ジブリの音楽をオルゴールの音で聴くと、
なんだか仕事がはかどる。
そして安らぐんだな。
最近はずっと聴いている。
ジブリ映画が特別好きという程ではないが、
ほとんどの作品は観ている。
最初の「となりのトトロ」が、
やはり何度見返しても、一番いい。
次が「もののけ姫」か。
後、「アバター」という映画を観たとき、
モチーフはもののけ姫じゃないかと、
私は思ったのだが…
で、オルゴールの音色だが、
なぜあの音が好きなのかを自問自答してみた。
結果、三つの記憶が蘇った。
小学生の夏休みだった。
三浦三崎の親戚の家に泊まりにいって、
けだるい午後を居間に転がってダラダラしていたら、
どこからともなくオルゴールの音色が流れてきたのだ。
とても暑い日で、午前は近くの浜で泳いでいたのだが、
グッタリして細い坂道をやっと登り切ると、
あの親戚の家の赤い屋根が見えた。
その家は洋館で、古いがとても洒落ていた。
親戚も仕事上の関係で、この家を借りていたらしい。
玄関に、金色のカラクリ時計がクルクル回っていた。
海辺町の夏の午後はとても静かで、
そのオルゴールだけが生命を宿していた…
二つ目は、横浜駅近くのスカイビルだった。
当時、私は中学校の水泳部に所属していて、
冬は温水プールでインターバルの練習に明け暮れていた。
その頃、温水プールは横浜駅の東口側にしかなく、
そこへ毎日通っていたのだが、
或る日、隣のスカイビルという所へふらっと入ってみた。
1Fではホットドックやコーラの売り場があって、
私たちは、やがて練習後の時間をそこで費やすようになった。
好奇心の強い私は、みんなに黙ってエスカレーターに乗り、
上の階を覗いた。
そこの売り場は、舶来物ばかりがギッシリ陳列されていて、
それを初めて目にした私はホントに驚き、
下階のみんなを呼び寄せた。
まだ外国の事なんて全く分からない私たちは、
驚き、そして感嘆の声を上げた。
そこにはオルゴールの木の小箱が幾つも置かれていて、
蓋をそっと開けると、「乙女の祈り」のメロディーが、
その不思議な空間に流れた。
ビルの屋上から見えるものは、海。
すべて異国の薫りがした。
三つ目は、
大学生でバイトに精を出していた頃。
お歳暮の配達をしていて、
私の担当は、田園都市線の多摩プラーザあたりだった。
年末の配達はとても忙しく、朝早くて夜は遅く、
毎日とても寒かったが、いい収入にはなった。
クリスマスも近いこともあって、
街はどこもクリスマスソングが流れて華やかだった。
この綺麗な街に私は違和感をもっていて、
いまひとつ馴染めなかったが…
ある荷物を届けるため、私は或る店の扉を開けた。
するとふわっと暖かい空気が、冷えた躰を覆った。
店内には、
北欧の雑貨やカラフルなキッチン用品がズラッと並んでいて、
外の雑踏はシャットアウトされ、
加湿器の煙が静かにたなびいて、
オルゴールの音楽だけが静かに店内に流れていた。
メロディはもちろんクリスマスソングだったが、
私はその言い知れないやさしい音色に、
思わず笑みが溢れてしまった。
そういえば、初恋の人に贈ったプレゼントも、
木箱のオルゴールだった。
箱の底に、
そっとハートのペンダントの片方を入れた。