七輪であじを焼く

嵐の過ぎた夕刻。

日差しが戻ってきて、風が庭の葉を揺らしている。

ベランダに置いてあった七輪を出し、庭に設置。

物置きにストックしてある炭を引っ張り出して、

小さめのものをセレクト。

それを七輪に入れ、セット完了。

 

なんてったってはじめての七輪なので、

わくわくします。

バーナーで炭をあぶり、点火を促すも、

なかなか着火しない。

イワタニのバーナー、頑張れよ。

この七輪遊び、

いきなり思いついたように始めたので、

さざえはないし、たこもいかもない。

が、前に買っておいた冷凍あじが2枚ある。

電子レンジで少々解凍して、

いざ網の上にのせてみる。

おお、なかなか感激する。

まあ、バーベキューで肉をガンガン焼く

というのはときたまやるが、

今日は地味な七輪とあじである。

場所も自宅のセコい庭とあって、

昭和の風情が漂う。

これぞ和風。

 

さかなの油がじゅーじゅー暴れている。

ちょっとつまむと、なんかうまい。

ガスとぜんぜん違うではないか。

スーパーの冷凍あじが、採れたて高級魚に変身だ。

身がほくほくしている。

面倒くさそうに夕飯のメニューを考えてた奥さんが、

私の焼いているあじをみて、

すかさずマイタケを皿にもってきた。

なんでも焼いちゃおう。

そうした勢いが感じられる。

といっても今日はこの二品で終了となった。

めぼしい材料もないし、

なんといってもまだ夜は寒い。

風が身に沁みた訳だ。

で、永年の目的は完了した。

 

奥さんのつくった味噌汁となんとかのアヒージョと

ブロッコリーのでかいのと、そんなのを組み合わせて、

あじをメインディッシュに

居間で夕飯を食う。

なんか質素!

質実剛健。

テレビを観ている間も、

炭はまだ赤々と燃え続けています。

炭は灰になるまで頑張ります。

就寝前に再度確認したら、

ようやく鎮火していました。

 

灰になるまで燃え続けるって、頑張るな。

かっこいい。

人の恋心も、その身が灰になるまでとか。

人間もけっこうすごい。

全身全霊、ロマンチックないきものなんだなぁ。

 

 

