不思議な一日(その3)

(前号までの話)

ある朝、私は森へでかけた。すると、身長60センチ位の小さな爺さんが水浴びをしていた。彼は自分を森の精霊だといい、私と話し込むこととなった。

「ところで若者よ、街はどんな様子じゃ? 最近はパソコンなんていうものができて
たいそう便利になったそうじゃな?」

「ええ!お爺さんよく知っていますね!」

「いや、この間の夜ちょっと街へ降りて、ヤマダ電機っていう所へ行ってみたんじゃ」

「はぁ、はあ? ヤ、ヤマダ電機ですか? しかもそのカラダの大きさでですか?」

「イヤ、それはない。わしらはカラダの寸法をいくらでも変えることができるんじゃよ」

「それは凄いですね! で、服はそのままですか?」

「それもない。ユニクロじゃよユニクロ!」

「えっ、ユニクロですか?」

「そうじゃ、あそこのフリースは暖かいのう!」

「しかしお爺さん、ここからユニクロに行くまでこの格好で
行ったんでしょ?」

お爺さんはまたアタマをつるっと撫でると

「君という若者はいちいち話が細かいな。そんなことでは
この物語は続かんぞ!」

お爺さんの目がつり上がってきた。

「スイマセン!」

私は話を続けた。

「で、ヤマダ電機で何を見たんですか?」

「そこじゃよ、肝心なのは!」

「ワシがパソコンをじっと眺めていると
店員らしき若者がやってきて、いきなりわしに説明を始めたんじゃよ」

「はあ、それで?」

「それでじゃ、話を聞いているうちにこれは天上界でも使っている
便利箱の初期型と似ておるな、と分かったんじゃよ」

「便利箱?」

「そうじゃ、便利箱。この箱はもうわしが若い頃からあるんじゃが
とても重宝しておる。いまじゃホレ、ここにもあるがなぁ」

お爺さんは腰の布をめくると、一枚の布っ切れを見せてくれた。

「これは何ですか?」

「これが便利箱の進化したものじゃよ」

「はあ?」

「ほれっ!」

つづく

「不思議な一日(その3)」への3件のフィードバック

  1. >「ほれっ!」
    の後、いったい何が現れるのでしょう。
    精霊お爺さんの手品のようなパフォーマンスに期待がふくらみます。
    この話…、「どう展開するのか分からない」 などとおっしゃっていましたが、ひょっとして、これ「最初にアイデアありき!」だったのではないですか?
    こういう面白そうな展開 (作者にとっては腕の見せ所となるような展開) というのは、ある程度オチまで想定したアイデアが固まっていないと、なかなか引っ張ってこれないように思えます。
    「作家スパンキー」の誕生が間近に迫っているのか!
    いやぁ、楽しみですねぇ。

  2. ヤマダ電機までは「こう来るのか!」なんて思ってましたが
    「ユニクロ」にはやられましたね。
    しかも、フリース着ちゃうんだ、と(笑)
    スパンキーさんのお話や詩がたくさん読めて楽しいです☆
    小さな爺さん像は確実にふくらんできています♪

  3. 町田さん)
    最初にアイデアありき、ではないんですね!というのも、これを書くきっかけは、朝ゴミを出しに行ったときに不思議な感じがしたんですね。寒い景色なのに空気は生暖かいような。で、書き始めたのですが、気分がコロコロ変わって、結果、オチも決めてません。
    今後の流れに期待してください!
    chiakiさん)
    爺さんのキャラは、書いて進めていくうちに、勝手に決まったというかかなりいい加減なんですね!
    私の書くものはこういうのばっかりです。
    だって、自分で自分が信用ならない性格ですからね!

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