半日で会社をクビになる。

前項に続き、会社を辞めたシリーズ。

いや、今度は辞めさせられたケース、なんですがね。

若い頃はなかなか職場が安定せず、

ふらふらしていた時期がありまして、

短期間に数社を渡り歩きました。

まあ、今回の会社の話も応募者多数だったのですが、

一応、試験をくぐり抜けて入社できたのですが。

出社初日に合格証みたいな紙切れをいただきまして、

ありがとうございますと、まずはおめでたい朝でした。

で、この会社は一般広告だけでなく、

就職関係の雑誌の巻頭カラーページを請け負っていたりと、

煩雑な会社でして、

その雑誌の巻頭には著名な会社がズラリと並んでおり、

我が社はこんなにすげぇ会社なんです、

あなたの夢が叶いますよ、

福利厚生に手厚いんです、

などと美辞麗句が面々と綴られる訳なんですが、

どうもハッキリいってウソ臭いんですね。

そのなかで内情を知っている会社も幾つかありまして、

これから私は毎日毎日ウソコピーを書くハズでした。

ちょっと嫌ですが、

私にはズシンとくる生活というものがありまして、

キレイ事はいってられない事情があった訳で。

東京のマンションの家賃は高いです。

子供が産まれそう~

いろいろな悩みを抱えていまして、

なにはともあれ頑張ろうと意気込んでいた私なのですが、

直属の部長というお方がお得意様のところへ出かける前に、

私にひとつ、その就職関係の雑誌の巻頭コピーを書いておいてくれと、

用を頼んで出かけたのですが…

で、ここからが苦痛となりました。

資料を片手に良いものを書こうと頑張るのですが、

初めて担当した会社がですね、

たまたま良くない噂をかねてから聞いておりまして、

それがどうも上手く払拭できない。

格好良く書こうと思えば思うほど、

冷や汗が噴き出すんですね。

もう格闘です。

確か、部長は昼前に帰ってくるので、

すぐ原稿をチェックするぞと、確かに言い残して出かけました。

こうなると強烈なプレッシャーに弾みがつき、

いよいよ書けない。

しかし、そこはプロとしてですね、

時間ギリギリにとにかく体裁を整え、

キッチリ仕上げたのであります。

が、読み返してみると、

まるで自分のことばになっていない。

結果、空々しい単語の羅列となってしまい、

どうも自分が書いたものとは思えない、

白々しい作文ができあがった次第です。

予定どおり、

サッサと帰ってきた部長が私の原稿に目を通すと、

不機嫌な顔をしたまま、

いきなり部屋を出てどこかへ行ってしまいました。

そして、昼休みに社長室に呼ばれた私は、

問答無用に「辞めてくれないか」と促され、

怒る気もなく、なんだかほホッとして、

その目黒駅近くのキッタナイビルを後にしました。

クビではありますが、

その開放感というのが嬉しくて嬉しくて、

権之助坂商店街で旨いラーメンを食したのを、

いまも鮮明に覚えているのです。

まあ、

あまり自分に無理をかける仕事はイケマセンよ、

ということでしょうか?

この出来事は、後の良い教訓となったのでありますが、

いま思い返しても自虐的に笑えます。

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半日で会社を辞める。

4月になると、新社会人とおぼしき、

初々しい姿を街で見かけるにつけ、

どうしても思い出してしまうことがあります。

或る会社にやっとこさ、入社できたときのこと。

私の場合は中途入社、転職、

それもムカシの話ですがね。

が、気持ちだけは初々しかったと記憶しています。

西麻布のとある広告会社でした。

で、初出社した朝にマイ机をいただき、

なんでかじっとしている訳です。

やることがあるようなないような、

私も廻りもちょっとした緊張感がありましたね。

しょうがないので、

社内の先輩方の仕事ぶりとか、

壁に貼ってある制作済みのポスターなんかを眺め、

まあ、ヒマでそろそろうんざりしてきまして、

午前11時を過ぎたあたりから、

なんだかクソ面白くもねぇーと

内なる私が呟く訳です。

コピーライターとかデザイナーとかディレクターとか、

そうだ、この会社では或る業界の月刊誌も出していまして、

編集の人間も混じってウロウロしている。

要するにみんな忙しいんですね。

で、「私」という即戦力?を使えば良いのに、

そういうことを考える余裕さえないような、

つまらない職場のように思えましてね。

とにかく各自が仕事に没頭しているのか知らんが、

対照的に私は超ヒマでして、

ざっとこれから毎日ここで働いている自分というものに

想いを巡らすのですが、

どうも笑顔のオレさまがいなのであります。

昼になって、朝一で紹介されたなんとかという先輩上司が、

笑顔で私に近づいてきて「メシ、行こう!」っていうのですね。

「ハイ!」

とりあえず良い返事。

(腹減った~)

