疲れると、ときどき立ち寄る憩いの地。
近所のTさんという方が営まれている農園です。
すべて無農薬・有機農栽培。
Tさんの農業歴は15年だそうで、
現役時代は東京の建設会社にお勤めされていました。
元々は江戸っ子。
現在は都会が嫌いだそうです。
ふーん。
さて、農園の広さは何反だったか忘れましたが、
とにかく広い。
奥の方には、栗の木も桃の木もたくさんある。
そもそも、一人で面倒をみる広さではないんですね。
素人目に見ても、広すぎる。
作物の種類も多いのですが、
単一作物で効率良くやらないと、
農業というのは儲からないらしい。
Tさんの決算書を見せてもらい、納得。
儲かる農業の概略は私にも薄々分かってきた。
が、Tさんは金には全然困っていないので、
至ってマイペース。
利益は度外視していて、
つくる楽しみのみを追求している。
Tさんは毎日毎日、黙々と作業する。
休憩小屋には、農業に関する本がびっしりと並ぶ。
雨の日も、当たり前に畑に出る。
そして雪の日も太陽がぎらつく真夏も…
農園にはいまどき、
冬だというのに、いろいろな作物ができる。
農薬を使っていないので、
寒いのに、虫も鳥も結構飛んでくるのだ。
そうそう、
湧き水の流れのなかにクレソンがなってる。
飲めそうな清流なんです。
鶏は平飼いで、皆のびのび生活している。
ストレスのない鶏が産む卵は、
近くの市場に卸すと、即完売してしまう。
私もいただきましたが、黄身の張りが違います。
白身の弾力が強い。
そしてなにより旨い。
この日の差し入れは、
コーヒーとバームクーヘンにした。
そういえば、前に来たとき、
TPPと農協のことを話したのを思い出した。
Tさんは、割と議論好きであったのを、
またまた私は忘れていたのだ。
で、予定通りというか、
畑で作業中のTさんに声をかけると、
にこにこして作業を中断、
休憩となったが、
程なく、
「○○さん、日本の人口って、
やはり減ってはいけないのですかね?」
旨そうにコーヒーを飲みながら、
畑を眺めている。
Tさんは、まず謎かけのような質問から来ることが多いのだ。
「ええ、まあ世間ではそういうことになっていますね。
福祉なんか特に…」
当たり障りのない私の受け答え。
「ふーん」
Tさんが続ける。
「あの、かんぽの宿の支出と、昔の社会保険庁から
消えたお金ってどこへ行ったのかね?」
うーん、やはり気を抜いている場合ではないな、と思う。
Tさんの言わんとすることがなんとなく理解できた私は、
「とにかく不明朗で無駄なものが多すぎますね」
と、たばこを一服しながらコーヒーカップを手にしたTさんが、
ニタッと笑う。
「人工増加が前提の税の仕組みとか介護って、
よくよく考えてみると少しおかしいと思いません?」
「………」
ついでに咄嗟に思いついたことを私は口にした。
「資本主義って、そういうもんなのではないですかね?」
「うーん、だけどね○○さん、
それだけではないおかしなことが、この国には多いんだよね。
私はそこんところが解せなくて…」
「ええ、明朗会計ではないことだけは確かですね」
「そうです、
北欧のように小さな政府ってどうですかね?
会計もすべてオープンにすることが基本ですからね」
「確かにおっしゃる通りです」
二人して、ぬるくなったコーヒーをすする。
そして農園をぼおっと眺める沈黙の時間が、
延々と続く。
こんなひとときが私は大好きだ。
帰りにTさんが、
椎茸を採って袋にいっぱいくれた。
「いやぁ、こういう作業をしていると、
一日誰とも話さないこともあるんでね」
「そうですね、ではまた来ます、
お邪魔しました!」
良い景色を眺めると、疲れがとれるな~
帰りはいつも心が軽くなる訳です。
しかし、稚拙な我がアタマがフル回転しても、
何故か疲れないのが可笑しい。
その要因を探すも、
いまだ明快な答えはみつからない。
まあ、普段と違うアタマが、
突然目を覚まして活動するのだろうと、
私は勝手に解釈してはいるのだが…