一枚の絵

ロンドン

雨に包まれて

人の急ぎ足と教会の鐘の音

バンクーバーの空港

カウンターでもめる

香港行きの黒人の旅行客

東京の空に

見たこともない

美しい満月ひとつ

ガンジス川で

沐浴の女の横を

死体が流れ

裸足の子供たちが走り回る

チョモランマの頂に

ゴミの山眠り

それを照らす満天の星

モンゴルの平原で

馬が草を食み

中東の空に

スクランブル発進した戦闘機が

爆弾を抱え

北京の裏の旧市街に

カナリア飼いの集団が

お茶を啜って

煙草をくねらせ

ナイロビの黄色い砂漠を

バギーカーが行く

アフリカの少女は

教師を夢見て

おとなを夢見て

地中海の海に

男と女の愛のクルーズ

夕日が沈み

冬のローマはバールで賑わい

ドーモォの壁に日本語の落書き

 死んじまえ!

レオナルド・ダ・ビィンチ空港に雪がちらつき

僕はやはりチケットを払い戻し

再びテルミナの駅で

あの一枚の絵についての世界観を

もう一度考えようと思った

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