江ノ島のさざえ

4月8日に、横浜市緑区にある

父母が眠るお寺に墓参りに行くと、

ちょうどお釈迦様の花祭りだったので、

ちょっとだけ本堂に上がらせてもらい、

お釈迦様の像に甘茶をかけ、

甘茶をいただいた。

花祭りは初体験だったので、

この事を書こうと思っているうちに、

幾日も時が過ぎてしまう。

で、後日、横浜の港南区にある母方の、

これまたお墓参りで、

去年が祖母の没後50年ということで、

ようやく手をあわせることができた。

ほっとして、帰りに鎌倉へと下る。

この付近も人の波。大混雑。

材木座を右折し、海岸沿いの134号線を西へ。

江ノ島あたりでちょっと休もうということで、

日没前の江ノ島をのぼってみる。

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参道は、夕方でも相変わらずの混雑で、

どうも気になる店のものがゆっくりと見れない。

際だって混雑しているのは、蛸せんべいの店。

ここは、半年前もやはり行列していた。

江島神社は弁天様なので、私たちの若い頃は、

カップルで来るところではない、とよく言われた。

それがいまでは縁結びの神社になっている。

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思うに、寺社仏閣のこうした効能?って、

全国津々浦々にまでいろいろありますが、

私は懐疑的。

なんだかなぁと思っている。

特に、パワースポットとかいうものが、

いまひとつよく分からない。

と書いたが、堅く考えても面白くもないので、

この話はスルーさせてもらう。

頂上を急ぐので、はじめてエスカーというのに乗る。

エスカーは、要するに江ノ島の山をのぼるエスカレーター。

もちろん有料である。

その空間だけ、冴えない古びたデパートの空間に似ていて、

結構面白い。

突風が吹きすさぶ江ノ島灯台下のサムエル・コッキング苑は、

いつきても花がいっぱいできれいだが、

やはりクリスマス前後の夜にライトアップされる頃が

一番雰囲気が盛り上がる。

気温の高い日だったが、強風でぐんぐん身体が冷える。

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タイ人とおぼしき女の子のグループのひとりが、

急降下してきたトンビにホットドックを奪われる。

みんな空ばかり見ることとなる。

どこでも構わず自撮り棒でポーズをとっているのは、

やはり中国からの観光客が圧倒的に多い。

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まあそんなことはともかく、

この高台から眺める夕方の景色はいつも美しい。

富士山、伊豆半島、長く伸びる海岸線。

空の色は刻々とその明度を落としてゆく。

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再び参道を下ると、人は相当数減っている。

やっと静かな江ノ島が味わえる。

海沿いの道を照らす車のヘッドライト。

立ち並ぶ店の灯り。

海面に照り返す人工の光。

寄せる波の音も聞こえる。

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店が閉まる前にさざえを食おうと、

その店をのぞいて、

やはり「今日はいいや」とやめる。

大きくもないさざえがふたつで1400円。

このプライスが高いか安いか、

これは各自の価値観によるのは確かだが、

なんだかこの店の軒先にデンと座って、

さざえを食っている図が、

併せてかっこ悪いと私は判断した。

後日、近所のスーパーで、

同じような大きさのさざえが、

ふたつで500円で売っていた。

で、その足でホームセンターに行き、

やっすい七輪を買う。

五月の連休の一日は、

庭でふたつ500円のさざえを焼いて、

たらふく食う、ついでにいかもたこも、

というイベントを思いついたからだ。

15年ぶりにアルコールをなめる

先日、友人と自由が丘で待ち合わせ、

うろうろするうち、

金田という飲み屋へ入る。

久しぶりに、

チェーン店の居酒屋でないところへ入った。

まだ夕方の5時ということで、

店内は人もまばら。

出迎えの女将に笑顔はない。

むしろ怒っているようにもみえるし

キリッとした表情ともいえる。

カウンター席のみでコの字が二つ。

隅っこに座ると、

奥の板場から数人が、

じろっとこちらをみる。

やはり、ぜんぜん笑顔なし。

つまらない笑顔なんて不要

という店なのであった。

ノンアルコールビールをくださいといったら、

女将の目がつり上がったのが分かった。

「ウチにはそういうものはありません」

友人は生ビールを頼んで、

俺の顔をにやにやしてみている。

(コイツ、知っていたのか?)

女将がどうします、いやどうするんだよ、

というつり目をするので、

ビールの小瓶を頼む。

ちょっと参ったなと思った。

なんせここんとこアルコールなんて

全然口にしてないし。

とにかく、酒をやめて15年くらい経つ。

女将と目が合うと、我々の後ろを指さすので、

ウムっと振り返ると、そこに金田酒学校の

立派な一枚板が飾られている。

おおっ、立派な墨文字。

女将が何が言いたいのかは即座に分かった。

酒をたしなむこの店のマナー、

学校の他にも、

ここの掟のようなものが書かれているハズだ。

実際、後で確かめると

そんなもんは書かれてなかったが、

とにかく、酒の学校だったんである。

学校に飲みに入った以上、校則は絶対だしね。

という訳で、15年ぶりのアルコールである。

ついでにタコぽんとか若鶏の焼き鳥、

菜の花のおひたし、しめ鯖、しんじょう揚げといった

酒飲みにはたまらない肴も久~しぶりにいただく。

(これがうまいんだなぁ)

