ポインター爺

東京都武蔵野市の閑静な住宅地に住む私は、

まず、朝の散歩からすべてが始まる。

この住宅地の特徴は、なんといっても、

住人同士の繋がりを意識し、

挨拶運動も盛んだ。

これは、防犯上も欠かせないものらしく、

不審者は、その辺りに敏感に反応する。

そんな訳で、私も積極的に挨拶を交わす習慣がついている。

が、しかしだ。

朝っぱらから、あの厳しい目つきはなんだろうと思うのだ。

すれ違う度にイライラするのだが、

例の熟年が連れて歩いているポインターは、

とてもつぶらで、穏やかな目をしているのだが…

あの犬は、きっと性格も良い。

問題は、その素敵な白と黒のポインターを始終連れて歩いている、

買い主たる、あの熟年だ。

定年退職して10年経ちました。

唯一の趣味は、犬を連れて散歩することです。

そのように思う。

そうとしか思い浮かばない。

が、この熟年が周囲を威嚇する、

あの目と警戒心は、どこからくるのだろうか。

きっと此奴は近所に敵意を抱いている。

過去になにかあったのだろう。

それにしても、愛想なさ過ぎだな。

此奴は、雨が強く降る日も、歩いている。

しっかり素敵な雨合羽を羽織っている。

レインブーツも履いている。

準備とやる気は、充分に感じられる。

連れ添うポイン犬も、しっかり前を見て、

黙々と歩く。

台風が近づいた或る日、

私は隣町をクルマで走っていた。

平日午後3時というシチュエーションなのだが、

此奴は例の雨合羽を羽織り、黙々とポイン犬と歩いているではないか。

思うに、私は此奴、

いわば熟年Aの人生や生活のなにも知らない訳だが、

なんでかすべて分かるような気になってしまうのだ。

10年前まで、大手印刷会社の業務管理部長をしていました。

自他ともに認める実直さは度を超し、

まわりから煙たがられるだけでなく、

そろそろ自分で自身が嫌になっていた頃でもありました。

そんなこんなでそろそろ年だし、

会社を辞めることにし、半年ブラブラしていましたが、

なにか自分の現状に実直さが足りないとイライラし、

近所の公民館で開催されているシニアダンス教室を覗きました。

(自分に足りないものは、うーんユーモア?)

ずっと自覚はしていたので、まずは社交性を磨かないとと、

自ずとダンスを目標に致しましたが、

教室内では、すでにできあがった仲良しグループで構成されていまして、

熟年Aは、どうも馴染めない自分に失望すると共に、

この排他的なダンス教室に敵意を抱いたのでありました。

あっ、そうだ。

熟年Aには、とてもできた奥様がいます。

奥様は、「あなたのやりたいこと、なんでもなすったら」

と、いつもやさしくAを応援し、

自らは永年勤めている近所のお菓子工場へ、

いそいそと出かけるのでありました。

が、実はこの奥様はこのパート先に仲良しがいっぱいいまして、

中には若いイケメンのボーイフレンドも混じっております。

Aが、その臭いを嗅ぎつけたのは、

退職後3ヶ月余りの或る夕食での会話でした。

当然Aは、このことを妻に告げるつもりもありませんし、

その気力も失せております。

子供は二人いますが、現在はどちらも片付いて、

いまはそれぞれ家庭を持ち、

遠くで暮らしています。

そんな或る家族を長い間眺めて暮らしていたのが、

利発なポインターです。

ポインは奥様にやさしく育てられました。

二人のお子様も、この家でやさしく育てられました。

そんなポインもそろそろ中年にさしかかった頃です。

のんきにひなたぼっこする毎日から、

いきなり熟年Aに連れ回されることになったのですから!

