連休の中日、神奈川・丹沢の秘湯へと向かうも、
最初の温泉は泊まり客優先ということで断られた。
かぶと湯温泉。
この宿の露天風呂は、川にせり出すような位置にある。
ちょっと熱いけれど、下に流れる渓流のせせらぎが良い響きで聞こえる。
木々の揺れる音も相まっていいんだよなぁ。
鳥のさえずりもなかなかいい。
残念!
まあ、こういうことには慣れているので、次をめざす。
広沢寺温泉。
ここの宿は、泊り客とは別に湯場がもうひとつあるのですっと入れる。
夕方に行ったので、気温がだんだんと下がってくる。
さっさと湯に浸かろうと思ったが、
やはりというか、すげぇ熱くてどうしても浸かれない。
元々ぬるい湯が大好きで、熱いのが苦手。
着替えも外の吹きさらしなので、早く浸かりたいが、
どう頑張っても入れない。
体温がかなり低下しているのが分かる。
風がさらに冷たくなってきた。
頑張って腰まで浸かったが、肌が痛い。
湯が痛い。
かっぷくのいいおっさんが目をつむってじっと浸かっている。
顔が上気している。
その姿はまるで修行僧のようにもみえる。
他のふたりの中年もなんとか肩まで浸かっている。
こちらからは我慢しているようにみえる。
しかし、こういうときの自分がなんか許せない。
気合を入れても入れない。
しょうがないので洗い場でシャワーをずっと浴びる。
かなり危険なシチュエーションだなぁ。
身体がやけに冷えている。
そういえば、と思い出す。
今年の初めもここへ来て同じ目に遭っていた。
同じ過ちを繰り返すとは…
学習機能が働いていない己にあきれる。
シャワーをずっとかけていたら、
身体が慣れてきたのか、再チャレンジで胸まで浸かれた。
余裕。
外の笹の葉のすれる音に気づく。
近くの川の流れる音が聞こえてくる。
なかなかいいではないか。
見上げると、夕刻とはいえまだ青空が残っている。
ここで、ふーっと気が抜け、
いまさらリラックスですよ。
体温が徐々に上がってきたようだ。
己に笑顔と余裕の表情が戻る。
にしても、いい年をして熱い湯にも入れないことを、
自問自答する。
思えば、
自宅の風呂においても奥さんの後は熱くてそのままでは入れないし、
水をがんがん入れると後で娘に怒られるしなぁ。
丹沢山塊がシルエットになる頃、
湯を出て中庭でコーヒーをいただく。
やはり水が違うとコーヒーもひと味違う、
などとちょっと優雅かつ満足なひとときを味わう。
しかし、それにしてもである。
先ほどからまだあの熱い湯に浸かっている
修行僧のようなおっさん、
なんかかっこいいんだよなぁ。