さて、アルコールをやめたのは、

確か15年くらい前だった。

最初は医者の忠告だったように思う。

肝臓値、コレステロール、中性脂肪が

軒並み悪い数値だった。

が、あまり気にもせず、

アルコールを少し減らす程度でごまかしていた。

断酒は意外なことがきっかけとなった。

いつものようにビールを飲んでいたら、

やたら鼻が詰まって息苦しい。

そんな日が続くようになった。

日本酒でもワインでも焼酎でも、

とにかくアルコール類を摂取すると鼻が詰まる。

息苦しい、酒がうまくない。

薬屋にも医者にも行ったが明確な回答が出ない。

いろいろな薬なんかを飲んではみたが、

どれも全く効果がない。

次第に飲む日が減った。

なんだか面白くない日が続いた。

だって息が……ですよ。

そうこうするうち、

習慣づいていた飲酒もやめてしまったのだ。

私はついに、

酒と相性の悪い人間になってしまったのだ。

以来、今日まで飲んでないし、

飲みたいとも思わない、で甘い物が好きな、

とてもつまらないおじさんになってしまったのだ。

思うに、私の場合の飲酒は

犬の条件反射と同じで、

食い物をみるとよだれが出る犬のように、

夕方になるとアルコールを摂取していた訳だ。

その際の条件キーワードは「夕方」であった。

で、話を自由が丘の金田に戻すと、

前述した理由から

15年ぶりにアルコールを摂取することとなったが、

結果はなんというか、

身体中を血液が巡るというか騒ぐというか、

妙に身体が暑くなるという、

身体の懐かしい変化が呼び起こされた。

結果、アルコールってなかなか「うまい!」

なのであった。

気分も絶好調。

そして、鼻が詰まらないことも確認したのだ。

さて、では晴れて飲むぞ、

で、もう一度、自由が丘の金田に行って、

酒通になるぞとも一瞬思ったのだが、

あれから数日経ったいまでも、

アルコール類は一切摂ってはいないし、

あのサケも肴もうまい金田にも、

もう行かないだろうなと思っている自分がいる。

特に我慢も無理もしていないのに

なぜだろうと考えるに、

私には現在、チョコを摂取する習慣があることを思い出した。

疲れた日の夕方に摂取するチョコは、

とにかく格別にうまいのだ。

このの心境をたとえていうと、

むかーし別れたおんなの人と再会したが、

もうその頃のようには戻れない。

そんな感じなのである。

ああ、人はどんどん変わってゆくのだ。

好みも変化するし、

習慣も進化してゆくものなのだ!

しかーし、それにしても

久しぶりのビールはうまかったなぁ。

やはりこの先、

どうなるか分からないんである。

誰も信じちゃいない

前の記事は、ホントの話です。

誇張なしのつもりだが、

何人かにブログ記事の真偽について聞かれた。

「ホントですよ」とキッパリ断言すると、

なんだか余計に嘘くさくなってしまった。

まあ、書き方が胡散臭いという反省もあるが、

これはどうしようもない。

こんな書き方しかできない訳だから。

で、この事件があった直後も数人に熱く話したが、

一様に「へーッ」って返答するんですね、みんな。

しかし表情は結構冷静。

或る方は「まぼろしでも見たんじゃないの?」

「………」

これが本音でしょう。

日が経つに連れ、

こちらも「まぼろしだったのかなぁ」と。

こうした話って本人が熱く語るほどに、

聞き手は落ち着きはらう傾向があることは分かっていた。

僕は中学時代にも「鬼火」というものを目撃したことがあるが、

(ほら、もうあなたは疑っているでしょ)

