スパンキーの気まぐれ随筆

もののけ

焚き火をやろうということになり、

数人で丹沢の山奥へでかけたことがある。

薪と斧とランタンやシチューや鍋、

ディレクターチェアや防寒具など、

クルマの荷室は満杯だ。

谷を見下ろす崖っぷちの細い道を、

奥へ奥へと入り込む。

もうこれ以上奥へ行くと、きっと帰れない。

そんな予感がアタマをかすめる頃、

わずかな膨らみのある道端にクルマを止め、

そこを一夜の宿にすることにする。

陽が沈むと、急に冷え込み、

辺りも、暗幕を降ろしたように

視界が閉ざされる。

木が燃えるパチパチという音が懐かしい。

炎を囲んでいるだけで、とても落ち着く自分がいた。

やはり、来て良かった。

やがて、月に雲がかる。

晩秋の夜だった。

数㍍先に、何ひとつ見えない漆黒の闇が広がる。

清水が湧き出る音が、かすかに遠くから聞こえる。

時折、小石らしきものが崖から落ちてくる。

小動物も近くにいるらしい。

私は、なぜか背後の森を凝視していた。

そして、なにか得体の知れないものが、

こちらの様子をうかがっていると感じてしまった。

ああ、やはりここは私たちの来る所ではないのだ。

以来、その場所へは行ってはいない。

カレーについての考察

日本を訪れたインド人が、

レトルトのボンカレーを食べて、こう言ったという。

「こんな美味いカレーを初めて食べました」

「?」と私。

この話をどこで仕入れたのか忘れたが、

それがホントなのかどうか、ずっと気になっていた。

後年、これを裏付けるような番組をたまたま観た。

秋葉原を歩いているインドの方に、

CoCo壱番屋(だったと思う)のカレーを食してもらい、

その感想を尋ねたところ、

「インドのカレーよりおいしいね」と確かに言ったのだ。

私はインドでカレーを食べたことはないが、

日本でインド人がつくるカレーは何度か味わった。

やはり、本場仕込みはうまいと思う。

がしかし、

日本のカレーとどちらがうまいかと問われると、

そこがよく分からない。

別物と考えれば納得がゆくが、

自分には、その明確な基準がないのだ。

だが以前、

二子玉川のカレー店「モティ」で食べたカレーが、

生涯で一番おいしかったように思う。(おおげさ)

ちなみに、この店は、全員インドの方で構成されていた。

思えば、カレーは、ラーメンやビザ・パスタ以上に、

奥深くて不思議な料理だと思う。

それは、香辛料のせいかも知れない。

以前、香辛料メーカーの仕事をしたことがあって、

少しだけ知識をかじったことがあるが、

とにかくその種類は多種多彩であり、

幾度かアタマが混乱したことがある。

結果、私的に香辛料は不思議、とインプットされている。

先日、街でインド人とすれ違ったが、

彼は、香辛料に詳しそうなインテリな眼差しをしていた。

だが、

「チョットイイデスカ?

