前略
久しぶりに手紙を書きます。
お元気ですか?
私はいま、車中です。
この只見線から見る景色は
心が洗われるような素敵な景色の連続です。
川に沿うようにのんびり走るこの列車は
急ぐことなく
山並みを縫うように
ただ、ゆっくりと進んでいます。
空いた車内に
こうして一人で窓際に佇んでいると
どうしてあなたがここにいないんだろうと
ふっとそんなことさえ考えてしまいます。
あれからあなたの事ばかりが胸をよぎります。
さよなら、のひと言をいわれてから
私はただ戸惑うばかりの毎日でした。
あのときああすれば良かった
こう話せば分かってもらえたんじゃないか
そうした後悔ばかりがつのります。
あなたはなかなか自分を出さない人でしたから
最後のことばもあなたなりの誠意だったのでしょうね?
私には分かります。
でも
もうおそいですね。
この旅行も
あなたと一緒に過ごした時間を
洗い流そうと
私なりに決めたものでした。
でもいまとても心が揺れています。
会いたい…
また会って
あなたといつまでも一緒にいたい
どうしたらいいのか
自分のゆく先がふらふらしています。
すすきのうえを飛ぶ赤とんぼが
列車についてくるように
何匹も何匹も
そして川を渡ってゆきます。
もう秋ですね!
寂しくなります。
そして私
この冬は、とても悲しくて。
あなたとの想い出は
この先
消えることはありません。
あなたさえよかったら
またこちらから連絡したいのです。
そして
できれば
もう一度だけ
ふたりでいつもかよった
あの海辺のレストランで
お会いしたいのですが…
また連絡します。
どうぞ、お体を大切にしてくださいね。
あなた一人を愛した女より
草々
P.S
あなたはいまのあなたのままでいてください
いつもかわらないあなたが私は好きです。
車窓の外を秋の風景が流れていくリズム感と、主人公の思いがたゆたうテンポが絶妙に合った良い詩ですね。
列車がレールをきしませていく音さえ、言外に響いている感じです。
イメージは70年代フォークの世界ですね。人と人の別れが、今のようにデジタルに処理できる時代とは異なり、去られた者の未練や去っていった者の自責の念がアナログ的につながっている時代ですね。
スパンキーさんでなければ書けない詩かもしれません。
メロディをつけると、いい歌になるかも。
いくら格好つけても、年のせいか?いや多感な時期にしみ込んだ古い感覚は隠せませんね。
おっしゃるとおり、無意識のうちにアナログな内容を書いておりました(笑)。
カラオケに行っても、やはり何曲かはグループサウンズかフォークが混じっております。
演歌も時々。いや参った!
もう、どうしようもないので、このまま突っ走ろうと思います。それしかないから…