そのときは夜中にひとりで見たこともあり、

結果、やはり誰にも信じてもらえなかった。

翌朝、母に興奮気味に話したのだが、

母は笑顔で「そうなの」と言ってから、

くるりと向きを変え、表情も変えずに、

テレビのなんとかモーニングショーに見入っていたし。

サンプル例はまだある。

大学のとき、朝方に友人3人でいたときのこと。

横浜のとある開発分譲地のてっぺんあたりの草むらに

車を止めていた。

車中で、話は盛り上がっていた。

新潟から船でウラジオストックへ行き、

旧ソ連(ロシア・東ヨーロッパ)を横断、そして南下して…という

世界ヒッチハイクのプランを練っていたところだった。

ふと、徐々に近づいてくる空からの光の異様さに気づき、

3人で一目散に逃げ出したことがある。

逃げ出すほど驚いた訳は、

朝方の4時頃、夜明け前なのに、

音もなく空から私たちに近づいてきたかと思うと、

至近で強烈な光を浴びせられたからである。

この正体不明のオレンジ色の光は、

いま思い返しても、私たちを狙っていたとしか思えないのだ。

逃げながら振り返ると、それはブルーへと色を変化させ、

あっという間に相模原方向へと去っていったのだった。

翌日3人で、大学で他の友人たちに

興奮気味に語ったのだが、

やはりなんとなくしらーっとした空気になった。

余談だが、

後に、この「世界に飛び出せヒッチハイク計画」はやむなく頓挫した。

理由は3人が次々に病を発症したからだ。

僕が急性肝炎、他は十二指腸潰瘍、結核…

後にこのときの3人が顔を合わせると、

まずは挨拶代わりに、

「あれってホントだよな。だれーも信じないけどな」

であった。

ちなみに冒頭の或る方から、

「もっと凄いのがいるよ。レオタードおじさんって知ってる?」

「いや、知りません。初めて聞きました」

帰って早速ネットで検索すると確かにいました。

画像付きですげぇ変なおっさん。

そして原宿にはセーラー服おじさんがいる。

大阪にはブルマおじさんが…

うーん、これはなんというか、分析が難しいなぁと考えるも、

どうも僕の話とは種類が違うなと思い始める。

全く別の話題に擦り替わっている。

摩訶不思議な事って、

体験した本人でないとなかなか人には信じてもらえない。

そう語りたかったんだけど。

やっぱりレオタード…のあたりから、

この話はねじ曲がっている。

だから僕の話はやはり、

薄々あやしいんです。

黒づくめババアの恐怖

そろそろ話してもいいだろう。

今年の夏。

蒸し暑い或る夜のこと。

私は奥さんと小田急線某駅から10分ほどのところにある、

格安のイタリアンレストランで、

ピザとかスパゲティとかサラダとかをたらふく食い、

幸福な気分で車を止めておいたコインパーキングまでを

だらだらと歩いていた。

赤信号の交差点に立っていると、

いつの間にか後ろに人の気配を感じた。

まあ、交差点なので当たり前なのだが、

異様に至近距離にいる気配を感じた。

イヤーな感じがしたので、奥さんにひと声かけて、

速足で歩くことにした。

安心するのもつかの間、

後ろの気配も速足でついてくるではないか。

まだ、私たちは後ろを振り向いてはいない。

何者が後ろにいるのか振り向くほどでもなかったからだ。

しかし、ずっと至近距離でピタリとついてくるので、

いい加減に私たちは足を止め、

とぼけて脇にあった自動車展示場の車を眺めることにした。

と、驚くことにそのイヤーな気配もピタッと足を止め、

私たちの後ろにくっ付いて立っているではないか。

振り向くと、背の低い老婆とおぼしき影。

「何かご用でしょうか?」

私が話しかけると、その影が言うには、

「私は足が悪いんですよ。それでね、

誰かの後について歩こうと思ってね」

「うん?」

どうも理解しかねる返答だった。

この影をよくよく観察すると、

真夏だというのに、黒い頭巾を被り、

長袖の黒い衣服を身にまとい、

引きずるような丈のスカートに、

黒い手袋をはめている。

口をマスクで隠している。

そして雨も降っていないのに、黒い傘をさしていた。

夜だというのに大きなサングラスをかけたその奥に、

得体の知れない不気味なものを感じた。

先ほどからの事を振り返えってみた。

この人は途中から、相当の速足で私たちについてきたのだ。

話しながら老女らしき人は膝をさすっている。

上目づかいで、こちらの様子を伺っているのが分かった。

(この人って本当に老婆なのか?)

得体が知れないと思った。

はっきりしているのは、この人は多分女性で、

背が低い、ということ。

それしか認識できない。

日曜の夜の10時過ぎ。

繁華街の一本裏通りである。

人通りはまばらだった。

この至近距離でついてくること自体、

最初から不自然とは思ってはいたが。

私はとっさに手を振って、

「なんだかよく分からないけど、

どうぞお先に!」とジェスチャーをする。

「そうですか?」

この黒づくめ、不満そうなのだ。

少し間があく。

重い空気が張り詰めている。

黒づくめはようやく諦めたらしく、

しぶしぶと歩き出した。

歩く後ろ姿をみると、普通に歩いているではないか。

この場合、目が悪いのであれば、

私も少しは納得したのかも知れない。

いやしかし、いろいろと首をかしげるような印象から、

やはり不気味なことに変わりはない。

黒づくめの後ろ姿が徐々に遠くなり、

ようやくその姿が小さくなるまで、

私たちはなにかよく分からない恐怖感にさいなまれた。

あの人は一体何が目的で私たちの後ろについてきたのか、

歩きながら考えを巡らすも、全く分からない。

もし、あの老婆が、万一何か悪いことを企んでいたと考えると、

私たちは二人でいるので、相手も分が悪い。

それなら一人で歩いている人間を狙うのではないか。

やはりあの老婆の目的が分からない。

たださみしいのではないかとも考えたのだが、

であれば、人の嫌がるような行動をとるだろうか。

幸福な満腹感が、息苦しさに変わっていた。

車が止めてあるコインパーキングは、

鉄道の高架下のかなりの暗がりにあった。

あたりは人家はなく、田園が広がるのどかな一帯だ。

丸1日止めてもたいした料金ではないので、

そこにしたのだが…

汗を拭きながらパーキングに入ろうとすると、

高架下のずっと遠くから

小さな影が小走りでこちらに近づいてくるのがみえた。

目を凝らすと、なんとあの黒づくめババアではないか。

とっさの事で頭が混乱する。

私たちはコインを入れる余裕もなく、

低くしゃがんで車に滑り込んだ。

心臓がひどく鼓動しているのが自分でも分かるほど、

私たちは気が動転していた。

その恐怖の正体は、

相手の目的が不明だからなのか、

いや、あの姿なのかは、

いまでもよく分からない。

シートに深く沈み込んで、

恐る恐る外をちらっとみると、

あの背の低い黒ずくめが

私たちの車のすぐ横の道をゆっくりと歩いている。

まわりを伺うように用心深く歩いているのが

その姿からすぐ分かった。

一体あいつはなんなんだ。

本当に人間か?

