楽園

野辺の草を踏むと

一斉にバッタが飛び立った

手を付いて土手を這い上がると

目の前に無数の知らない虫たち

もう秋だというのに

Tシャツは汗ばんでいた

久しぶりにデイパックをぶら下げ

川辺へ出かけた

斜面を登ると

丹沢山塊の端の山々に

うっすらと白い雲が乗っている

頭上の空は青く済んでいる

コントラストの強い風景だった

川面に水が流れ

思いの外澄んだ水の上を

赤トンボが何匹も群れている

その下を黒と赤の鯉が

ゆうゆうと泳いでいる

川沿いに歩いていると

バッタが次々に舞うように飛ぶ

彼岸花の赤が青空に映える

ずっと歩く

陽差しのなかを歩く

枯れた草と

青々とした草に目をやりながら

僕は赤トンボが飛んでゆくのを

ずっと眺めている

田園の向こうに

陽に陰った森が

黒々と鎮座する

春のような景色だと思った

夏のように暑かった

秋の赤い彼岸花

ここは楽園だと

僕は思った

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