悪夢「生きながら死んでいる」

嫌なタイトルだ。

まあ、そうした夢を見てしまったのだ。

夢の内容はこうである。

俺はどうも湖面の底に沈んでいて、

そこから上を向いて微動だにできずにいる。

前後関係は不明である。

湖面の上に差す明るさから、

どうも世の中は夕方だろうと察した。

水面にさざ波が立っている。

そこに映る葉のない冬の木立が

わずかに揺れるのが分かる。

俺は湖面の底にいながら、息をしている。

しかし、絶対に動けずにいる。

誰かがどこからか俺を監視しているようなのだ。

そして念のようなものを俺に送っている。

「お前はそうやって生きていけ!」

動けない。

もがいてみるも、全く身動きがとれない。

精神的な息苦しさが体中を巡る。

家族も親友も知り合いも、

俺がこんな所に閉じ込められていることを、

全く知らない。

もはや誰も助けに来てはくれない事が知る。

それにしても言葉が考えられないのだ。

いや、そもそも無音の世界らしく、

声という存在もないらしいと気づく。

辛うじて視覚だけが確保されている。

「お前はそうやって生きていけ!」という念。

………

絶望で全身の力が抜けてゆく。

どうやら風邪の治りかけに見た夢なので、

なんだか自分では納得するのだが、

それにしても、夢が描く想像力には驚いた。

で、覚醒が始まると、

ああ、これは夢なのかと感づくも、

いやまだ分からないと用心を重ねる。

と、鳥の鳴き声が聞こえる。

ようやくこれは夢だったんだとほっとするも、

妙な汗が首のあたりに噴き出していた。

しばし布団の上に座して呆然とする。

以前だが、

枕元に誰かがいる気配であるとか、

いわゆる金縛りとかの経験はあるが、

今回の夢は異次元の恐ろしさで

俺に迫ってきた。

孤独と絶望。

そして誰も助けに来てくれないであろう湖の底で

身動きひとつ取れず、

生かさず殺さずじっと息をさせられる恐ろしさは、

経験した者でないと分からない訳だが、

そういう俺だってただの「夢」であるからして、

こうしていい加減に書き綴っているのだ。

しかし、こんな理不尽な事が、

きっとこの広い世界のどこかに存在していて、

その扉は、

きっと秘密の呪文で

固く閉じられているに違いないのだ!

俺の知らない世界。

みんなの知らない事。

想像は、やはり必要の母である。

いろいろな事象、

さまざまな立場、

辛い事、悲しみ、

そして嬉しい事も楽しい事も…

ここは想像力を駆使して、

その人の身になって、なのだろうな?

いろいろと考えさせられる、

恐ろしい悪夢ではあった。

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