ひどい汗をかいている。

息づかいが荒くなる。

時間がどのくらい経過したのか、

それさえよく把握できなくなっていた。

勇気を振り絞って上体を起こし、

ガラス超しに恐る恐る外の様子を伺う。

黒づくめは高架下に沿って続く道を

きょろきょろしながら歩いている。

「いまだ!」

外に飛び出した私は精算機まで走り、

なんとかコインを投入した。

もう高架下の不気味な姿はあえて確認しなかった。

車のストッパーが下がると同時にキーを回し、

エンジンをかけ、窓を閉める。

冷房を最強にする。

車内がむせるように暑いのを、

このときやっと認識する。

黒づくめは、私の車のライトに照らされ、

遠くからちらっとこちらを振り向いた。

わずかながら、あのサングラスが一瞬反射した。

その映像を、いまでも私は忘れることができない。

初冬のキャンプ

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初冬なので、軽めのキャンプに行ってきました。

軽めとする理由は、寝るとこが一応トレーラーだからです。

テントは、ホントに寒いです。

以前、晩夏の山中湖でテントに挑戦しましたが、

山中湖は夏でも夜は気温が急降下します。

Tシャツにヨットパーカーという軽装では、

震えがきました。

今回は相模湖近くとはいえ、初冬なので、

テントではなく、トレーラーにしました。

一応、ユニクロのダウンを持参しましたが、

結果、ペラペラのダウンではこの時期が限界でした。

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夜はまあまあ寒いという程度で、

火も使っているし、なんとか凌げました。

なんといってもキャンプ場近くのスーパーで、

奮発してステーキ用の肉を仕入れて来たので、

ガツガツ食いまくっているうちに寒さが遠のいた、

という表現が適当でしょうか。

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問題は朝方。

やはり寒さで目が覚めてしまいました。

時計をみると4:50。

トレーラーのなかの息が白い。

歩き回ると床がぎしぎしと響いて、

車体が揺れます。

固定されてるとはいえ、下はタイヤですから。

ちなみにこのぎしぎし音って

ホントに憂鬱な気分にさせられます。

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ひんやりとしたカーテンをめくって窓ガラスに手を触れると、

外の風がスースーと入ってくるのが分かる。

四方の窓がほぼそんな感じ。

天井の換気口をよくよく凝視すると、

空が見えるほどに開いています。

閉めようにも中央の換気口のみ閉まらない。

ここから結構冷気が入ってくる。

ほほぅ、これじゃテントと変わりないじゃないか。

プレハブの建物よりまずいかも。

山の頂上付近には、昨夜から強風が吹いている。

スマホで現在の気温をチェックすると6度だ。

6度で強風は、やはり寒いよなぁ…

恐々と表に出てみると、月明かりに照らされた山並みが、

深い群青色で漆黒の空とは異質の存在感を示している。

まだ昨日の炭がくすぶっているあたりで

がさがさと物音がする。

反射的にライトを照らすと、

なんと大きなトラ猫が昨夜の焼き肉のたれらしきものをあさっている。

ビックリするし寒いし。

すぐにトレーラーに引っ込んでありったけの布団を被って

猫のようにうずくまる。

(さっきの猫は丈夫です)

やがてあたりがうっすらと明るくなる頃、

いやいやながら湯を沸かしてコーヒーをすする。

そういえば、昨日も今日も平日なので、

まわりのトレーラーハウスには誰もいないようだ。

今度はしっかりと着込んで再び表に出てみる。

快晴。

東のほうからゆっくりと陽が昇ってくるのがみえる。

遠い山並みが紫がかった色に染まる。

そこに陽の光がすっと一直線に走るのがみえる。

山間の谷間には、白いもやが大きな塊となって

ゆっくりと風下に流れている。

見上げると、月もその姿を次第に消そうとしている。

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さきほどまで、私のアタマのなかで、

ピーターの「夜と朝のあいだに」が流れていた。

いま、この希少な景色を眺めていたら、

いつの間にか岸洋子の「夜明けのうた」に切り替わった。

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遥か彼方に街らしきものがみえて、

人の日々の営みを思う。

そして我が青春の歌が流れている。

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怒涛の船上結婚式

素人タクシードライバー

問題は台風直撃の予想のなか、船上結婚式に行かねばならない、

というプレッシャーにあった。

ほぼ決行というので、行くしかないね。

どしゃ降りの霞ヶ関からタクシーを探せど、

週末の土曜なので、官庁街は人気もなくがらんとしている。

当然、行き交う車も少なく、

たまに通り過ぎるタクシーも「迎車」の赤いライトばかり。

そこへモサッと走ってきたタクシーをやっと捕まえた。

「浜松町まで!」びしょ濡れの服をわさわさと拭いていると、

「浜松町ってどこですか?」とこのタクシードライバーが驚くことを聞いてきた。

車はすでに走り出しているではないか。

「うーん、いまあなた何て言ったの?

