極狭回転寿司屋

確か、新宿御苑あたりだったと思う。

打合せの前に腹ごしらえでもしようと、

「寿司」ののれんだけ見て飛び込んでしまった。

と、店内が驚くほどの極狭で、客の入りは九分ほどか。

空いてる席をみつけたのはいいが、なんせ店内が狭くて、

「スイマセン」と壁に這いつくばりながら、

やっと席へと辿り着く。

でだ、ひと息ついて顔を上げると、

前の人との距離がやたらと近い。

居酒屋で知った同士がワイワイやるより、

若干離れている程度。

で、シラーっとしている訳ですね。

黙々と食っている人もいれば、

空中のどこかっていうんですか、

茶をすすりながら、

焦点が定まらない目つきの人が多い。

板さん寡黙。

ミュージックなし。

ため息とか、シッシッーとか、たまに聞こえる。

家庭用、いやパーティー用にでも重宝しそうな、

寿司を運ぶ超小型ベルトが、

始終カタカタと回っている音だけが、

狭い店内に響いている。

喰っていて、どうも落ち着かない。

なんだか音とか視線とかが、やたら気になる。

妙な緊張感でした。

人ってそれぞれパーソナルスペースとかいうものがあって、

おのおの、その距離が違うらしい。

もちろん、親しい仲であればその距離も縮まるが、

見ず知らずの他人との距離が近くても平気な人もいれば、

極端に遠い人もいる訳で、

その距離より中へ入ると、人って緊張する。

いわば警戒心ですね。

私は、このパーソナルスペースが大きいと自覚しているので、

例えばエレベーターなんかで満員だと、

ちょっと疲れたりしてしまう。

だから、知らないのに妙に馴れ馴れしい、

無神経な距離感の人、

こういうのは苦手です。

パーソナルスペースは、私が思うに、

どうも野生動物の観察から分かったものじゃないかと推測する。

彼らは、パーソナルスペースに他者が入ると威嚇したり、

また、弱い動物の場合は、即逃げ出すでしょ。

まあ、生きるための本能です。

しかし、都会人がこんな具合だと生活もしていけないので、

皆、無理して、

パーソナルスペースをぐっと縮めているように思う。

これが都市で生きる知恵でもあり、

都会人に欠かせない資質のひとつなんじゃないでしょうか。

あるとき私は、自分の前世というのを観てもらったことがあるが、

私の前世はアメリカインディアンの酋長だったらしい 笑

どうりで、広々としたところでやたらに落ち着くのか、

合点がいった。

でですね、

もう一度、あの極狭回転寿司屋に挑戦してみようかなと思っている。

今度は、満席時を狙ってあえて空気を読まずに、

独りごとのようにギャグを呟くというもの、

なんですが…

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