対岸

小学校3年のとき、

両親に、初めて山下公園に連れて行ってもらった。

僕がいつも丘の上から見ていたところ。

それが山下公園だった。

山下公園から見る僕の町は、

工場と煙突だらけ。

空はスモッグですすけていた。

こっちは氷川丸が停留してかっこいいけれど、

向こうの岸壁はいつもゴミが浮いていて、

船で仕事をしているおじさんが、

僕らをみつけると怒鳴る。

× × × × ×

夢のように時が過ぎて、

老いが見えはじめた私は、

懐かしさから、

みなとみらい線で山下公園を訪れる。

高速道路ができて、造船所が壊され、

臨海部は再開発されて、

高層ビルや観覧車が映える美しい街になった。

× × × × ×

しかし、ここから見る夕暮どきのこの景色は、

相変わらず昔のままのように思うのは何故だろう。

夢のように時が過ぎて、

あの頃の僕は、

老い先の知れたおじさんの「私」になり、

それでも変わらず、

工場の煙は、

やはり天をめざすのだなぁ…

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