山の手線の浜松町駅。知らないってホント?」

まっすぐ前を直視している彼は、見たところ働き盛りの40代と踏んだ。

「ええっ、知らないんですね」

「だってナビがあるでしょ?」

結局、このタクシードライバーはナビの使い方も知らないらしく、

私が「次の交差点を左! で、○○を過ぎたら右ね、そうそう、でね…

おっと、そのあたりをゆっくり走って」

気が気じゃない。

そんなやりとりでぐったりびしょびしょのまま、

浜松町の海沿いの通りで降りる。

このタクシーをよーく思い返すと、彼の日本語がたどたどしい。

地理をよく知らない。

タクシー会社の名は忘れたが、ドライバー名は確かに日本名だった。

ビジュアル的には日本人にみえた。

あいつホントに2種免許持っているのかな?

うーん、よく分からない!

大雨の湾岸国道

明日の結婚式の会場となるシンフォニーとかいう船が停泊する

日の出桟橋あたりの道路に私たちは突っ立っている。

雨は相変わらずどしゃ降り。

(問題はホテルだよな、予約してあるホテル)

「確かこのあたりだと思うんだけど…」

スーツケースはずぶ濡れ。

午後9時。ほぼ人っけなしの国道に車が水しぶきを上げて走り抜ける。

iPhoneでグーグルマップを出して目的のホテルをマーキング。

結局トボトボと15分も歩いてめざすホテルに辿り着いたときには、

服はベッチャリ、身体ぐったりで、もう船上結婚式の前にバテる。

ホテルは山手線やら京浜東北線、

新幹線がまとめて通過する横に建っていたので、

絶対に終電までは眠れませんでした 笑

と同時にテレビでは首都圏に台風直撃間違いないという予想、

選挙報道もがんがんやっている。

あー憂鬱。

朝食はめちゃくちゃ美味かったけどね!

嵐の日の出桟橋

姪の結婚式当日は日曜日。

鬱陶しい東京の景色は重たく、冷えているなぁ。

超大型台風はどうも関西あたりを通過している模様。

話はそれるが、この日は弊社ディレクターは大阪でイベント運営の最中だったが、

電車は止まるはなんだかんだで相当ひどかったらしい。

前日にホテルに前乗りしたのは、

奥さんのヘアセット他が早朝予約してあったからだが、

式は午後3時からと待ちが長い。

久しぶりにホテルのテレビをザッピングしたりして時間を潰す。

午後2時乗船。親類初顔合わせ。式、披露宴、なんだかんだで

下船は午後7時頃の予定となっている。

100%暴風圏内での船上結婚式。

これって無事に終わるのかね?

昼過ぎに日の出桟橋に向かおうとホテルにタクシーを頼むと、

全く繋がらない、または1時間待ちという回答。

またしてもひどい降りのなかをテクテクと歩いたね。

礼服びしゃびしゃ。冷たーい!

