湖面を撫でるように
山から吹き下ろした風が
通り過ぎる
夏の日差しのなかで
その暑さに
気を抜いていた私は
不意に身を屈める冷たさだった
カヌーが揺れ
今年初めての赤とんぼが
水の上を泳ぐように
すっと目の前を横切る
西風は
わたあめのような雲をちぎり
山へ山へと流れて消える
高原では
まだ上半身裸の若者が
ビールを片手にはしゃいではいるが
日よけ帽子を被った婦人のすました顔は
もう秋の装いだ
雑木林に入って
しゃがみ込むと
虫の音が遠くにきこえる
じっと佇んでいると
それは少しずつ勢いを増し
ああ
秋に向けての
オーケストラのリハーサルなんだなと
合点がいった
白鳥が
観光客の投げるえさをむさぼる
傾きかけた陽は
赤く湖面を照らすが
肌に触れる感触に
もう真夏の力はない
この夏の想い
この春のとまどい
今年は辛かったなと
つくづく思いを馳せ
近づく秋に
淡いものを感じるのだった
「秋の使者」 というタイトルがいいですねぇ!
もうこの一言だけで、それ自体が 「詩」 になっているように感じました。
何気ない湖畔の昼下がりの描写。
その中にも、密かに退きつつある 「夏」 と、ゆっくりと忍び寄る 「秋」 の交錯する気配が見事に描写されていますね。
「夏の終わり」 って、かえって 「秋の盛り」 よりも寂しいですよね。
冬が 「1年の終わり」 を象徴するのだとしたら、「夏の終わり」 は、秋の彼方にチラっと顔を見せる 「遠くの冬」 を想像させるのかもしれませんね。
町田さん)
晩夏っていう季節も言葉も好きで、去年もこうした時期に、忍野八海に行ってきましたが、やはりいいですね?
若者が盛夏なら、オヤジは晩夏!
ムカシは夏の終わりが近づくと単に寂しいものでしたが、いまはこの頃の季節の、なにか物憂いしさを感じられるようになり、いいものだと思うようになりました。
特に避暑地は、この物憂いが早く顕著ですから、ね?また早く行かないと!
来週辺りは、もう毛布、必要ですね?
コメント、ありがとうございます。
p.s ライフジャケットはふたつありますが、オールはいまひとつしかありません!