(前号までの話)
ある朝、私は森へでかけた。すると、身長60センチ位の小さな爺さんが水浴びをしていた。彼は自分を森の精霊だといい、私と話し込むこととなった。
「ところで若者よ、街はどんな様子じゃ? 最近はパソコンなんていうものができて
たいそう便利になったそうじゃな?」
「ええ!お爺さんよく知っていますね!」
「いや、この間の夜ちょっと街へ降りて、ヤマダ電機っていう所へ行ってみたんじゃ」
「はぁ、はあ? ヤ、ヤマダ電機ですか? しかもそのカラダの大きさでですか?」
「イヤ、それはない。わしらはカラダの寸法をいくらでも変えることができるんじゃよ」
「それは凄いですね! で、服はそのままですか?」
「それもない。ユニクロじゃよユニクロ!」
「えっ、ユニクロですか?」
「そうじゃ、あそこのフリースは暖かいのう!」
「しかしお爺さん、ここからユニクロに行くまでこの格好で
行ったんでしょ?」
お爺さんはまたアタマをつるっと撫でると
「君という若者はいちいち話が細かいな。そんなことでは
この物語は続かんぞ!」
お爺さんの目がつり上がってきた。
「スイマセン!」
私は話を続けた。
「で、ヤマダ電機で何を見たんですか?」
「そこじゃよ、肝心なのは!」
「ワシがパソコンをじっと眺めていると
店員らしき若者がやってきて、いきなりわしに説明を始めたんじゃよ」
「はあ、それで?」
「それでじゃ、話を聞いているうちにこれは天上界でも使っている
便利箱の初期型と似ておるな、と分かったんじゃよ」
「便利箱?」
「そうじゃ、便利箱。この箱はもうわしが若い頃からあるんじゃが
とても重宝しておる。いまじゃホレ、ここにもあるがなぁ」
お爺さんは腰の布をめくると、一枚の布っ切れを見せてくれた。
「これは何ですか?」
「これが便利箱の進化したものじゃよ」
「はあ?」
「ほれっ!」
つづく