最初は、毎日毎日出かけられるうれしさで、

くんくん鼻を鳴らしていたものです。

が、さすがの猟犬ポインも中年です。

だらんとした毎日を過ごしてきた訳です。

毎回3キロ~5キロ、そして朝晩と回数も距離も増えますと、

さすがに中年のポインもバテ始めます。

が、熟年Aは、実直かつ、まわりに敵意を抱く、

まさに歩くロボットです。

そんなポインの具合や体調などに配慮するデリカシーなど、

端っからありません。

気の良い奥様に育てられたポインは、

まあそんなことも分かっていましたので、

まあいいかと今日も此奴に連れられ、

真っ直ぐ前を見て、

ただただ黙々と歩くのでした。

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或る編集者の記録

その、気になる文庫本は、ビレバンの棚で寝ていた。

買い主を探す気もないように見えた。

タイトルは「編集者の時代」。マガジンハウス編となっている。

サブタイトルは、―雑誌づくりはスポーツだ―

良いタイトルだなと思い、私が強引に起こし、レジへ。

アマゾンでも見落としていたような本が、

街の本屋でみつかったときは嬉しい。

本屋にないものがアマゾンでみつかることもあるが、

これはそれほどの感激はない。

あったな、というだけ。

私たちは、買うスタイルを使い分けている。

売り手さんは上手く共存してください―

これが本屋さんに対する私の理想だ。

で、この本のまえがきを読むと、

「ポパイ」という雑誌が1976年に創刊されたことが分かる。

計算すると、私はまだ学生だった。

ポパイは、よくカタログ雑誌と評された。

アメリカの西海岸やハワイのライフスタイルを手本に、

そこで活躍しているモノを通して、これらを日本に紹介する、

当時としてはある意味画期的な雑誌だった。

この頃、私のまわりは皆、

ポパイファッションになっていた。

もっと遡ると、

お兄さんやお姉さん方はすでに平凡パンチの影響を受け、

アイビールックで街を闊歩していた時期があった。

あれもこれも、上記の本の編集者たちが仕掛けたものだ。

社名を平凡出版からマガジンハウスと変えてからも、

そのパワーは持続していた。

世の中のファッションやライフスタイルを変えるほどの影響力を、

彼らはもっていた訳だ。

なかでも、注目される編集者が木滑良久という人。

かなりの有名人で、

一時はテレビにも頻繁に出ていた。

彼が、これらの企画の元をつくった人と言われている。

彼の素材モチーフは、アメリカにあった。

現代に置き換えると、

私たちの知らないアメリカのオシャレなファッションや雑貨、

ライフスタイルなどをいち早く日本に紹介する、

ファウンダーというところか?

後年、私も雑誌編集者となったが、

この本に書かれているように、世の中の風向きを変える、

という華々しい経験は皆無。

マイナー誌だったので、だいたいが後追い状態。

これらの雑誌類とは編集方針が違うといえば聞こえは良いが、

金がない、人が足りない…いや、企画力と情報収集力、

更に編集力がなかったと言ったほうが正確だろう。

「編集者の時代」は、

ポパイの或る時期の編集後記を書き連ねただけのものだ。

しかし、年代と記事の中身を読みあわせると、

不思議なほど、その時代の空気が再現されている。

サーフィン、スケボー、ウォークマンスタイル、ラコステのボロ、

スタジャン…。これらの流行に加速をつけたのもポパイだ。

それは羨ましくもあり、読み進める程に、

ひとつの時代を築いた自負が感じられる。

(このグループが後に女性誌「オリーブ」を創刊する)

