒っても

しょうがない。

カメラに収めてあげて、コメントをとる。

「先輩、なにやってるんすか?」

「うるせーなー」と私。

さっさとその場を去り、サーフショップ「ゴッテス」へ。

ここのオーナーは、湘南サーファーのカリスマ的存在。

ユーミンも若かりし頃、よく来たという。

その頃、オーナーは赤のトライアンフのオープンが愛車。

洒落ているな、とつくづく感心したものだ。

白髪のサーファーが海を眺めている姿は、サマになるなぁ。

で、最後は近くのホテル・パシィフィック。

老朽化がすすんでいて、しかし、佇まいは優雅で風格がある。

上の展望レストランは、伊豆方面まで見渡せる素晴らしい景観。

カメラマンがバシバシとシャッターを切っていたのも、今は昔。

このホテルも程なく取り壊され、いまは何が建っているのか?

先日、この辺りをクルマで通ったら、パシィフィックという

ラブホテルがあったので、笑ってしまった。

ホントは悲しかったのかな?

湘南も、行くたびに変わるなぁ。

私の想い出が

ますますカタチのないものになってきた。

「ホテル・パシィフィック」への2件のフィードバック

  1. 「渚ホテル」 「ゴッデス」 。
    懐かしい名前ですね。あの頃の湘南は、今ほど観光地化されていなくて、お洒落で垢抜けた店がポツリポツリとあるほかは、まだひなびた風情の街並みが続いていたように思います。
    だからこそ、チョコっと洒落た店が、よけいファンタジーとしての魅力を輝かせていたように感じます。
    自分もクルマを手に入れて一番最初に遠出したのは湘南でしたから、スパンキーさんの思い入れにも十分共感できます。「渚ホテル」 に泊まったことありました。
    茅ヶ崎には 「ブレッド&バター」 の兄弟が経営する喫茶店があったし、134号線沿いにあった 「風月堂」 のメシが美味かったので、ときどきは食べに行きました。
    サザンの歌う曲には、どれも湘南の匂いが漂いますね。彼らは地元のヒーローになる以前からずっと湘南を歌ってきたわけで、そういった意味で、今の観光地化された湘南というのは、サザンの歌に合わせて街づくりが行われてきたのかもしれませんね。
    今年1年いろいろとお世話になりました。
    年賀状は今回ご遠慮させていただきましたが、良い年をお迎えください。

  2. 町田さん、ようこそ!
    やはり東京の方も湘南なんですね。詳しいのに驚きました。当時はのったりしていて、洒落た店なんてポツンとしかありませんでしたよね。
    最近は、なんだかスゴイですよ。昔の面影があるのは江ノ島ぐらいで、あそこのお土産屋の通りは、あまり変わってないように思います。
    後は、カリフォルニアあたりのパクリのような景観が並びます。
    しかし湘南ブランド強し!サザンの影響もデカく、土日はクルマで大変なことになっています。
    で、
    あけましておめでとうございます。
    今年は富士の裾野で一杯やりますか?ということで、よろしくお願いします。

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