夏を引きずりながら
外の気配は秋めいている
日差しは心なしか斜めに差すも
まだまだ勢いがある
その中を
時折乾いた風がすっと抜ける
空が高い
今年初めての赤とんぼ
こうしてふっと気を抜くと
まばたきする間に
秋なのだ
目を凝らしていないと
分からないものがある
予兆はひたひたと忍び足
ある日恋人にさよならを言われても
それが心変わりなのか
気まぐれなのか
久しぶりに走る道路に
いままでなかった分岐点が現れて
驚いたことがある
何度か通った店の前に立つと
もうそこは私の知っている
イタリアン・レストランではなく
小ぎれいな美容院に変わっていた
それは何事もなかったように
当たり前のように
日常に溶け込むから
関係者や観察者
にしか分からない
明治維新で日本はパッと変わった
昨日までの価値が
今日は色褪せる瞬間
軍国少年は敗戦を経て
狼狽した自分を取り戻そうと
歌をつくろうと決意したという
ある日ベルリンの壁は崩れ
ソ連は崩壊し
世界の地図は変わった
誰もじっとみつめていないと
分からない変化の瞬間がある
自らが立ち上がらないと
ただ流されてしまうだけの
一人の目撃者で終わってしまう
危うさ
今回の選挙で
永年の地盤を築いてきた
政権政党が倒れた
名もなき人々は
その他大勢ではない
誰もかが時代を築いてきた
「時代なんかパッと変わる」
私の尊敬するコピーライター
秋山晶さんの渾身の作品だ
「時代なんかパッと変わる」 …って、ものすごいインパクトのある言葉ですね。エキセントリックな単語なんか、ひとつも入っていないというのに。
おそらく 「なんか」 という3文字がキーですね。
この 「なんか」 のおかげで、この言葉を受け取った人の気持ちが。ウヮーッと空を見上げるように解放されるんですね。
「時代はパッと変わる」 でもダメだし、「時代などはパッと変わる」 でもダメなんですね。やっぱ 「なんか」 なんですね。
これを思いつかれた秋山さんという方は、さすが、スパンキーさんが、尊敬されるだけのことはある人だと思います。
>「軍国少年は敗戦を経て、狼狽した自分を取り戻そうと、歌をつくろうと決意した」というのは、吉本隆明のことですか?
この人も、敗戦を迎えた人に、「パッと変わった」 時代を見てしまったんでしょうね。
時代の変わり目でも、季節の変わり目でも、人の気持ちの変わり目でも、クリエイターはその瞬間を見逃さないのですね。
スパンキーさんの 「変化の兆候」 を見抜く鋭さが伝わってきます。
町田さん、ようこそ)
なんか、という言葉のなかには、耐えられないいまを生きている人には希望を、浮かれている人には警告を発していると言えなくもありません。
だって、パッと変わるんですよ!
一度、なんかという言葉で突き放しておいて、パッとで、くるりと返ってくるところが、この人の凄いところだと思います。
秋山さんは、長々と書かれた時代考察なんかより、ナイフのような鋭い切り取り方で時代を捉える。思想家ですよね。
このコピーは、バブルの時代につくられたものですが、後、見事にバブル崩壊。皮肉にも、時代なんかパッと変わりましたね(笑)
ちなみに、この人の代表作は「男は黙ってサッポロビール」です。
コメント、ありがとうございます!