1977年8月10日の編集後記は、

ジョギングについて書かれている。

まず、ニューヨークのセントラルパークや、

ロスのサンタモニカのジョギング風景が紹介され、

それは都市のライフスタイルとしてカッコイイんじゃないか、と。

そして、海の向こうの彼らは、

生活のなかに自然にスポーツを採り入れているよと…

何気に日本の空気を変えようとしている。

翌月はこうだ。

「ポパイは理屈が大嫌い」

70年安保を経て、日本には、依然アカデミックの風が闊歩していた。

この時代の主役雑誌は、言わずと知れた朝日ジャーナル。

とにかく、政治を語れない奴は生きている資格なし、

のような時代もあった。

しかし、これに対するアンチテーゼが、

平凡出版の「平凡パンチ」であり、

その軽さを継いだのがポパイのような気がする。

新しい時代の訪れだった。

ポパイの他、ブルータス、オリーブ、

本の雑誌、広告批評、NAVI、ミスターバイク、ビーパル等、

創刊ラッシュが起きる。

景気は更に上向き、

雑誌編集者もエンターティナーとなってゆく。

前述した木滑良久がテレビに出ていたのも、

こうした背景からだろう。

他、嵐山光三郎さんや、先に紹介した「本の雑誌」の

椎名誠さんらが加わる。

「編集者の時代」のあとがきは、

後藤健夫さんというポパイの創刊メンバーの方が書かれている。

それによると、

木滑良久さんの口癖は「男は少年の心を忘れてはいけない」

だったそうである。

更に、海の向こうの「エスクァイア」の創刊編集長であった、

アーノルド・ギングリッチの言葉として、

「雑誌づくりは青年の夢だ」を引用している。

一時代を牽引したポパイは、いまも刊行されているし、

ブルータスと共に、またまた息を吹き返しているようにみえる。

一見、なんの主張もないような雑誌とみる向きもあるが、

作り手には、実に熱いものが流れているのが分かる。

雑誌とか本づくりとは、本当はこのようなものなのかも知れない。

つくっている本人が面白くない本など、なんの価値もない。

この本を読んでいて、

なんだか私も再び雑誌をつくりたいと思うようになった。

ネットに較べて、予算、人員の割き方も去ることながら、

その投資しただけの企画とこだわり、

そして直しの利かない真剣さを求められるが、

それだけの価値が、この仕事にはある。

ふたつのことば

締め切りのある仕事ばかりしていると、

いい加減に耐性ができてしまい、

辻褄合わせだけはうまくなる。

若い頃、締め切りが近づくと、

胃がキリキリと痛んだ。

寝ていても、パッと目が醒めて、

突然、仕事のことが浮かぶ。

ああしよう、こうだろうかと、

思い倦ねる。

そんな日々が続いた。

しかし、耐性は割と早く形成され、

習慣とは凄いものだと思ったことがある。

その深層には、「なんとかなる」、

という確信めいたものが、

ぼんやりではあるがつくられている。

でなければ、そんな気持ちになれない。

なんとかなる…心境は、経験から掴んだ。

だから、いまでも何事もなんとかなると、

まず考える。

確かな根拠などなくても、

なんとかなると思っている。

そうして事にとりかかる。

これは仕事だけでなく、すべてのことがらが対象だ。

経済的に困窮しても、具合が悪くても、

なんとかなる、だ。

そのようにして、いままで切り抜けてきた。

しかし、このところ、

なんとかならない事象が増えた。

言い換えれば、どうにもならない事態が続いた。

肉親を亡くしたときも、

古い友人がいなくなったときも、

私は、気がつくとうつむいて

「しょうがない」とつぶやいていた。

これは、

不遜かつ非礼な言葉を吐いているなと反省もしたが、

他の失敗や取り返しのつかないことも、

しょうがないとしか考えなかった。

思うに、しょうがないとしか他に言いようがないのだ。

亡くなった人は、絶対に帰ってはこない。

取り返しのつかない失敗も、

ただ嘆くのではなく、

今後はなんとかなるようにしなければならない。

それだけのことだ。

そうは言っても、日々アレコレと思い返し、

あの時ああしてあげていればとか、こうすればとか、

ウジウジしている自分がいる。

がしかし、

今日もなんとかなると思って生きている。

すべて、なんとかなる。

物事は、そのようにして私に与えられている。

でなければ、私の努力が足りないのだ。

だから全力でなければならない。

誠実でなければ後悔する。

真剣でなければ虚構となる。

後はすべからく、

「しょうがない」ことばかりが残るのだ。

これは、日々生きているのだから、

どうしようもない。

しょうがないと思っている。

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一瞬で職業を推測してみたが…の巻

フレッシュネス・バーガーのテラスで、

タマネギとピクルスいっぱいのホットドッグに、

ケチャップをたっぷりかけて喰っていると、

どこからともなく、高級チャリにまたがったオヤジ二人が現れ、

アイスアイスと叫んでいる。

クソ暑い日の午後だったので、こっちもアイスコーヒーを飲んでいた。

二人は店員を煽るようにアイスコーヒーを頼み、

外のベンチへ足を投げ出し、

その冷えたコーヒーを一気に飲み干すと、

残った氷をガリガリやっている。

見たとこ、なんというか金はあるぜ、のオーラ。

そのうちの一人は、サイクリングウェアっていうんですか、アレ。

もう、ピッチピチのTシャツにお揃いのタイツ。

同性の私から見るに、余った腹の贅肉と股間が強調されていて、

なんだか悪いモノでも見たような気になる。

で、強面の耳に、金のピアスだ。

でったー!