都会の雑踏のざわついた部屋の片隅で、

寡黙な私は、数時間ぶりに声を発したのです。

その瞬間、天から声が降りて参りまして、

「辞めちまえよ」ってささやくんですね。

ホントは天ではなく、

私の直感のような内なる声なのでありますが、

まあ、そんなことはどうでもいい。

先輩と私と数人が連れ立って、

夜は酒を出しているとおぼしきスナックのような店で焼き肉定食を喰いまして、

帰りに用があると言い残し、

みんなと別れてそのまま日比谷線に乗り、

恵比寿で山の手に乗り換え、

目黒で目蒲線(現在は目黒線)に乗って、

外をぼぉーっと眺めておりました。

その頃、妻がつわりで大岡山の病院に入院していまして、

真っ直ぐ行こうかなとも思いましたが、

心配させるのもなんなので、

大井町線で自由が丘へ出まして、

くたびれた映画館で「パンツの穴」という映画を眺めていたのですが、

さすがにこれはまずいなと思い、

さきほどの西麻布の会社へ電話を入れ、

正式に辞めさせていただきますと…

で、そのまま妻の病院へ行きまして、

「パンツの穴」の話をざっと致しまして、

ついでに会社辞めましたと正直に話しまして、

ゲラゲラ笑っていたのを覚えています。

こうした勝手な決断の反動は、

後々の我が家の経済に大きく響くことになるのですが、

思うにいま同じ境遇にあっても、

私はやはり同様の判断をするのだろうと…

「三つ子の魂百まで」

諺ってホント、

真実を語るなぁ。

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昨晩は 満月、月食、夜桜でした。

昨晩は、

頭痛を抱えて桜を見に出かける。

皆既月食の夜らしく、桜の写真も妖しく撮れる。

妖しく、というより下手。

FullSizeRender

皆既月食は不吉だ。

不吉だろうと勝手に思っている。

太陽、地球、月が一直線に並ぶと聞いただけでも、

訳もなく不吉だ。

こういう日は、なんだか憂鬱。

だから頭痛なのだ。

春は、寒暖の差も激しいから、よく不調をきたすのか。

万物が芽吹く季節なので、そちらが原因なのかとも思うがね。

にしても、満月って何かと障るのである。

そんな感情を抱きながら

はらはらと散る夜の桜の花びらを見るにつけ、

「人生ははかないなぁ」

などとため息を吐くのだが、

翌日目が醒めるとそんなことはすっかり忘れて、

「さて!」とメシをかき込む。

でないとやってられない、というのが、

目下の私の信念ではある。

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速いクルマに乗ろうと思う。

だいぶ年を喰ったなぁというのが、

この頃の実感。

それは、ぼんやりとだが、

身近に死というものを意識するようになったからなのかも知れない。

しかしだ、

また速いクルマに乗ろうかと、

最近、再び思い始めている訳。

速いクルマといったって、

矢のような早さを求めているのではない。

スポーツカーのようなあの流線型に乗りたいとも思わないし。

カタチは、やはりセダンがいい。

求めているのは、最高速度や高速巡航速度ではない。

いわば加速感。

胸の透くような伸びで、すっと心が軽くなるような…

最近突然そう思い始めた。

ジジィが大型車とかスポーツカーにふんぞり返ってゆったり走る、

思えばこんなのは、かなりつまらない。

ステレオタイプのドライビングスタイルである。

クルマ選びにしても、

速そうで速いクルマっていうのは、カッコ悪い。

速そうで遅いクルマは、更にカッコ悪い。

遅そうで遅いクルマは、そのままで良いが…

普通のナリをしたクルマが突然他を圧倒して、

瞬く間に遠くに消え去ってゆく。

私はそんなクルマがカッコイイと思っている。

かつての栄光もなく、

いまじゃその名も忘れられたクルマの中に、

そんな私のめざす名車が眠っている。

去年、修復不能で泣く泣く手放したクルマが、

そのような1台だったように思う。

VW社のBORA。

このクルマはほとんどの人が知らないか、

