僕が
亡くなった方々の事に
いくら想いを巡らしても
それは
あっさりとした涙が流れるくらいの
事の軽さなのだ
そう
僕にとっては
それが何千、何万だろうと
単に数字を追いかけていては
確かなものは見えないんじゃないかと
思えた
ただ
ひとつひとつの
丁寧で精密なストーリーを知れば
命の重さはひしひしと伝わり
それは僕にとっても
一つひとつが縁なのだろう
そこで
豆粒ほどの良心に従って
或るヒトを追ってみたが
それはあまりに辛い作業だったので
慈悲のない僕は
やがてそんなことは無駄だろうと自分に嘘をつき
底の浅い心はやがてその意見に同意し
自ら繋がり始めた縁を絶ち切ることとした
悲劇は
なぜなら
足し算ではなく
かけ算でも足りず
二乗で三乗で
のし掛かってくるから
この作業は危険なものとなり
やがて僕は
ものを考えない仕組みをねつ造し
心にバリアを張り巡らした
ヒトを
数の問題にすり替えることで
僕は
生き延びる術を
知るしかないと
そのとき思った
だって
数は単なる数字なんだよと
自分に言い聞かせ
総論で何かを語る自分がいて
生き延びて
一筋の涙で済ませる程度の
ものの軽さ
はて
どれ程の人間なのか
みんなこうして生き延びようとするのかな
誰もホントのことを
丁寧には知ろうとしない方が
しあわせなんだよとも思う
過去は積み重なるが
前を見ることで
一つひとつを忘却の彼方に置き去りにして
そうやって歩いてゆくのか
潔さと理屈と冷酷
過ぎたことなんか忘れちまえ
僕は一体何を目撃したというのか
僕は一体何を考えたというのか
だから
どうしても忘れられないんだ
少女が
荒れ果てたがれきのしんとした静けさに向かって
「お母さんお母さん」って
ずっといつまでもずっと
叫んでいたことを