で、もう一人のオヤジはグリーンのポロの襟を立て、

渋い白髪からあごひげまで繋がる、オシャレ度。

耳のピアスはなかったが、サングラスを下げる鎖が、

やたらキラキラ光る。

その日は火曜日だったので、

私は即、彼らの職業に関する推測を立てた。

この二人は、不動産関係者であると。

あのイカツい顔は間違いないなと。

しかし、あの抜かりないセンスに疑問を抱く。

うーん。

……………

あっ、分かった!

美容系のオーナーだ。

店は青山を核として、首都圏に3店舗持っています。

経営は順調です。

ああ、それからね、

先月、もう一店舗オープンしました…

そんな感じ。

イヤリング野郎は髪の毛のウェーブ度が、

半端なく整っている。

(やるな…)

もう一人のサングラス野郎のヒゲの手入れも、

抜かりない。

更にだ、

この二人に、毛染め疑惑が持ち上がった。

黒髪ではなく、だらしのない白髪でもない。

なんというか、

こっちも、数ヶ月前床屋に行ったときに初めて知ったのだが、

ロマンスグレー染めというのがあるらしい。

あれはカッコイイよ、人気あるよって、店のマスターが言ってたっけ。

ロマンスグレーのウェーブ?

間違いない、奴等は美容系だ!

チャリは暇つぶし、

仮の姿で、流行に乗ったオシャレスポーツに興じているのだ。

自宅のガレージには、

ベンツとかアストンマーチンでも寝かせているのだろう。

愛人の一人や二人いてもおかしくない怪しさと貫禄。

通りががりのサラリーマンが、彼らをじっと見ている。

ちょっい避け気味。

買い物にきましたらしき太っちょのおばさんが、

興味津々に二人を覗いている。

それを先ほどからじっと観察している「オレ」はというと、

貧乏な広告系。

ホットドッグが美味い。

奴等のようなオーナーに、仕事で煽られることも多い。

ジーパンの後ろのポケットに手をやると、

1,230円あった。たったそれだけ。

こっちは病み上がりで、気力で動いている。

パワーなし。

そう言えば、最近髪の毛が細くなっているような…

なんだか、侘びしい日であった。

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夢みがちな雑誌は、やはり面白い!

この夏、ちょっと体調を崩して床に伏してしまった。

が、少し調子が良くなると暇になる。

で、こんなとき、

日頃から気になっていた雑誌をゆったりと眺めるという、

絶好の機会を得られた。

まあ、重要な案件他、雑多な用を吹っ飛ばして寝ている訳だから、

こっちもいろいろ辛いが、とりあえず暇というのが嬉しかった。

「カーサ」「ビーパル」「ターンズ」「ウオモ」etc…

まずは「レオン」という雑誌をセレクトする。

初夏に出た号なので、メインはやはりこの夏のファッション。

ちなみに、このレオンという雑誌は、男性ファッション誌。

私も初めて買った雑誌だ。

表紙のジローラモが、ニカッと笑っている。

カッコつけのミラーサングラス。

うーん、オヤジ雑誌である。

目を引くコピーが、

究極! オヤジは「青」と「白」、との言い切り。

この号では、ジローラモが表紙だけでなく、

他の誌面でもかなり活躍している。

ちょい悪オヤジのジローラモという設定で、

こうした雑誌では重宝するタレントなのだろう。

例えば表紙では、

ブルーの背広に白いTシャツ姿で、

奴がシガーを咥えている。

タバコではない。シガーだ。

これからは、シガーなのだ。

カッコイイ!

で、ページをめくると、皆さん素足。

靴下なんかはかないのだ。

ここは石田君とおんなじ。

妙にサマになっている。

が、なんだろう、この現実感のなさ。

例えば、パリとかミラノの街中を歩く、

青と白ファッションのオトコたちのスナップがあるが、

うーん、どいつもこいつも、カッコ良すぎ。

ホントかよ?

