常識や思い込み そして哲学が崩れ落ち
神さえ疑わしい日から
幾年 幾月 が過ぎ
やっと
ああそうだ 月って綺麗だなと
窓辺にベッドを移し
文庫本のひとつを手に 和室の灯りを消し
すだれ越しに夜空を見上げれば
平安の時代から変わらないであろう
月あかりは穏やかで
雲が流れる様が
ロマンチックなスクリーンのように
饒舌に
思わず本を置いて
見入っていると
どこからともなく
静かに 静かに
草の音 虫の音と
なんと
平和の音 平安の音
幾重に幾重に
それは夜の指揮者が不在でも
月夜の晩に必ずひらかれる
夜会
こんな世の中だけど
なんだか分からない程に
疲れているけれど
このひととき
この瞬間
平静の瞬きに出会えて
すべてのなにかが整ったのだろう
それを知り得て
やっと受けとめることができた
いまは
生きていることのみで
ありがとう ありがとうと
なにに
誰にと
やはり…
神に祈ろうか