前項に続き、会社を辞めたシリーズ。
いや、今度は辞めさせられたケース、なんですがね。
若い頃はなかなか職場が安定せず、
ふらふらしていた時期がありまして、
短期間に数社を渡り歩きました。
まあ、今回の会社の話も応募者多数だったのですが、
一応、試験をくぐり抜けて入社できたのですが。
出社初日に合格証みたいな紙切れをいただきまして、
ありがとうございますと、まずはおめでたい朝でした。
で、この会社は一般広告だけでなく、
就職関係の雑誌の巻頭カラーページを請け負っていたりと、
煩雑な会社でして、
その雑誌の巻頭には著名な会社がズラリと並んでおり、
我が社はこんなにすげぇ会社なんです、
あなたの夢が叶いますよ、
福利厚生に手厚いんです、
などと美辞麗句が面々と綴られる訳なんですが、
どうもハッキリいってウソ臭いんですね。
そのなかで内情を知っている会社も幾つかありまして、
これから私は毎日毎日ウソコピーを書くハズでした。
ちょっと嫌ですが、
私にはズシンとくる生活というものがありまして、
キレイ事はいってられない事情があった訳で。
東京のマンションの家賃は高いです。
子供が産まれそう~
いろいろな悩みを抱えていまして、
なにはともあれ頑張ろうと意気込んでいた私なのですが、
直属の部長というお方がお得意様のところへ出かける前に、
私にひとつ、その就職関係の雑誌の巻頭コピーを書いておいてくれと、
用を頼んで出かけたのですが…
で、ここからが苦痛となりました。
資料を片手に良いものを書こうと頑張るのですが、
初めて担当した会社がですね、
たまたま良くない噂をかねてから聞いておりまして、
それがどうも上手く払拭できない。
格好良く書こうと思えば思うほど、
冷や汗が噴き出すんですね。
もう格闘です。
確か、部長は昼前に帰ってくるので、
すぐ原稿をチェックするぞと、確かに言い残して出かけました。
こうなると強烈なプレッシャーに弾みがつき、
いよいよ書けない。
しかし、そこはプロとしてですね、
時間ギリギリにとにかく体裁を整え、
キッチリ仕上げたのであります。
が、読み返してみると、
まるで自分のことばになっていない。
結果、空々しい単語の羅列となってしまい、
どうも自分が書いたものとは思えない、
白々しい作文ができあがった次第です。
予定どおり、
サッサと帰ってきた部長が私の原稿に目を通すと、
不機嫌な顔をしたまま、
いきなり部屋を出てどこかへ行ってしまいました。
そして、昼休みに社長室に呼ばれた私は、
問答無用に「辞めてくれないか」と促され、
怒る気もなく、なんだかほホッとして、
その目黒駅近くのキッタナイビルを後にしました。
クビではありますが、
その開放感というのが嬉しくて嬉しくて、
権之助坂商店街で旨いラーメンを食したのを、
いまも鮮明に覚えているのです。
まあ、
あまり自分に無理をかける仕事はイケマセンよ、
ということでしょうか?
この出来事は、後の良い教訓となったのでありますが、
いま思い返しても自虐的に笑えます。