マグロ少年

イルカにのった少年、

オオカミ少年ケンときて、

マグロ少年という流れで書こうかと思っている。

鳥になった少年というのもあった。

この歌はファンタジックなとてもいい歌だった。

いつでも少年は お祈りしたのです

大空自由に 飛べる羽根

ぼくにも下さいと

父も母も どちらもいない

とてもさびしい 身の上だから

いつでも少年は 夢見ていたのです

地上の悲しみない空へ 自由に行きたいと

1960年代にヒットした歌。

とても素敵な歌詞です。

で、少年つながりで、

まずイルカにのった少年ですが、

これは昔よく聴いていました。

歌うは、城みちる。

そこそこのヒット曲だった。

城みちるも人気があったなぁ。

最近、どこかの番組で観たが、

童顔が裏目に出て妙な爺さんになってしまった。

で、この歌はいつもあちこちで流れていたので

かなり聴いているハズだが、

いま思い出しても、なんで少年がイルカにのっていたのか、

それが分からない。

いまも分からないが、調べようとは思わない。

ただ頭に浮かぶのは、

イルカっていつも濡れてツルツルしているじゃないですか?

イルカにのった少年って、

座ってしがみついていてもキツイ。

立っては絶対に乗れないと思いますがね。

狼少年ケンは日本の初期のアニメで

狼に育てられて大きくなった少年の物語。

勇敢で困った人を助け、正義の味方を貫く。

そのキャラに心酔したね。

日に焼けた顔に長い髪がトレードマーク。

腰みの一丁の半裸姿で沢山の狼を引き連れているヒーローである。

テーマ曲は、ボバンババンボンボンバボンバボン…

この曲は、最近では佐々木希、佐藤健、渡辺直美が出ているロッテのCM

フィッツという商品に盛んに使われていたので、やはり名曲なのだろうか?

きっとCMプランナーだかクライアントに私と同世代のおっさんがいたのだろう。

じゃなきゃ、こんな古い曲を知る訳もない。

きっとその人も狼少年ケンが永遠のヒーローなのだろう。

幼い日に刻まれた記憶は生涯色褪せない。

という訳で、ちょっと話の似たジャングルブックと話を被せたかったが、

そんな知識もないのでやめようと思った。

しかし気になったのは、狼に育てられた少年だか少女だかが、

海外にいた、というテレビを過去に数回観たこと。

うーん、嘘だと思う。

ただ、ジャングルブックの冒頭だったかに、

 ―ジャングルの掟は青空のように古い真実―

というフレーズがある。

この一節はとても素敵だ。

さてこの話、前の話と前振りが長かったが、

ようやくマグロ少年の話である。

マグロ少年は、いまからざっと20年前に見た、

当時小学生のガキである。

元気なら、現在は30才くらいの若いおっさんに育っているハズだが、

とんと見かけない。

というか、見かけたところでいまさら判別もつかないが。

彼は当時、ぷくっとした肥満したお腹を抱え、

父親に連れられてウチの近所のこじんまりとした回転寿司屋に現れた。

かんぴょうだかセコい寿司をコネコネしながら食っていた私の横に

彼はどすんと座ると、突然せっつくような力のない声で、

「おじさんマグロ!」とカウンター越しの板さんに、

お願い事のように声を絞り上げたのだった。

うーん、こいつ相当腹が減ってバテているなぁと、

私はこの少年を本気で心配した。

それは他の客も同様で、

一瞬寿司屋店内がしーんと静まりかえったのを覚えている。

そうだ、この少年の腹を満たしてあげることを優先しよう、

我々は少しオーダーを控えて静かにしていよう、

どうしても食いたいのなら

ベルトで流れてくるカッパ巻きとか玉子でも食っていようっと…

ガキは、それから「おじさんマグロ、おじさんマグロ、おじさんマグロ

………これをずっと繰り返して、

ざっと10皿くらい食った後だったか、

突然「おじさんイクラ!」とオーダーしたのだ。

この頃にはその少年も正気を取り戻したようで、

さらに悠然となりつつ、どんと座っている。

目も座っている。

おお元気が出たのかと、

ずっと押し黙っていた私や他の皆さんも、

血色が戻った余裕の少年が、

「イクラね」と偉そうにオーダーをしたのを機に

だんだんとイライラとしてきたのだった。

一方、その少年の父親はというと、

華奢な細い体で肥満した少年の横にちょこんと座って、

なんだか薄ら笑いを浮かべているだけ。

でこの二人、なんだか全然似ていないのである。

が、少年は彼のことをパパと呼んでいたので、

それに従って親子として話を進めるがね。

エヘン!

で、この父親は終始何のオーダーもしないで、

我が子の食いまくっている姿をみては目を細めている。

なんだか店内に妙な空気が漂ってきた。

そろそろウニの軍艦巻きを食いたいなぁと思っていた私も、

連続で板さんを拘束しているその少年にムカつき始める。

思えば、そもそもの話になるが、

私の小学生時代なんぞ、寿司は年に一回のみの摂取だった。

正月しか食えなかったんだぞ!

あとは、誰かが死んだときに寿司が振る舞われる。

いわゆる精進落としのときだけしか食えなかったのになあ、

と考えると、さらに頭にきた訳だ。

これは他の客も同様らしく、

皆さんもみるみる不機嫌そうな顔になっていくのが分かった。

ああ、寿司食って不機嫌はよくないなぁと私は思ったね。

なのに少年がイクラを頼んだあたりから雰囲気最悪。

父親はというと相変わらずなんも食わないでニコニコしている。

これには輪をかけて頭にきたね。

しびれを切らしたか、客の一人である職人風の兄さんが、

「中トロ3皿握ってよ」と捨て鉢に言うが早いか、

その少年が後追いでデカくてパワフルな声で

「おじさんマグロ3皿ね!」と発した途端、

店内には凶悪な風がビュービューと吹きましたね。

さて彼は今頃どこでどうしているのだろう?

地元のジュース工場で働いているのだろうか?

いや、良い大学を出て、東京の商社にでも勤めているのだろうか?

あれから恋なんかして、少しはスマートになったのだろうか?

あの華奢で痩せたお父さんはいまもご健在なのであろうか?

気になるなぁ、

いろいろと下らない事を思い出しては想いを巡らせる、

今日この頃ではある。

ひょっとして私は年を取ると発症するという、

あの過去完全再現型妄想心配症候群なのであろうかね。

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