しかーし、日の出桟橋待合室には人人人で溢れかえっていた。

待合室前には、はとバスがずらり。

東京湾クルーズの予約客の一群はどうやら台風なんぞ関係ないらしい。

乗船前とあって皆ニコニコ興奮気味。

老いも若きもポテトチップスとかビールとかを摂取しながら

満面の笑顔なのである。

ほほう、こっちの常識と真逆の一団をついに発見した。

そうこうしているうちに親戚の連中がパラパラと集まり始めた。

一様に濡れた礼服の水滴を払いながら「大丈夫かね」と口々につぶやく。

やはり不安かつ難しい顔を皆しているではないか。

思うに、あの楽しそうな一団はいまから東京湾クルーズを楽しんで、

まあ午後2時には下船。で、さっさと家路を急ぐのであろうと。

こっちは、その後の夕方、暴風圏のなかを乗船。

で、わいわいなのかどうなるのかよくわからないが、

夜まで宴会のようなものが続く訳なのである。

雨降って地固まるか

乗船して、まず親類写真の撮影となったが、

どうも岸壁に停泊していると結構揺れるので、

なかなか皆一様にポーズが決まらない。

なんだか皆緊張気味に足を踏ん張っている。

当然私も踏ん張る。

ずっと震度2という揺れ状態が続く。

この揺れに逆らうと余計に疲れるし酔うのであろうよ。

早速、海底で揺れる海藻を思い出し、

なんとなく揺れるがままにしていると少し体が楽になることを発見。

以降、そのスタイルを貫くことにした。

東京湾のクルーズ路線は台風のため変更・縮小され、

お台場あたりをふわっと進行している。

高層ビルが霧でかすんでいる。

どこも灰色がかったモノクロームな景色一色である。

が、船内はというと若い連中で盛り上がっているではないか。

酔っぱらって気分が悪くなって甲板に出ようとしている若者をみかける。

その蒼ざめた顔をみてなんだか笑ってしまう。

こっちも次第に、嵐のなかを楽しむのもなかなかのもんで

なんか悪くないんじゃないかと思えてくる。

シャンパン、ワイン、ビール、フォアグラ、ローストビーフ。

ガンガンと食いまくる。

久しぶりにアルコールを摂取してみる。

窓の外を眺めると、嵐はさらにひどくなるも、

船内の熱気はさらにヒートアップ。

歓声の連続が響き渡る。

みんな心底からふたりを祝福しているのがみてとれる。

こうなると若い連中に乾杯ですね。

やはり若いってひとつの特権だと思う。

この世知辛い世の中だけど、まあそのくらいのパワーがないとね。

誰かが例のつまらないスピーチをしていた。

「雨降って地固まる…」

頼もしいふたり

新郎のスピーチでも今日という台風の最中の結婚式を、

皮肉ではなく一生思い出に残ります、

そして今日のように嵐のような状況から出発するのも悪くないと、

かなりポジティブな発言をしていた。

彼は本気でそう思ったのだろうよ。

姪よ、幸せになってくれ。

下船は夜の7時を回っていた。

待合室には誰もいない。

昼間の喧騒がうそのようだ。

風雨がさらに激しくなる。

みな満足げに下船してきたものの、

あまりの激しい雨に呆然としている。

やはりタクシーが全く捕まらない。

しかたなく、誰もが覚悟を決めて、

暴風のなかを燦々囂々散ってゆく。

港では作業員がせっせと建物を囲むように土嚢を積み上げている。

やはりギリギリの船上結婚式だったらしい。

箱根―ピカソとシャガールと…

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先々週、行ってきました。

箱根はいまとにかく混んでいます。

特に、湯本と芦ノ湖。

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観光地の起点と終点と考えれば当然でしょう。

日、月曜と行ったので、初日は当然混雑に渋滞です。

いや、月曜日も混雑に渋滞でした。

いまは平日も混んでいますね。

大涌谷付近は一部通行止めがあります。

その後噴火がどうなのか知りませんが、

晩夏の箱根は気持ちがよくて美しい。

今回の目的は、まずポーラ美術館。

そしてガラスの森美術館。

あと芦ノ湖の成川美術館でした。

仙石原にあるポーラ美術館はいま

「ピカソとシャガール」やってます。

ピカソは過去数回観ていますので、

おおっという感激はやや薄れました。

シャガールは新鮮だったので、

ほほぉという驚きと魅力の交錯です。

ポーラ美術館は、国立公園内にあるので、

付近の景観を損ねないよう、とても低く、森に沈み込むように、

しかし純白に光り、かつ個性的なフォルムでたたずんでいます。

ここは幾度となく足を運んでいますが、

今回は鑑賞のあと、

美術館の裏手の森を歩きました。

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ちょっとひんやりとした遊歩道をゆくと、

ヒメシャラの木々からの木漏れ日が、

きらきらしている。

ふっと肩の力が抜けるのが分かりました。

そうそう、

ピカソとシャガールって、友人同士だったらしい。

私は初めて知りました。

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ピカソの初期の絵はとても好きですが、

キュビズムに入ると、うーん理解しようとすると難しくなる。

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シャガールはとにかく夢のような絵を描く。

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そうした作品がたくさん展示してあるので、

まさに夢遊病者のように絵のまわりをうろうろしてしまうのです。

期待どおりでした。

ポーラ美術館には、モネ、ルノワール、セザンヌ、

マティス、ゴッホなどの作品も所蔵されてるので、

鑑賞後は怒濤のような感情が押し寄せ、

胸いっぱいお腹いっぱいになってしまいます。

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一息吐かないことにはと思い、

館内のカフェをのぞくとやはり混んでいました。

という訳で、アイスコーヒーを諦めて、森を歩いたのですが…

クールダウンにはうってつけでした。

ここからガラスの森美術館へは、車で10分ほどの近さ。

ここもやはり混んでいました。

館内はどこも絵葉書のような風景がひろがります。

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ここへ来た目的は、ずばりヴェネチアン・グラス。

所蔵の数は、きっと東洋一ではないかと思います。

クラシックなものから現代のものまで、

ズラッと展示されている。

園内の木々にはスワロフスキーとおぼしきガラス玉が惜しげもなく飾られ、

陽光と風を受けてあちこちでキラッと光る。

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レストランではイタリア人歌手によるカンツォーネのライブ。