または耳にしてもすぐに忘れられてしまうような存在。

車体は小さく、そこそこ軽い。

が、2.3リッター、5気筒のエンジンを搭載し、

足回りは少し柔で不安だったが、

箱根ターンパイクの急な勾配を難なく加速し、

息継ぎすることなく滑らかにグイグイと上る。

パワーウェイトレシオが高く、

5気筒のバラツキ感がまた独特の音を奏でる。

それは全くストレスを感じさせず、

初夏の箱根の爽やかさをより際立たせてくれた。

みてくれは、

トヨタカローラにどことなく似ていたのだから、

ちょっと冴えないし、外観から伺うに全然速そうじやない所もまた、

魅力のひとつだった。

しかし面構えだけは良かった。

また、夜間になると260Km/hまで刻んであるメーターが、

赤く妖しく浮かび上がるから、最初は驚く。

コックピットの些細な演出のみが、

このクルマが実はGTカーであることを、

控えめに誇示していた。

私が考えるに、

名車とは、思わぬ加速で気持ちのズレを修正してくれる

とでも言おうか。

または、相手に瞬時のうちに想いを届けてくれそうな美しさ。

いわば、老いをカバーするように、

若気の勢いを深く宿しているクルマが良いと。

さて、

―こんなクルマをまた手に入れ、

仕事を放っぽり出して、

カミさんと日本一周の旅にでかける―

そんな妄想を最近また抱き始めている。

ムカシのように、

何処へ行くかは気分次第なので、

あらかじめの宿は決めない。

そしてナビは使わない訳だ。

換わりに最新の地図帳を持って行く。

それをいちいち丹念に見たいので、

その時間だけ手間どるが…

そしてLEEのGジャンを後部座席に放り投げておく。

そうだ、ビーチサンダルも積んでおこう!

うん、これじゃ若い頃となにひとつ変わらないじゃないか?

いや、

ホントは、なにひとつ変わりたくないんだと、

最近になって気がついた。

年をとったって、なにひとつ…

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長い舌

なにが面白いのか

みんなケラケラと笑っている

人だかりの向こうでひとりの男が樽の上に乗り

口から火を吹き

目を見開いているのがみえた

赤い奇妙な衣装を身につけたその男が

今度は槍をみんなに向けて突くマネをする

笑った顔から突き出た長い舌は真っ白で

白目に血管が浮き出ているのが遠目にも分かる

そんな大道芸が

最近町のあちこちに現れては人目を惹いては

人だかりができるのだ

僕はあの火を吹いた男を以前見たことがあるが

それが何処だったか

とんと思い出せない

なぜだか嫌な予感がして

背筋に悪寒が走った

部屋に戻ってテレビをつけると

見慣れない男と女が裸で絡み合っている

男が横になった女に呟いた

「愛しているよ…」

直後に男がカメラに振り返り

ペロっと長い舌を出した

その薄汚れた灰色の舌には

冗談というシールが貼られていた

僕はなんだか息苦しくなり

窓を全開にすると

いままでかいだこともない異臭が鼻をつく

遠くで何かが炸裂する音がしている

窓下の通りを数人の男達が走りながら

「やっちまえ、やっちまえ!」と絶叫していた

胸騒ぎが起きて

洗面所に走って行って顔を洗うと

赤く濁った

いままで見たこともない液体がとめどなく流れ

僕はその場で卒倒してしまった

どのくらい経っただろうか?

うなるような轟音の音で目が醒めると

外はどんよりと暗くなっている

窓に近寄り空を見上げると

見知らぬ飛行体が上空を埋め尽くしている

咄嗟に逃げようと駆け出すと

今度は足元から地鳴りがして

部屋全体がガタガタと揺れ

僕は立っていられなくなり

そのまま窓の枠にしがみつく

窓下を

あの大道芸に集まっていた人達が

悲鳴をあげて逃げ惑っている

僕はあの大道芸の男の顔を

やっと思い出したのだが…

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併読のススメ

藤沢周平の「回天の門」を読みはじめたのが、

かれこれ一ヶ月前だったろうか?

