ヒドノハ

遠くに座る山に白いものがみえたら

私たちは支度を済ませて家を空ける

なぜって

ここの冬の平均気温はマイナス30度だし

それだけなら

まあ暮らせないこともないが

やはりあいつが下りてくるからだ

あいつはなんでも喰う

特に生きものには目がなく

人間は好物中の好物らしい

いろいろ戦ったがみんなやられちまって

もうこの辺りであいつを殺す力のある奴は

誰もいやしない

あいつと言ったが一匹じゃない

遠くで見た奴に聞くところによると

数百は優にいるらしい

これでは多勢に無勢だろ?

あいつの祖先は元々人間だったらしいが

ある時山へ入って行ったっきり

そこでなにがあったのかは誰も知らないが

あるとき目を剥き口が裂けて戻ってきた

そして家族を次々に襲って喰い散らかし

また山に戻って行ったという

あの山になにがあるのかって?

いや分からない

ただあの山の呼び名はヒドノハだ

そう

憎しみの山っていう意味なんだ

「ヒドノハ」への2件のフィードバック

  1. これ、凄いですよねぇ、スパンキーさんの新境地!
    小説なんでしょうか? 詩なんでしょうか?
    いや、そういうジャンルを超えた衝撃力を秘めた読み物なんでしょうね。
    ホラーのような味わいがあるけれど、モダンホラーではなく、『遠野物語』 に近い民話の怖さみたいなものがあって、そこかかえって新鮮ですね。
    ところで 「ヒドノハ」 という言葉は本当にあるのでしょうか。グーグルでネット検索したら、スパンキーさんのブログが出てくるだけでした。
    でも、それがいいんでしょうね。あんまり説明しないところがいい。説明しないから “余韻” が生まれる。
    この手の読み物をいくつかまとめて、『スパンキー神秘譚』 みたいな、幻想物語集のようなものを作られたらどうでしょう。このレベルの作品が揃うと面白いと思うけどなぁ。
     

  2. 町田さん)
    いつもコメント、ありがとうございます!(感謝)
    これ、詩でもないですね。なんでしょう?と専門家でもある町田さんに聞きたいです。
    これを、グンと伸ばして広げてエピソードを幾つも繋げれば小説になるんですけれどね?
    幻想モノは好きですね。ファンタジーも欠かせません。「遠野物語」もいいですね!
    ぜひまた挑戦してみます。
    ヒドノハは、秘密ですから(笑)

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