スパンキー自選詩

河原の石を積み上げて

それが

人の背ほどになったら

石は石でなくなり

それは霊的な存在となる

湖面の静かな日にカヌーに乗り

パドリングを止め

遠くをみていると

水底より魑魅魍魎が

寄ってくることがある

焚き火の炎に

知らぬ顔が映ることがある

よく見ると

それは錯覚ではなく

彼らもまた

媒体というものを

欲っしている

自由であることは

とてつもない勝利に聞こえるが

ときに自由は

過酷な試練を用意する

飼われるのが羨ましくなるのは

そんなときだ

雨が降り

日に照らされ

風に吹かれて

今日も生きる

僕たちは

紛れもない虫けらだ

地震があって

津波がきた

台風が過ぎて

竜巻が起こって

辛くて悲しくて

とんでもないことばかり

怒っているのは

地球の方なのか

生き物はみな

不思議な営みをしていて

その一部である僕も

自身のこともよく分からない

他を想像しても

やはりそれは

分からないことなのだ

恐竜と同じ僕たちは

地球の総てを支配して

そして滅びる

いつかどこかの星で

僕たちのことが

教科書に載る

即仏即神というものがあると聞くが

そんなものはない

あるのは僕たちの願いと

目の前に広がる

荒涼たる荒野だけだ

泡沫のようにはかない

僕たちの人生だけれど

瞬きほどの輝きを求めて

今日も生きる

そう

蛍のようにね

目が覚めると

総ては夢だった

僕はコーヒーで覚醒し

電車に乗り

また新たな悪夢に

突入する

蛾の雄も雌も

明かりをめざす

その異常なまでの執着は

都会に生きる

男と女に似ている

僕たちは勉強すべし

でないと

見るもの聞くもの総てに

惑わされるので

いつ死んだのか

誰も教えてはくれない

美しい人は

ただそれだけで価値があるが

その妖怪のような気性は

きっと神さまの罰に

違いない

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