上を向いて歩こう

あばら屋だけど

まぎれもなく我が家だった

或る年の元旦の朝に

女性とその子供と思しき男の子が尋ねてきて

母は驚き

つつましいおせちを出して

精一杯もてなした

お姉ちゃん あの人たち誰?

知らない人

ふん

男の子は乱暴で

僕の戦車のプラモデルを

壁に投げつけた

松飾りがとれる頃

父と母の怒鳴り合う声が聞こえた

それは幾日も続いて

それでも姉は

いつもと変わらず

小学校へと走って行った

僕が夜中に目覚めると

別れる そしてどうする

そんな父と母の ののしり合いが聞こえた

僕はお姉ちゃんの手をぎゅっと握った

お姉ちゃんの寝息が聞こえた

お父さんかお母さんがいなくなるってどういうことだろう

僕はこのウチにいられるのかな

いまの学校へ通えるのかな

みんなバラバラになるのかな

僕はひとりになっちゃうのかな

ひとりになったらどうしたらいいんだろう

僕は怖くて朝まで起きていた

そして

学校の裏庭で何日か泣いた

それからいろいろな事を考え

それは浅はかではあったけれど

僕は強くなると決めた

それから何回も

泣きたいことがあったけれど

せめて

上を向いて泣こうと…

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