夜中の2時にとつぜん目が覚めて、
「んー、なんだ?」とまわりを見渡した。
深夜…
しーんとしている。
トイレにいきたい訳でもない。
心身はやけにスッキリしている。
勢い起きようかと思ったが、
ああ例のあれかとハタと気づいた。
寝たのはつい2時間前だ。
スッキリしているハズがない。
ボクはなるほどと納得し、
いつものように静かに目を閉じて
ふたたび眠りにつくのだった。
(いつもは朝まで爆睡なのに)
こんなことがおおよそ年に2回ほどある。
時間は深夜の2時~2時半の間。
そこはきっちりと決まっている。
むかし風に言えば、丑三つ時(うしみつどき)である。
そう、妖怪や幽霊が出るという恐ろしい時間なのだ 汗
彼らが最も活発に動くのがこの時間であるらしい。
この時間に初めて目が覚めたのはかなり前のこと。
そのときはもちろん初めてなので驚いたけれど、
とても不思議な体験だった。
だってお袋が訪ねてきたんだから。
そう、お袋です。
そのときすでにお袋がいなくなってから、
数年はたっていたような気がする。
枕元に近づく何ものかの気配。
畳をすーっすーっと擦る音が近づいてくる。
意識は覚醒していた。
身体が硬直している。
振り向こうとしても、
首がまったく動かない。
小さい頃からお化けとか幽霊とか、
そういう怪しいものには人一倍臆病だったのに、
ボクはそのとき全く怖さを感じなかった。
直感でお袋だと確信したからだ。
お袋はボクの枕元ですっととまり、
そしてボクを背後から見下ろしている。
首がまわらないので見たわけではないが、
お袋は笑みを浮かべてボクの髪に触れた…
そんな気がした。
「お袋だろ?」と声を発しようとするも、声が出ない。
その現象はそのときのたった一回きりだった。
以来、お袋は二度と出てきてくれない。
あとで枕元の時計をみると、確かに2時半ごろだった。
以来、ボクは丑三つ時に目を覚ますようになった。
いまはもうすっかりと慣れてしまって、
翌朝には忘れてしまうような
ささいな出来事になってしまった。
だけどお袋は相変わらず飽きもしないで
ボクを訪ねてきてくれる。
なにか話したいことでもあるのかな?
言い忘れたとても大事な話?
ひょっとすると、あちらの世界で再会した
親父へのちっとも変わらない不満かな?
小学生だったボクがどこかへでかけるとき、
お袋は必ず忘れず「お天道様はいつもみているよ」と
真顔で言い放つのだった。
素朴で信仰心のあついお袋がまたきてくれた…
まぁとにかくボクは、そのたびに感謝している。