割と分厚い本。ページ数にして、550ページ強といったところか。

それまで、アウトドアのMOOKなどを中心に読んでいたので、

ビジュアル中心に目が慣れたこちらとしては、

ちょっと細かい字が辛い。

しかし藤沢周平の作品は、

私の大好きなストーリー、テンポ、時代感なので、

かれこれ20冊以上は読んでいる。

主人公は江戸時代の武士または町の職人が多いが、

市井のひとばかりで、有名人とか大物は皆無に等しい。

登場する女性がとにかく美しい。

顔立ちだけでなく、心根の美人が多い。

この時代ならではの人の機微が、物語を分厚いものにしている。

と、ブックオフにふらっと立ち寄ったところ、

椎名誠さんの未読の本に出会ってしまい、即買い。

これが枕元に並んでしまって、交互に読んでいる。

「ごんごんと風にころがる雲をみた」というこの本は、

椎名誠さんが世界の果てで体験したものをまとめたエッセイ集。

寝る前に読むにはワクワク度が高く、

面白くて少し良くない。

ある時間でキッチリ本を閉じないと翌日に響くので、

そこら辺のケジメが難しいのだが。

で、昼とか夜の空いた時間は、当初「吉野弘 詩集」をぺらぺらとやり、

感動に浸っていたのだが、あるときお笑いの又吉直樹の本を手に入れ、

冒頭をチラ読みしたところ、かなり面白いので、そのまま続行。

こちらも併読となった次第。

このくらいなら、まあこちらのアタマさえ切り替えれば、

キャパの範囲内なのだが、

あるとき、

先輩の編集者のブログで紹介されていた池田晶子さんの本が無性に欲しくなり、

アマゾンで短絡的クリック買い。

到着早々、こちらにもハマってしまった。

で、吉野弘の詩集はなんというか、ことばの力をみせつけてくれて、

こちらとしてはこうべを垂れるしかない。

後はため息か…

そして又吉の、

いや正確には、せきしろ×又吉直樹の「まさかジープでくるとは」は、

かなり実験的な試みも入った意欲的な本で、

七五調や季語を無視した俳句っぽいものを載せたり、

意味深なエッセイや写真が満載である。

が、やはりこの人たちは光る何かがあるなと、

実感させられる一冊。

で、池田晶子さん。

もう亡くなられてしまった方だが、

哲学を平易な文で語ってくれる希有な才能の人。

さらっと凄いことを書くところが魅力である。

タイトルは「暮らしの哲学」。

この平凡な名前の本に、人生とか時間の観念とか、

無、無限、意識、無意識の話がさらっと書いてある。

しかし、難しいのではなく、深み。

季節感溢れる情緒豊かなエッセイとしても、

異彩を放っている。

さて、これら五冊を併読していると、

たまにアタマのカクテル状態に陥ることがある。

特にビジネス中心の昼間など、

あるセンテンスなどが不意に浮かび上がり、

手が止まることもしばしば。

企画書は完全にストップ、

コピーライティング低迷。

見積もりは間違いだらけ、は良くないけれど。

思うに、これらの併読は、

ある意味「毒」ではある。

仕事を阻害する要因としては、

金欠、恋愛に等しい邪悪な環境を作り出す。

が、

♪やめられないとまらない♪

併読は、ムカシ流行ったかっぱえびせんのコマーシャルの如し。

お陰様で、休日も仕事をしている有様です!

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スマフォサイトのすすめ

Googleが、スマフォサイトがないと検索順位が落ちますよ。

そんなことをアナウンスしています。

それも4月某日と期日指定していますので、

Googleにしては希有なことでして、

これは早急に対応した方が良いと思います。

スマフォサイトは、PCサイトをそのまま表示しても、

これはもう重すぎるし、アレコレと項目も多すぎる。

まず、直帰されてしまいますね。

スマフォ版は、シンプルイズベストをめざします。

PCサイトの基本項目をピックアップすることから始めます。

それを核に構築を考える。

いわば、店に例えると本店がPCサイトとすると、

スマフォサイトは支店。

またはアンテナショップ。

そんなイメージでしょうか?