で、青と白ってホントに流行っているんだ!

と思ってしまう。

が、こっちも曲者の一人だ。

ああそうですか、へぇーとはいかないのである。

この手の雑誌特有の、そこはかとない嘘くささ。

しかし、ふと気がついた。

これはなんというか、床に伏している身としては、

夢を見ているようで、心地良いなと…

それは、誌面で紹介されている時計でも証明された。

最低50万円は下らないみのばかりが、ズラリと並ぶ。

クルマも、カマロやベンツを始め、派手目のガイシャで攻めてくる。

もう、この辺りで、相当の現実感ゼロが嬉しくなってくる。

下着だって、パンツ1枚8,000円ですからね!

で、キメ技は、ミサンガだった。

こうしたファッションに包まれたオヤジは、

腕だか足だかに、ミサンガを付けているらしいのである。

夏だからかラテン気取りか、

はたまた悪ふざけ?

これは、正直どん引きしてしまったが…

この手の雑誌の重要ポイントは、

やはり現実感喪失プラス胡散臭さ、ですかね?

こんなオヤジが何処にいる!

世の中、芸能人ばかりじゃあるまいし、な!

が、これが「レオン」ならではの世界なのである。

現実を見ているだけじゃ、面白くもなんともない。

そんな人は、ネットでも見ていなさいと言わんばかり。

はい、レオンはあなたの無茶な夢を、誌面で叶えます!

