コピーライター事始め

コピーを書いてもうだいぶ経つが
最初の頃は、全く書けなかった。

何をどう書いていいのか?

オーダーがきても、どこを抽出してどう表現するか
そのコツが私には分からなかった。

加えて、書き始めが、からきし難しく感じる。

もう、ここから萎えてくる。

良いものを書こうとする気負いが
益々その趣旨と核心をみえなくしていた。

元々、私は出版社にいたので
原稿を書くのは慣れているハズだった。

が、事はそんなに甘くはなかった。

いまは、出版物の文章もかなり広告チックなものもあり
広告コピーといっても普通の原稿のようなものも増えている。

当時は、この両者の中身にかなりの隔たりがあった。

広告コピーの世界は、かなり特殊な文で組まれていた。

ある時は詩的であり、短文のなかに優れた世界観があった。
ある時は、あり得ない言葉の組み合わせにより
とんでもないフレーズを生み出す方もいた。

私は、そのどっちも書けなかった。

まず、キャッチフレーズが浮かばない。
どう考えても、出てこない。

しょうがないので、ボディコピーから
なんとか書き始めるのだが、出来が
これでよいのかどうかも分からない。

上司からは、イマイチといわれ、
その理由が怖くて聞けないこともあった。

悩みの日々が続いた。

後から徐々に分かったのだが、ここに第3者の目が
加われば、そのコピーの出来具合は、ほぼ分かる。

他人の目を自分がもてば、自ら書いたものも
ある程度は評価できる。

決め手は、やはり「もし自分がお客さんだったら?」という
視点だろう。

いま思えば当たり前のことなのだが、これがいまでも結構難しい。

当時は当たり前のようにまるで駄目だった。
しかし、そのことを意識するようにして書き始めたら、
客観性が少しずつ身に付くようになり、
少しずつコピーの出来も上達するようになってきた。

問題はキャッチフレーズだ。

これは、もうコピーライティングの肝ともいうべき
代物なので、私の場合はかなりの時間を要した。

キャッチフレーズは、広告文全体のコンセプトを
担うものなのだが、私はコンセプトという言葉自体が
当初よく理解できなかった。

よほど出来の悪い、遠回りしてきた新人だった。

私は日夜、このコンセプトとはなんぞや?という答えを
みつけるため、図書館に通い、本屋でその筋の本を買い、
しまいには、恥ずかしさも忘れて年下の同僚に

「ねえ、コンセプトって何?」と聞いたこともある。

ところが、この年下の同僚が上手い言葉を発した。

「ううん、なんていうか、人間に例えるとヘソのようなものじゃないの?」

嘘のような話だが、私はここから一気に視界が明るくなった。

どの本よりも、この言葉に救われたような気がした。

きっと、頭で理解したのではなく、この時の同僚の言葉が
私のカラダ全体で反応したのだと思う。

感覚で分かったのだ。

以来、何となくこの道を歩いている。

というか、喰えていると言ったほうが正しいのか?

仕事は、何にでも通ずることだが、
まず人まねから始まる。

しかし、いつまでもまねている訳にもいかない。

ある程度経験を積んだら、いつか自分の道を探す時がくる。

来ない人は、ちょっとまずい。

コピー人間のままで終わってしまう可能性がある。

自分だけの道を探さないと、
自分にしか出せない味という強みが出ない。

「道は、星の数」とは、かの糸井重里のコピーだが

みんな自分の道を探さなくてはいけない。

オリジナリティは、人それぞれの持ち味のように
なくてはならない大事なものなのだ。

コピーライターの場合、特にオリジナルな文が要求される。

新人時代、私はこの要求に翻弄された訳だが、
良い意味でも悪い意味でも、
それは性格にも反映されるようになった。

私の友人のなかには、お前は元々そういう奴だったという
のもいるが、私は後天的と勝手に思っている。

曰く、
良い場合は、個性的とか、
ものの見方が変わっているなどと言われることがある。

その逆は、まあ
変人とか、へそ曲がりとか、
その他はもうぼろくそに言われているので
これは、職業病ということにしておこう。

おかげで、
かなり図太く生きる訓練をさせて頂きました(笑)

「コピーライター事始め」への4件のフィードバック

  1. こういう率直な体験談というものも、スパンキーさんが書かれると、けっこう迫力があります。
    やっぱ、正攻法で攻めた場合は、さすが 「プロの言葉には重みがある」 あるという実感を得ることができました。
    「コンセプト」 という言葉は、今は普通のサラリーマンでもこともなげに使っていますが、その意味を本当に極めるとなると、けっこう難しい概念ですね。
    「テーマ」 とか 「モチーフ」 とも違う。
    ある意味で、その言葉を説明させたときに、その人間の実力も分るような気もします。
    「ヘソのようなもの」 とたとえた後輩さんも凄いのでしょうけれど、それを直感的に把握できたスパンキーさんも凄い。
    結局、この言葉は、各自が直感で把握するしかないように思います。
    ロジックの通らない世界です。
    たぶん、「コンセプト」 などという言葉の意味内容よりも、自分の仕事のイメージなり方向性なりが、先に浮かんできたような状態。
    それが 「コンセプト」 ですよね。
    そういうニュアンスを瞬時に把握できたスパンキーさんは、やっぱりコピーライターに成るべくして成ったということなのでしょうね。
     

  2. 長い話や入り組んだ事情を、要するに一言で言うとこうなる。この一言が図星なら、コンセプトらしいです(笑)
    確かに、皆さん近頃よく使いますね?この言葉。が、よくよく聞いていると把握力がずれていらっしゃる方が多いです。
    本質は、いつもとんでもない所に隠れているんですね。それを捕まえて言葉にすればOKなのかも知れません。
    これは業界用語ですが、いろいろな分野にも応用できますね?人生においても、コンセプトが必要なのかな、とも思いますが、だいたいが性分。
    町田さんも、そのようにお見受けしますが、如何でしょう?
    コメント、ありがとうございます!

  3. わたしも、感覚から入ることが多いです。イメージ?
    ただ、それを言葉にするのが難しい!
    ひとと具体的に共有できるようになるのが、ひとつ目標です☆
    そして、客観的に自分の文章をみるって、難しそうです。
    わたしの仕事で言えば、子どもとの関わりを客観的にみるということですもんね。こわくて、なかなか聞けません(笑)
    指摘を素直に受け止めることも難しい。自分を振り返る作業も簡単ではないですね。
    それでも向き合いながら、少しずつ色んな力をつけていくんですかね?
    …なんだかんだ迷いながらも仕事をしていて思うのが、あたしうるさい母ちゃんになるな~ということですね(笑)

  4. Chiakiさん)
    プロは新人でも自信を持たないとやってられないものです。これはどんな世界でも共通でしょう。
    しかし、心の何処かに謙虚さがないと、次のステージには上がれません。
    だから、揺れるのです。とても良いことだと思います。若い人のこの「揺れ」ってとても素敵です。
    私なんか、この年になっていまだに揺れっぱなしですよ(笑)駄目ですね。
    Chiakiさんも、とまどいながらも頑張っているようで、それプロの第一歩ですね!
    子供さんとの関わりのなかで、自身の母親像が見えるというのは面白い。うるさい母ちゃんは、世界共通ですから(笑)
    頑張ってください。コメント、ありがとうございます!

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