逆に、モバイルの方が売上げ、

反応率が良いという業種の方は、

この際、考え方をひっくり返し、

スマフォサイトから構築し直してみる。

そしてPCサイトを後追いさせる。

こうしたモバイルファーストのケースもある訳です。

この際、あなたの業種、商品の特性を改めて点検し、

自社のサイトを徹底的に分析してみるのも、

良い機会かも知れません。

クルマに関する転向動機

アクセルを踏んでエンジンが唸る。

そういうのをちょっとカッコイイと思うのは、

もうすでに過去の人なのだ。

ドリフトとかタイヤを鳴らして加速するなんぞは論外。

そんな時代は、もうとっくの過去に過ぎ去った。

そんな美学にすがりつくオヤジというのは質が悪いので、

時代は更にオヤジを置いてけぼりにしてしまうのである。

目を覚ませ!

で、最近のクルマはというと、

そうですね、

何の音もせず、スッと加速し、

瞬く間に姿が小さくなる、

という具合。

新型は、静か、かつ速いのだ。

ハイブリッドとかEVとか、

その仕組みは私にはよく分からない。

というか、興味はないが、

とにかくそんな類いのクルマが

相当の勢いで増えているのは確かである。

対して、旧車を愛する方々も相当数いるらしく、

ミニクーパーとかカブトムシ、

レビン党、スカG党他、

いまだかなり生息しているのは確かだ。

現在、私の乗っているクルマはごく普通のVWゴルフだが、

それだってバックモニターやら、

なんとかオーディオシステムとか、

しゃべるナビとかいろいろ付いていて、

操作に一苦労する。

というかうるさい!

キーを差し込むと同時に、いろいろ機器が、

アレコレと一緒にしゃべるので、

車内がホントに騒々しい。

でですね、

最新のクルマはというと、

これがもう宇宙船状態なんですね。

あるとき、

これは新型のボルボですが、

そのキャビンを見せてもらったところ、

私は唖然とし、

よく分からないスイッチ類がズラッと並び、

持ち主にアレコレ聞いたのだが、

恐ろしいことに、実は私にも分からない、

というではないか。

人間置いてけぼり…

こういうクルマの進歩を見ていると、

運転のみに集中している時代ではないな、

それが返って危ないのではないか、

などと私なんぞは危惧してしまうのだが、

聞けばいろいろな安全装置とか安全システムが搭載されていて、

それはそれでよろしいらしいのだ。

ふーん。

とまあ、最近のクルマに割と失望していたのだが、

半年ほど前あたりから、

気になるニュースを耳にするようになった。

それは何を隠そう、

「自動運転」というキーワードであった。

私はこの類いのニュースが痛く気になり、

いろいろ調べたのだが、

実用化へのメドは立っているとのこと。

インフラが整えば、、

かなり近い将来の実用化も可能だという。

日産、ボルボなどがその技術の最先端をいくようだが、

いわゆるソフト系のGoogleとかAppleも触手を伸ばしているという。

こうした傾向は、市場がかなり有望であることを示している。

ただ、問題は万が一事故を起こしたときの責任とか、

そうした類いの法整備が遅れているのが現状らしい。

で、私が興味を示した発端は、

現役を引退したら何処へ住もうかという悩みだった。

いつまでも若者ぶってはいられない、

いつまで運転できるのかな、

そんな心配事を想像すると、

やはり駅近とか街中とか、

便利な場所への引っ越しを考えザルを得なくなる。

が、最近の自分的趣味からして、

あまり人の多いところとか繁華街に住むのはゴメンだ、

というのがあった訳で、

郊外に住みつつ何か良い移動手段があったらな?

と考えている最中だったのである。

そこに「自動運転」というキーワードが飛び込んできた。

私にとっては、かなり魅力的な近未来を想像させるニュースだった訳だ。

そう、

じじぃになったら、いまより更に静かな所で暮らしたい、

陽当たり良好、風光明媚。

小さな畑を耕し、近くには川とか湖とか海とがあって…

そんな希望を叶えてくれるのが、自動運転なのである!