どうも、そう囁いているようである。

主婦と生活社がつくるこのレオン、

その社名からは程遠い誌面づくりが特徴。

思うに、金も時間も体力もないオトコたちを、

いともたやすく現実逃避させてくれる、

夢のようなアイテムなのである。

これは寝込んだからこその、

新たな発見であった。

_SS500_

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届く、パーソナル・マーケティング

沖縄地方の特産には、いろいろなものがある。

シークァーサー、サーターアンダギーとか、

チンスコウ、ソーキそば、海ぶどう、そしてもずくなど…

以前は、沖縄の泡盛もよく飲んだ。

残波という泡盛は石垣島のものだが、

これは美味いし、ネーミングが気に入っていた。

残波…リーフで波が砕ける様子が目に浮かぶ。

雰囲気からして美味そうだ。

久米仙という酒もまた、名前良し、味良し。

好きだったな。

沖縄には一度しか行ったことがない。

隣の与論島という島へも行ったが、

ここはサトウキビ畑と珊瑚礁のリーフが美しい。

この島で泡盛を初体験した。

ベロベロに酔ったが、何故か翌朝は爽やかだった。

不思議。で、飯もうまい。

この辺の食い物とか酒はいいね、という印象から、

後年通販を利用していろいろ試したことがある。

あるとき沖縄からウコンのDMが来て、

これはなんだかカラダによさそうと、頼んでみた。

当時は酒ばかり飲んでいたので、ウコンはいいですよと、

確かそんなことが書かれていたので、そうかと…

で、ときは流れて私も酒を飲まなくなり、

こうした特産品も飽きてきた。

が、相変わらず電話がかかってくる。

DMも届く。

これはどこでもよくあることだが、

ここの売り込みはなんというか、

ビジネスチックないやらしさがないのだ。

DMの中身を取り出すと、直筆の手紙が入っている。

印刷かなとよくよく確かめる。

と、直筆である。

うーん、やるな。

で、ふんふん感心していると、頃合い良く、

わざわざ沖縄から電話がかかってくる。

○○さん、お元気ですかとか、

最近おからだの具合は、とかコチラが買う意思がなくても、

嫌みなく話してくれる。

こうなると、次第に私の警戒心も解かれて、

一応話に応じます。

それがマニュアルに沿った話でもなく、

世間話なんかが織り交ぜられていて、

気がつくと沖縄の知り合いの人と話している。

そんな気になってしまう訳です。

要は、アドリブが利いているだけなのだが…

DMの中身一式はというと、あるひとつの流れに沿ったもので、

そのセットに目新しさはない。

が、直筆の手紙というのは、どこも面倒なので避けて通る。

電話にしても、テレマーケティングのテーゼというのがあって、

それに則って話すのが普通。

他はもっと事務的かつエグく、スピーディーである。

そのあたりの違いが、或る効果を生むのだろう。

今回の通販の例は、

まるごとひっくるめて沖縄よりの話。

ビジネスにしては、かなりユルイ。

無駄だらけ。

しかし、しっかり私に届いている。

いまはまるで欲しくないものばかりなのに、

なんか買うものはなかったかなと、

私は再度、DMをながめていた。

ああ、今度はきっと買ってしまうだろうな。

という、快く無駄金を使わせるための、

パーソナル・マーケティングの仕掛け、

なのでありました。

※詐欺まがいの話には、要注意です!

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リラコの夏

たかがステテコなのだが、

もうすっかり廃れていたこのステテコに目を付けたのが、

ユニクロである。

ユニクロは、まずラモスにステテコを履かせ、勝負に出た。

色、柄は、従来のステテコにはないカラフルさを纏い、

外着としてもイケテル感を演出。

ステテコ全然OK! 

そのまま出かけちゃうもんね…という親近感。

このCMを観ていて、私はなんだか嫌な気分になった。

うーん、あれはないなぁ、と。

が、しかしユニクロのCMは巧みである。

気を抜いていると、たまにそうかなと思ってしまうところが、

秀逸なのだ。

私の場合、父がステテコ愛用者であり、

その姿を、幼いながらカッコ悪いなと直感していた。

それはいまも変わらない記憶なので、

どうステテコをリニューアルしようが、

嫌なのである。

で、今日の問題は、リラコである。

とにかく、素敵なモデルの姉ちゃんが、

いきなりステテコなのだ。

この女の子仕様を「リラコ」と呼ぶらしい。

カッコ悪い。

うーん、幾らひいき目にみようとも、変。

CMで新しさ、新鮮さ、斬新さをプッシュすればするほど、

いい加減にアッタマにきてしまった。

が、敵も抜け目ない。

ネーミングもバッチリ、リラコ。

考えているなと。

全く新しい市場の創出である。

廃れたステテコを蘇らせるプロジェクトは、

企画としては、かなりイケテルのだが…

で、そろそろ夏も終わるし、

自分の記憶と共に、

身辺の知り合いに何人か聞いてみた訳。

「リラコはいて歩いている人、みたことある?」

答えは総てノーだった。

で、皆口を揃えていうのが、

「海辺とかにいるんじゃないの」

「部屋着としてはいているのかもね」

というもの。

ちなみに我が家の女性軍は、

全く興味を示していない。

というか、ひと言「変」というものだった。

だよな!

が、ネットで幾つかのキーワードでチェックすると、

売れている、売り切れという言葉が並ぶ。

うーん。

よく分からない。

が、そのブログなどを詳しくチェックしてゆくと、

どうもアフィリの臭いがぷんぷんする。

要は、煽りのようなのだ。

このステテコブームのようなものに、

イオンも負けじと同様に煽っていた。

で、売り場をじっと眺めていたことがあるが、

観察している私が警備員に怪しまれるという事態になり、

よぎなく中止。

うーん、イライラするな。

ステテコって本当のところ、

流行っているのだろうか?

いまでもたまにそのことを思い出すと、

他を忘れて、またステテコに固執してしまう。

参ったな、もう、

夜も眠れませんよ!

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半沢直樹…というゲーム

TVドラマも多々あるが、

いま人気の半沢直樹は、いわば銀行員の内紛ものだ。

ちょっと毛色は違うが、あの仁義なき戦いも、

業界の内紛ものと言えるかも知れない。

が、この両者はある意味対極にある。

仁義なき…は、文字通り仁義がない上に、

暴力あり、飛び道具ありのバイオレンス。

勝つために、手段を選ばないところが、すげぇとなる。

これは例えれば、半沢がボクシングで、

仁義…がリアルな殴り合いというところか。

仁義…は、なんでもあり。

まずは興味に釣られて血湧き肉踊るのだが、

こうしたストーリーは、

何故か徐々に飽きられる傾向にある。

長持ちしないのだ。

華々しくも、徐々に飽きてしまう。

なんでもあり、というのは、

要するにすぐ行くところまで行ってしまうのだ。

思うに、物事はルールがあるから面白い。

ルールがシビアな程、

話はドラマチックな展開を生む。

この端的な例が、サッカーだ。

足のみで、戦うからこそ面白い。

なぜなのかは判然としないが、面白いという事実。

バスケの3秒ルール然り、マラソンの42.195キロ然りだ。

ルールを守る不自由さが、実は人を興奮させる。

いろいろな制約のなかで、如何にパフォーマンスを出せるか?