私は初めて生で聴きましたが、嫌いじゃない。

なんというか、日本の歌謡曲のようなものでしょうか。

私は過去にも一度経験したことなのですが、

食事中にテーブルに近づいてくる生歌・生演奏って、

まあとても疲れますね。

食しながらアーティストに気の利いた笑顔と拍手を送る―

どっちか一方にして欲しいですね。

この前日には芦ノ湖の成川美術館に行ったのですが、

ここはここで素晴らしい。

特に、平山郁夫の絵がいいんです。

芦ノ湖を見下ろす景勝の地に立地しているので、

やはりガラス張りのカフェは人気でしたね。

さて、感想として連日の美術館巡りは、

やはり疲れます。

もっとじっくりと

もっとゆったりと

さらに味わうと

描いたひとも観るひとも本望なのではないか。

そういうのをホントの贅沢というのでしょう。

紅葉の頃にまた尋ねたいと思いました。

2017 お盆どきの話

その1

現地到着が遅かったと後悔。

陽は既に沈んでいるが、まだ空は明るい。

山中湖畔から別荘地帯へ。

車で奥へ奥へと上ってみると、

ちょっと異様かつうっそうとした森に出くわす。

薄暮ではあるが、先が暗くて全くみえない

(この空気、普通じゃないなぁ)

そのまま進んだら、ひょっとして異次元に入り込んでしまうんじゃないだろうか。

躰がスッと冷えたのが分かった。

こういうところって、各地に確かにあるんだよなぁ。

その2

今日の織田裕二にインタビュー

今回の大会はいかがでした?

 「とにかくオレ、

はしゃぎませんでしたよ、ねっ」

まだ興奮は続いているようですが?

 「まだ寝てませしぇーん、イェーイ!」

そういえば腰、大丈夫ですか?

 「もうね、ダメ。オダねぇ、もう年なんだよ」

とんでもない織田さん、相変わらずエネルギッシュですよ!

「だってね、記録は現場ででるものなのね、現場!

テレビ局ではないんだ!」

記録は現場で生まれている?

「そう、次回もオレ、やるから!」

ありがとうございました。

その3

少し、出っ張ったお腹を凹まさなきゃと、

目の前にある饅頭を食うか食うまいか、

じっと眺めながら思案する。

が気がつくと、

日本上空を飛ぶかも知れないミサイルを打ち落とすか否かという問題に

すり替わっていて、

それは集団的自衛権の範囲内なのか、

いや打ち落とすのは集団的自衛権の拡大解釈となるのか、そこが難しいところではあるな、

という問題を思案していた。

最近、もう少し腰を据えて物事を考えた方が良いと、

自らの腹を叩く。

その4

なじみの床屋へ行き、

座りざま、マスターにとにかくかっこいいヘアスタイルにしてくれと、

そのままウトウトして座っていると、

そんなボクを退屈と思ったのか、

「うちの奴が変な写真撮っちゃってさ。見る?」

「うんいいよ、見ようよ、どれ?」

少し背を起こす。

スマホをいじりながらマスターが突き出した写真は、

浜辺の神輿祭りの写真だった。

見物人がかなりの人数映っていて、

そのなかの一人の男の人の首から上が映っていない。

他の画像になんら異常がない。

いろいろあって、その日の夜に蕁麻疹が出た。

満月でした!

空、観てます?

昨日は満月でした。

満月の日は、朝から頭痛とか、

体の不調が顕著です。

気がつくと満月。

なので満月は嫌いなのですが、

絵にはなります。

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狼男も満月になると人を襲います。

赤ちゃんも満月に産まれる?

これはよく分かりませんが、

そんな話を聞いた覚えがあります。

地球の衛星である月は、

私たちにどんな影響を与える?

月の裏側には、実は宇宙人の基地がある?

満月の日の事故率は高い。

皆、感情が昂ぶるそうな…

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新しい財布を満月に使い始めるのだけはやめましょう。

それは新月ですよ、

新月!!