街中などに用のあるときは、行き先をインプット。

私はクルマに乗っても、ハンドルは握らない。

で、景色を楽しみながら、いや読書ですか、

そんなことで時間を潰し、

めざすスーパーなり役所なりに自動で辿り着くという、

理想的なストーリー。

じじぃの入口に立った私が、

いまさら時代の流れに逆らったところで、

結構無理が祟っていたのは確かなことではある。

そこで、過去のこだわりを一切捨て、

今後の方針を一挙に180度切り替え、

時代の波に乗るというイージーな人間に変身することにした。

これが私の現在の姿なのである。

裏切り、罵倒、卑怯者。

そう、ムカシの仲間連中からは非難ごうごうだろう。

うーん、だが何と言われようと、

いまは自動運転の実現を切に望む。

ここは譲れない現在の私なのでありました。

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リフレッシュ農園

あ

う

疲れると、ときどき立ち寄る憩いの地。

近所のTさんという方が営まれている農園です。

すべて無農薬・有機農栽培。

Tさんの農業歴は15年だそうで、

現役時代は東京の建設会社にお勤めされていました。

元々は江戸っ子。

現在は都会が嫌いだそうです。

ふーん。

き

さて、農園の広さは何反だったか忘れましたが、

とにかく広い。

奥の方には、栗の木も桃の木もたくさんある。

そもそも、一人で面倒をみる広さではないんですね。

素人目に見ても、広すぎる。

作物の種類も多いのですが、

単一作物で効率良くやらないと、

農業というのは儲からないらしい。

Tさんの決算書を見せてもらい、納得。

儲かる農業の概略は私にも薄々分かってきた。

が、Tさんは金には全然困っていないので、

至ってマイペース。

利益は度外視していて、

つくる楽しみのみを追求している。

Tさんは毎日毎日、黙々と作業する。

休憩小屋には、農業に関する本がびっしりと並ぶ。

雨の日も、当たり前に畑に出る。

そして雪の日も太陽がぎらつく真夏も…

農園にはいまどき、

冬だというのに、いろいろな作物ができる。

農薬を使っていないので、

寒いのに、虫も鳥も結構飛んでくるのだ。

そうそう、

湧き水の流れのなかにクレソンがなってる。

飲めそうな清流なんです。

え

鶏は平飼いで、皆のびのび生活している。

ストレスのない鶏が産む卵は、

近くの市場に卸すと、即完売してしまう。

私もいただきましたが、黄身の張りが違います。

白身の弾力が強い。

そしてなにより旨い。

さ

この日の差し入れは、

コーヒーとバームクーヘンにした。

そういえば、前に来たとき、

TPPと農協のことを話したのを思い出した。

Tさんは、割と議論好きであったのを、

またまた私は忘れていたのだ。

か

で、予定通りというか、

畑で作業中のTさんに声をかけると、

にこにこして作業を中断、

休憩となったが、

程なく、

「○○さん、日本の人口って、

やはり減ってはいけないのですかね?」

旨そうにコーヒーを飲みながら、

畑を眺めている。

Tさんは、まず謎かけのような質問から来ることが多いのだ。

「ええ、まあ世間ではそういうことになっていますね。

福祉なんか特に…」

当たり障りのない私の受け答え。

「ふーん」

Tさんが続ける。

「あの、かんぽの宿の支出と、昔の社会保険庁から

消えたお金ってどこへ行ったのかね?」

うーん、やはり気を抜いている場合ではないな、と思う。

Tさんの言わんとすることがなんとなく理解できた私は、

「とにかく不明朗で無駄なものが多すぎますね」

し

と、たばこを一服しながらコーヒーカップを手にしたTさんが、

ニタッと笑う。

「人工増加が前提の税の仕組みとか介護って、

よくよく考えてみると少しおかしいと思いません?」

「………」

ついでに咄嗟に思いついたことを私は口にした。

「資本主義って、そういうもんなのではないですかね?」

「うーん、だけどね○○さん、

それだけではないおかしなことが、この国には多いんだよね。

私はそこんところが解せなくて…」

「ええ、明朗会計ではないことだけは確かですね」

「そうです、

北欧のように小さな政府ってどうですかね?

