まだ眠っているような居間に降りて
とびっきりうまい炭酸水をひとくち
遠くに響く空のうなりは
朝のほんのひとときの
空のあくびだ
家電の小さな騒音に
世界は動いていると確信し
なにも思うこともなく
空気でも眺めるように
ぼうっとする時間が過ぎ
炭酸のはじける音に
耳を傾ける
こうして朝は始動し
夕べの夢は彼方へ消え
朝陽がすっと入り込み
スムースにジャズは流れ
野鳥が庭の花をついばみ
人の足音が朝の正しさを刻み
遠くの国道が騒がしくなり
やがて
家人が蛇口をひねり
とんとんとなにかを刻めば
僕の朝の第一章は終わり
もう二度と訪れない
今日という
かけがえのない日が始まる