ジャズライブでスイング!

 

知り合いのジャズボーカリストの方(女性)が、

ライブをやるというので、

付き合いで出かけることにしました。

この方は、首都圏のライブハウスで、

けっこう活躍している。

 

生で聴くのは、今回がほぼ初めて。

 

そもそもジャズって苦手でして、

この手のライブは、過去に数回しか行ったことがありません。

 

ジャズは、なんだか気難しいという先入観がある。

そのムカシ、ちょっとジャズをかじろうと、

本屋で「スイング・ジャーナル」をペラペラと眺めるも、

書いてある事柄が難しくて分からないし、

そもそもアーティストも知らない人ばかりだった。

そのときから、私のジャズに対する印象は、

小難しい能書きの多い音楽。

 

それで固まったまま、今日まで来てしまった。

そんな訳で、ジャズ音楽を聴いても、

馴染みのある知っているもの以外、

受け付けなくなってしまっていた。

例えば、「A列車で行こう」とか「ドライボーン」

「テイク・ファイブ」、「イン・ザ・ムード」とか、

その位しか知らない。

アーティストにしても、

日野照正とか渡辺貞夫は知ってるが、

あとは顔と名前と曲が一致しないので、

ほぼド素人の域を出ない。

 

で、今回はそろそろその殻を破ろうかと、

奮起して出かけた次第。

 

事前にYouTubeでジャズを幾つか聴いたが、

どうゆう訳か不思議とすぐ飽きてしまう。

で、眠くなる。

 

「ジャズはだめだなぁ」と呟きながら、

それも力を振り絞って家を出ましたね。

で、早めに到着してしまったので、

時間つぶしのため、

駅前のドトールでコーヒーを飲んで、

やれやれとめざす店へ。

 

その店は横浜のローカルな場所にあって、

その存在を知らないと店の前を歩いていても、

ほぼ気づかないほどに目立たない。

 

さてとドアを開ける。

店内は薄暗くすでに人が集まっているようす。

クラシックなテーブルが7つ位置かれ、

それぞれ4脚のイスと、

ステージの脇には、

よく使い込まれた音響機器がズラリ。

 

どのテーブルもほぼ客で埋まっている。

皆、くつろいでビールなんかを飲んでいる。

入り口近くの、ステージから一番遠い席が

ひとつ空いていたので、そこに腰をおろす。

 

店内を観察するに、

皆、ご高齢かつ常連と思える。

が、町中でみかける高齢者とはなんか違うのだ。

先入観からなのか、どの顔もイキイキとしていて、

とてもおしゃれにみえる。

ついでにムカシ遊んでいたな、というオーラが

ピシピシと放たれている。

 

ボクはノンアルコールビールを飲みながら、

手持ち無沙汰でiPhoneをいじくったりする。

 

そのうち知り合いのボーカリストの女性が、

声をかけてくれる。

やっと知り合いがひとり。

こういうシチュエーション、

あまり好きではない。

 

このボーカリストの方はこれからステージで唄うので、

いつもとはちょっと印象が違い、

けっこう派手目な衣装をまとっている。

(そもそもプロの方だったので当たり前か)

 

「楽しんでくださいね!」

「ええ、お気遣いありがとうございます」

………

 

にしても居心地が良くないな。

これから約3時間くらい、

ボクはここでじっとしていなくてはならない。

わぁー、成田空港からサイパンまでの飛行時間が、

ちょうどその位のじかんだったなぁと、妙な事を考える。

 

彼女が去り、まわりをウォッチしてみる。

カウンターに腰を据え、

ウィスキーをガンガン飲んでいる人がいる。

傍らにサックスが置かれている。

その横にさらにふたり。

一見、客のようなのだが、いや違うなぁ。

本日のアーティストなのか?

いや、それであればアルコール、控えるでしょ…

とかなんとか眺めていると、

この3人がおもむろに立ち上がり、

ステージへ。

(ほほぅ、そういうことね)

 

お~、皆とてもリラックスしている訳だ。

家庭的!

ではと、こちらも薄ら笑いを浮かべ、

まわりに合わせて彼らに拍手。

 

しかし、こちらはなんの期待もしていない。

ひょっとするとボクは寝てしまうかも知れないのだから。

 

しかし、ライブが始まると、

自分でも驚くべき己の反応があらわれた。

それはとても意外過ぎるほどのものだった。

それはいまでも忘れられない。

 

よくジャズマニアが

真空管のアンプでしか聴かないとか、

どでかいスピーカーの下にブロックを置くと

音が良くなるとか、

レコードで聴かないと分からないから

デジタルは拒否するだとか、

そういうのは、彼らの見栄ないし虚飾だと思っていた。

 

が、いつもYouTubeばかり聴いている身として、

このライブを聴いてから、

確かにそうだよなと納得してしまった。

 

ライブで味わうテナーサックスは

泣いているようでもあり、

語りかけてくるようでもあるし、

ベースはリズミカルに心身にまで食い込んでくるし、

ジャズピアノのあの響き渡る心地よいメロディーと

スーパー・テクニックは、

まさにホンモノだと確信してしまった。

 

それに、そもそもあれだけウィスキーを煽って

精密かつエネルギッシュ演奏を

3時間も続けることができるなんて…

 

まあ、驚きです。

 

4曲目あたりから、彼女がステージに上がり、

「Fly Me To The Moon」を唄うと、

店内のムードはまたガラリと変わり、

それはそれで趣を異にし、とてもムーディーな訳。

 

なんかいいなぁ、ジャズ。

 

そのうちぜんぜん違う、

もうひとりの自分が現れたではないか。

 

結局、3時間はあっという間に過ぎてしまった。

ボクはといえば、ノンアルコールが身上なのに、

いつのまにか数年ぶりにアルコールを口にし、

唐揚げをバクバクと食い、

しまいの果てには立ち上がり、

いわゆる「スイング」という奴を体験してしまったのだ。

 

どうですか、この変容ぶり!

(信用ならないオトコですな)

 

これからひと月に一度はライブへでかけたい、

そう思っている自分があらわれてしまいました。

 

先入観って、良くも悪くも自分を縛ります。

その殻をひとつ破ってみた結果、

また面白いものを見つけてしまいました!

 

 

 

 

 

 

 

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