クラプトンを聴きながら
オレはお前にこう話すんだ
その指輪イカしているな!
するとお前はこう言うだろう
だってあなたが買ってくれたんじゃない!
そしてふたりは笑って
肩を抱き合って窓の外を見下ろすのさ
ハシケが岸壁を離れてゆく
あなたその煙草
そろそろ止めたほうがいいんじゃない?
ここもね!と言ってオレの頭を指さす
頭にも良くないみたいよ
さて
オレは新しく買った、初めての東京レーベルのレコードを
お前に見せる
どうしたの?
一体どうしたのよ?
気でも変わったの?
そう言ったきり
お前はずっとずっと海をみつめて
コーヒーカップを握りしめている
どの位の時間が流れたのだろう
勘のいいお前の目には
やがて
涙が光っていた
窓から見える本牧の朝が霞んでいた
街にさようならを告げる日は
ついにやって来た
「じゃあな」
仲間によろしく、と伝えてくれ
振り切るように部屋を出ると
外の風がいつになく冷たく頬を叩く
ホントはオレ、ここにいたいんだ
お前と本牧が好きなんだって言いかけて
朝の港の喧噪に消えていった
東京へ向かう朝の根岸線
窓の外に見える景色に
霞んだ雨が
悲しそうに
お前の涙のように
そう
糸のように
落ちていたんだ