「チャイナタウン」を聴きながら
そのひとは
手と足が細く長かった
確か
薄い紫色のワンピースを着ていた
元町から朱雀門へ続く通りを
あなたは歩いていて
僕は友達との話を遮り
あなたにみとれた
そしてその日はなぜだか
とてもリラックスして
なんの邪気もなく
自然にとても普通に
あなたに話しかけ
これは逃せない出会いと直感し
僕は丁寧に自己紹介し
それが嘘くさく
あなたもそれを見抜いていて
ふふっと笑って
だけどなんとか僕たちは友達になれて
何度か会うようになった
あたなはたまたま遠くから
このヨコハマに来ていて
ヨコハマが好きだと言ってたっけ
あの店で僕たちが待ち合わせしたのは
確か3度だったように思う
あなたは僕より年下なのに
すでに手に職をもっていて
よく人となりをみていて
社会を語り
仕事の喜びを
僕に話してくれた
僕はあれからいろいろあったけど
あなたは逃れられない病を背負っていて
ふたりはお互いを忘れ
全く違う場所で
全く出会わない世界で生きていて
あれから浦島太郎のような時が流れて
僕は最近になって
よくあなたのことを想い出す
夏になると
あなたがいまでも
あのワンピースを着ているような…
あの夏のヨコハマ
雑踏に揺れる街
もう会えないけれど
ただ
元気でいてくれたら
そして幸せだったら
と思うのですが…