会計もすべてオープンにすることが基本ですからね」

「確かにおっしゃる通りです」

二人して、ぬるくなったコーヒーをすする。

そして農園をぼおっと眺める沈黙の時間が、

延々と続く。

こんなひとときが私は大好きだ。

帰りにTさんが、

椎茸を採って袋にいっぱいくれた。

こ

け

「いやぁ、こういう作業をしていると、

一日誰とも話さないこともあるんでね」

「そうですね、ではまた来ます、

お邪魔しました!」

良い景色を眺めると、疲れがとれるな~

帰りはいつも心が軽くなる訳です。

しかし、稚拙な我がアタマがフル回転しても、

何故か疲れないのが可笑しい。

その要因を探すも、

いまだ明快な答えはみつからない。

まあ、普段と違うアタマが、

突然目を覚まして活動するのだろうと、

私は勝手に解釈してはいるのだが…

お

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オルゴールの記憶

ジブリの音楽をオルゴールの音で聴くと、

なんだか仕事がはかどる。

そして安らぐんだな。

最近はずっと聴いている。

ジブリ映画が特別好きという程ではないが、

ほとんどの作品は観ている。

最初の「となりのトトロ」が、

やはり何度見返しても、一番いい。

次が「もののけ姫」か。

後、「アバター」という映画を観たとき、

モチーフはもののけ姫じゃないかと、

私は思ったのだが…

で、オルゴールの音色だが、

なぜあの音が好きなのかを自問自答してみた。

結果、三つの記憶が蘇った。

小学生の夏休みだった。

三浦三崎の親戚の家に泊まりにいって、

けだるい午後を居間に転がってダラダラしていたら、

どこからともなくオルゴールの音色が流れてきたのだ。

とても暑い日で、午前は近くの浜で泳いでいたのだが、

グッタリして細い坂道をやっと登り切ると、

あの親戚の家の赤い屋根が見えた。

その家は洋館で、古いがとても洒落ていた。

親戚も仕事上の関係で、この家を借りていたらしい。

玄関に、金色のカラクリ時計がクルクル回っていた。

海辺町の夏の午後はとても静かで、

そのオルゴールだけが生命を宿していた…

二つ目は、横浜駅近くのスカイビルだった。

当時、私は中学校の水泳部に所属していて、

冬は温水プールでインターバルの練習に明け暮れていた。

その頃、温水プールは横浜駅の東口側にしかなく、

そこへ毎日通っていたのだが、

或る日、隣のスカイビルという所へふらっと入ってみた。

1Fではホットドックやコーラの売り場があって、

私たちは、やがて練習後の時間をそこで費やすようになった。

好奇心の強い私は、みんなに黙ってエスカレーターに乗り、

上の階を覗いた。

そこの売り場は、舶来物ばかりがギッシリ陳列されていて、

それを初めて目にした私はホントに驚き、

下階のみんなを呼び寄せた。

まだ外国の事なんて全く分からない私たちは、

驚き、そして感嘆の声を上げた。

そこにはオルゴールの木の小箱が幾つも置かれていて、

蓋をそっと開けると、「乙女の祈り」のメロディーが、

その不思議な空間に流れた。

ビルの屋上から見えるものは、海。

すべて異国の薫りがした。

三つ目は、

大学生でバイトに精を出していた頃。

お歳暮の配達をしていて、

私の担当は、田園都市線の多摩プラーザあたりだった。

年末の配達はとても忙しく、朝早くて夜は遅く、

毎日とても寒かったが、いい収入にはなった。

クリスマスも近いこともあって、

街はどこもクリスマスソングが流れて華やかだった。

この綺麗な街に私は違和感をもっていて、

いまひとつ馴染めなかったが…

ある荷物を届けるため、私は或る店の扉を開けた。

するとふわっと暖かい空気が、冷えた躰を覆った。

店内には、

北欧の雑貨やカラフルなキッチン用品がズラッと並んでいて、

外の雑踏はシャットアウトされ、

加湿器の煙が静かにたなびいて、

オルゴールの音楽だけが静かに店内に流れていた。

メロディはもちろんクリスマスソングだったが、

私はその言い知れないやさしい音色に、

思わず笑みが溢れてしまった。

そういえば、初恋の人に贈ったプレゼントも、

木箱のオルゴールだった。

箱の底に、

そっとハートのペンダントの片方を入れた。

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