世界に分布するカレーの味に関する傾向とその素材構成や

香辛料について、私とじっくり考察しませんか」 

とは、絶対に言えなかった。

すっぴん美人

もう、すでにオリンピックが懐かしい。

その位、時の流れを早く感じてしまう。

今回の大会でも、

当たり前のように、というか、

圧倒的な強さで金メダルをとった

レスリングの吉田沙保里選手。

なぜか、彼女のことが脳裏から離れないのだ。

好きであるとかファンだとか、

そういうものではない。

以前から、ALSOKのテレビコマーシャルを観る度、

この人は動物っぽいな、とは思っていた。

強いだけでなく、勘のようなものが、

人並み外れているようにみえるのだ。

試合後、この人をどこかのテレビでみかけたが、

割と濃い化粧をしていた。

そのとき、私はなにかとても奇妙な感覚に襲われ、

違う、なにかが違う、と混乱した。

それは、彼女の素養を知るにつけ、

すっぴんが一番似合う人と、

私が勝手に決めつけているからに違いない。

シンボル

横浜のシンボルといえば、

いまはランドマークタワーということになる。

が、私にとっては、山下公園前に建つマリンタワーとなる。

小さいときから眺めていたので、今更、心変わりもない。

但し、

塔の色が赤と白の縞模様からグレーに変更されたのはいただけないが…

同じく、東京の人にとっての東京タワーも同様のような気がする。

いまは東京スカイツリーが幅を利かせているようだが、

当然、ノスタルジーに欠ける。

特別の人を除き、そこには思い出も思い入れも、

まだない訳だから…

で、マリンタワーだが、

いまでもたまに横浜へでかけると、

まず、中華街の萬来亭で肉ソバを食して、

腹ごなしにマリンタワーまで歩くことにしている。

そして、エレベーターでてっぺんまで昇って、

関東平野を見渡す。

望遠鏡で覗くと、

東京タワーも六本木ヒルズも、丹沢の山並みも、湘南の海も

一望できる。

マリンタワーの高さは、たかだか100㍍ちょっとだが、

そんな高さでも、私は充分満足できるのだ。

対岸のみらとみらい地区に、憎きランドマークタワーと

インターコンチネンタルホテルが威風堂々と鎮座しているが、

あんな新参者に、私の心は乱れたりはしないのだ。

そして、近くの老舗ホテルである

ホテル・ニューグランドの旧館のカフェで、

カフェオレを頂く。

ここのカフェオレは、なんとポットで出てくるので、

とてもおいしいのに、2・3杯は頂ける。

で、つい長居をしてしまいます。

このコースを私は、

「横浜ノスタルジーコース」と勝手に呼んでいます。

記憶に変更のない限り、

当分の間、このワンパターンで行きたいと思います。

現役

風呂上がりにテレビを点け、

適当にザッピングしていると、

NHKのEテレに風吹ジュンさんが出ていたので、

ここを観ることにする。

内容より、風吹ジュンさんなのだ。

この方は現在60歳だが、とても綺麗。

遠いムカシは、私たちのアイドルだった。

で、番組タイトルは「団塊スタイル」。

私より年上の方をターゲットにした番組らしいが、

内容は心に残るものだった。

97歳の現役フォトジャーナリストである笹本恒子さんが、

この日のゲスト。

この方の半生を追って番組は進行する。

50代でカメラマンで喰えなくなり、一旦離職。

洋裁やフラワーアレンジメントの仕事に転職したが、

どうしてもカメラの事が忘れられず、

なんと70代で現役復帰を果たす。

古くは、井伏鱒二を始め、

日本の名だたる作家達をフィルムに収め、

近年では、イギリスのサッチャー元首相など、

歴史に名を刻んだ人たちも、多数撮っている。

で、この日の番組のサブタイトルが、

「再出発は何度でも」。

いいタイトルだな、と思った。

外交

いま、日本の領土(島です)を、

中国、ロシア、韓国がちょっかいを出している。

これは単なる偶然なのか連携なのか?

私的には、中国とロシアには密約があると睨んでいる。

お互いは、潜在的に仮想敵国同士だが、

対アメリカということで、利害は一致する。

中国と韓国に関しては、国内情勢も絡んでいるようだが、

ロシアは、アメリカの出方をチェックしているようにも思える。

いずれも不愉快な事柄だが、

野田総理が先日、日本の毅然とした態度を表明した。

先方に言わせると、拳を振り上げたとも受け取れる

メッセージらしい。

で、このままヒートアップすれば、

ひと昔前なら、いざ紛争、

悪くすれば戦争となりかねない様相となる。

が、皆、戦争の愚かさを知らない訳ではない。

外交は、こうした争いを粘り強く解決へと導く、

最も堅い手段だ。

では、明治維新以来、日本の外交はどうだったのか?

第二次世界大戦の勃発の発端、

太平洋戦争の終結の遅延、

戦後の日本に於いて、

外交がどこで貢献し、なにを失敗したのか。

その検証を重ね、後に活かすことが、

この国にとっての急務だと思うのだが。

「スパンキーの気まぐれ随筆」への2件のフィードバック

  1. 最初の 『もののけ』 、丹沢の山奥は、確かにこんな空気が流れているところですね。私は、霊感はけっして強い方ではないのですが、昔、キャンピングカーで何度か山奥をさまよい、かろうじてクルマを止められる場所を見つけて車中泊をしたことがあります。
    そうすると、怖いけど、酔ってしまえば、そのまますんなり寝られる場所と、どうしても 「この場を離れなければならない」 と思う場所に分かれるんですね。地形などから感じる違いもあるのでしょうけれど、やはり 「もののけ」 の気配が漂う場所って、あるような気もします。
    『カレーについての考察』 も面白かったですよ。
    私も、日本のカレーについて、インド人に取材したテレビを見たことがあります。
    インド人が、日本のカレーを食べて感じた感想で一番多かったのはどれか? というクイズでした。
    ① おいしいけど、これはカレーではない。
    ② カレーではあるけれど、おいしくはない。
    ③ カレーでもないし、おいしくもない。
    ④ 確かにカレーであるし、しかもおいしい。
     
    答は ④ 番でした。まさに、スパンキーさんの考察を裏付けていたように思います。
    『すっぴん美人』 というのは、まさに吉田沙保里さんのような人をいうのかもしれないですね。
    アルソックのCMに出てくる彼女は、「おい、大丈夫かよ」 といえるほど、奇妙な体操をさせられたり、壁によじ登って目から光線を出していたりと、笑われキャラを通していましたが、メダルを争っているときの表情はきれいでしたね。
    「すっぴん美人」 … ああ、なるほどと、スパンキーさんの洞察に深く頷く思いでした。

  2. 町田さん)
    もののけですが、私も霊感とかはないのですが、(いや少しあるか?)
    こうした場所ってありますよね?
    町田さんもキャンピングカーでいろいろ回っているので、おっしゃるように
    経験していますね?
    あと、ある旅館で「嫌だな」と思い、酒をかっくらって寝たら、夢に
    出てきまして、早朝に退散したこともあります。
    科学では割り切れません。
    カレーは、まあこの話題は、
    よくいわれている事でして、
    私なりにアレンジしましてまとめましたが、
    なんだか最近、街でもインドの方が多くて、
    気にはなっていました。
    イマイチのレポートでした(笑)
    すっぴん美人は、かなり嫌みなタイトルの話でして、
    私がもう少し素直なら、それなりの書き方もあるのですが、
    捻くれているとこういう話になってしまう。
    しかし、ストレートには書けませんよ。ね?
    コメント、ありがとうございます。

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