重くしだれ
それでも伸びようとする
6月の木々は
わずかな陽と
豊富な雨に支えられ
ようやく生きようと考えたのか
この雨は
何を記憶しているのだろう
風は
何を運んできたのか
あの日以来
何かがぼんやりとしてしまった私が
しだれ雨の朝を歩く
春のかげろうの頃は
桜も散り
山が芽吹くと
私も何か心の整理に追われていた
この立ちゆかなくなった状況に
どんな手を打つかということを
いつも考えていた
それから1ヶ月が経ち
事はさらに後ずさりを始めていた
湿った葉を踏みしめ
赤土を叩き
誰もいない朝の公園に立つと
四方の山々の美しい情景が
艶やかに雨の中に浮かび上がる
木々から立ち上る湯煙のような
生命の吐息
ああ
私ひとりが
この公園に置き去りにされたような
心細さ
雨のはねる音
地面から立ち上る水蒸気
これは
6月のかげろうなんだ
雨のかげろうなんだ
と思う
自然の力は
それでもやはり奮い立つんだ
この雨は
何を記憶しているのだろう
風は
何を運んできたのか
相変わらず
うつむいて歩いている私に
過去からの追っ手がのし掛かる
そこには
やはり溜め息を吐くしかないおとこが一人
空を見上げていた