人は、こうしたルール上での勝者に賞賛をおくる。

話を戻して、

半沢…が何故うけるのか、だが、

それは、物語のなかに強固なルールがあるからだ。

例えば、この話を端っから作り替えて、

途中で半沢を狙う殺しのプロが現れ、

さっさと半沢を片付けてしまうとする。

こうなると、このドラマはどうなるか?

これは、思うにフツーの話に成り下がる。

つまんないストーリーとなり、

そこらにありがちなオチが考えられる。

原因は、それがルール違反だからだ。

いまのところは一応のルールに則って話が展開しているので、

ゲームのようなスリリングな展開が魅了する。

人には、元々ルールをつくろうとするDNAが、

本能的に植え付けられているように思う。

そのルールを破るのが、暴力であり、

行き着くところが戦争というところか。

自然界にもルールがある。

ライオンは、腹が減っている以外は、何も襲おうとしない。

熊でも猿でも同じように振る舞う。

ゲームが面白いか否かはルールで左右されるが、

半沢…は、銀行社会だの、社会的地位、そして世間体とか、

そのキツイルールづくりに成功している。

その上で、「倍返しだ」とか「土下座しろ」とか、

結構古くさい台詞を吐く。

だから、やたら人間臭く、

よくよく考えればあり得ないような話にも係わらず、

そこに現代社会のリアリティーがあるように見えるのだ。

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自分を楽しんでいますか?…の真意

まずは、これを観ていただきたい。↓

夕飯のあと、ほおづえをついて

ぼぉーっとテレビを観ていると、

いきなり「自分を楽しんでいますか?」との問いかけだ。

コマーシャルタイムなので気を抜いていたが、

どうだろうと、思わず自らを振り返ってしまった。

楽しんでいるといえば、そのような気もするし、

面白くもなんともないような気もする。

観れば、髙須クリニックの医院長が、

ヘりでドバイらしき上空を、

自ら操縦桿を握って飛んでいる。

サングラス姿が少しカッコイイ。

乗員は、明らかに向こうのセレブとおぼしき

ターバンを巻いたイケメンと、

あれっ、野村沙知代さんことサッチー?

どうしてそんな所にいるのかなと…

まあそんなことはどうでもいい。

そういえば以前、

髙須さんを特集している番組をちらっと観たことがある。

彼の生い立ちと少年時代からの歴史、

豪華な別荘と仲間たち。

そして印象的なのは、彼のフェイク腹筋だった。

裸になった彼の腹が、格好良く割れている。

その番組から察するに、

生家没落から這い上がった彼の努力と根性は、

賞賛に値する。

で、場所は忘れたが、高級ログハウス風の別荘の庭で、

彼とその仲間たちが、分厚いステーキを旨そうに食っていたが、

それは成功の証として当然だろう。

で、フェイク腹筋だ。

フェイクなので、当然つくりものの腹筋。

一見、彼の全身とのバランスを考えると不自然なのだが、

まあ、中年の出っ腹よりはカッコイイとしておこう。

これが、髙須クリニックの技術だ!

という事なのだろう。

自らを実験台として世間に披露する彼の姿に、

私は感動した(?)

という訳で、髙須さんははなんでもできちゃうのだ。

まあ、美容整形というと、

高そう、痛そうというのが私の感想だが、

世の中、そんな甘いことをほざいている場合じゃない人たちも、

いっぱいいると思われる。

だから、美容整形することで、

冒頭のコピーが活きてくる。

―自分を楽しんでいますか?―

これは、言い換えれば、

自分のことが好きですか?

とも受け取れるし、

自分の容姿に満足していますか?

ともとれる。

美容整形して生まれ変わり、

どんどんポジティブになってください。

そんでもって成功なんかした暁には、

ドバイでも何処へでも行って、

金を垂れ流すような人間になってください。

まずは、自分を楽しんでいるかどうか?

そこを問うているのだろうと。

このメンタリティは私とは相容れないが、

こうした価値観を指示するひとたちも、

この世界にはきっといっぱいいるのだろうと、

想像できる。

あぁ、

それにしても、つまらないことを、

また書いてしまったなぁ。

↑あなたは納得しました?

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ドンキな人たち

先日、訳あって普段は行かないドンキ・ホーテへと、

でかける。

で、そこで約2時間いる事となったのだが、

なんだろ、あの店に集まる人たちに、

ある一定の傾向がある事に気づく。

例えば、真っ白いトレパンに、黒のTシャツ。

短髪に鋭い目つき。

で、首にキンキラしたアクセだ。

私はたまたまその兄さんと目が合った。

と、目を細め、いきなり威嚇を開始だ。

(オメェは、野犬か?)

ひぇー。

闘争心丸出しのこの兄さん、

見たとこ、屋根の瓦職人と踏んだ。

(勝手な想像)

細身なのに筋肉隆々ですからね。

で、しばらくして威嚇を止め、

立ち去る兄さんの背中に、

今度は金色の虎がこっちを睨んでいた。

ゾゾッ!

さて次は、

すげぇ太った30代とおぼしきおばさん姉さん。

パンパンに膨れあがった黒ジャージに、

黒のタンクトップ。

これも凄いボリューム。

カゴに目一杯のポテトチップ他、ジャンクなお菓子を山盛りにして、

前をふらついている小学生位の我が子に、

「ほら、チンタラ歩いてんじゃねえよ!」

とひと吠え。

太っとい腕には、花びららしきタトゥが目一杯に広がっている。

なんだか怖ぇーって、思いましたね。

と、レジで前に並んでいるおっさんの他、

まわりに目を配り、ひと通りガンを飛ばす。

こちらもやる気満々の闘争系。

また、

iPhoneのケースを探していたら、

いました!

金爆っぽい兄ちゃんが、腰パンで、

鎖をじゃらじゃらさせながら、

やたら目を強調させた姉ちゃんの腰に手を回し、

スマフォのケースをいじり回している。

とああ、やっぱりねと思った。

二人は、ヒョウ柄のケースが気に入った様子で、

そこから離れようとしない。

こういうの好きなんだよな、この人たちって。

で、その辺りは、人の渋滞。

が、全く気にしないのが、

この店に集まる人たちの流儀なのか。

ああっと、ぐったりして駐車場へ戻ると、

すっかり夜のとばりが降りている。

で、よくよく観察するに、フツーのクルマが少ないのに気づく。

バリバリにキメた、金色のホィールのセルシオ。

そして、古いクラウンやクレスタなど、

いわゆる旧車といわれるピカピカのシャコタンが、

ざっと5台並んでいる。

軽自動車も様々な工夫を凝らし、

個性を競い合っている。

ピンクの毛足の長いものを敷き詰めたワゴンR。

また、LEDをふんだんに取り付け、夜景のなかで、

ラブホテルのような妖しい光を放つ、

やはり名称不明の軽ワゴン。

で、思ったが、

こういう人たちを引き寄せるドンキの魅力ってなんだろう?

これを幾ら考えても、分からない。

あと、この人たちは、普段どこにいて、

どこから集まってくるのかということだが、

これもまるで推測が立たない。

この傾向は、全国一律なのだろうか?

はたまた、都会の傾向、首都圏の傾向、

いや、地方の特異性なのか。

とにかく、ドンキを好む人たちには、

共通して、古き良き昭和のヤンキー魂が感じられる。

気迫と根性では負けないぜ、の湯気が上っている。

が、気になるのは、

こういう人たちがこんだけ集まる店って、

相当数のトラブルが考えられるが、

そういう話もあまり聞かないな。

そこもついでに分からない。

いまの世の主流は草食系と言いますが、

ことドンキに限り、それは当てはまらない。

皆、ガンガン自己主張しています。

喧嘩上等です。

やられたら、10倍返しの半沢直樹みたいな奴ばかりです。

みんな、日本をなめるなよ!

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