物語の途中で詩を思いつきまして…

「ジャミロクワイを聴きながら」

僕らはいつも

タフに動き回り

利口に立ち回り

この世界の文明とやらを享受して

生きているけれど

一体いまのこの状況って

なんなんだい

僕らはとっくに気がついていて

僕らはとっくに知っていて

狂気の沙汰のこの時代に

唾を吐いても

笑われるだけだし

狂気の沙汰のこの国に

ものを申しても

捕まるだけさ

まあ

僕も相当慣れたけど

そして

君もそのようだし

だけど

もう誰も戻れないよ

もう人は帰れないんだ

狂った空間

イカれた世界

今日も君とデートだね

例の地下街にでも行ってみるかい

狂った奴らがうごめいて

虫やら何やらを頬張って

そして

笑って

踊っているだけさ

だから

僕たちはいつも

タフに動き回り

利口に立ち回らなくては

いけないんだ

南回帰線

貿易風の吹く6月の丘に

ハイビスカスの花が咲き

一人の少年が

ずっと海をみつめている

南回帰線の島

椰子の森がざわめき

海鳥は

滑るように飛んでゆく

少年は背筋を伸ばし

立ち尽くす

以前

カヤックを削りだし

夜の沖へ出た

星を見失い

それでも漕いだが

波が荒れて怖くなり

凪が続くと怖くなり

行く先がみえず

島へ引き返した

少年は島を捨てたかったのだ

あの遠い

いつかの旅人が教えてくれた

北の国へ憧れた

北の国には

黄金が眠り

美しい少女と

そして

北の国には

雪が降るという

少年は

島で

いつも船をつくっている

貿易風が彼にささやき

ハイビスカスの花が

彼に寄り添うように

咲く

少年はただ無言で

やがて

絶望を追い払うと

毅然としたまなざしで

海の向こうの希望を

いつまでも凝視した

俺たちのロック

タバコの煙は

行く宛てがある訳じゃなく、

ただ漂っていたって

悩みも消えないだろ?

だから逃げてゆくのさ。

きっと、そういうことなんだ。

首に手を当ててみなよ、

ナマ温かくてドキドキしているだろ?

そう、生きていて、

嘆いても嘆いても生きていて、

それは、今更しょうがないことなんだ。

きっと俺たちは、

空っぽの部屋で生きていて、

だから、俺たちも空っぽでさ、

空っぽの時間をさすらっている。

だから、掻き鳴らす、

狂ったように叩く。

きっと

肉体っていう奴を、

人は、大昔から憎んでいたんだよ。

だから酒を煽る、

煙を飲み込む。

辛さも何もかも飲み込み、

胃の中でかき混ぜ、

今日も明日もそうやって

彷徨っているのさ。

だから、一人で遠くを見ていると、

風の中で笑っていると

雨の日に泣いていると

ただ、次第にむなしくなるのさ。

生きる価値があるかないかってこととか、

昨日とか明日とかって本当にあるのかとか、

ホントはお前は誰なんだと鏡に話しかけたり、

そうやって自分を疑い続ける…

生き物はね、みんな浮き草で

宇宙のゴミみたいで、

みんな生きているのに、

その理由がなにひとつみつけられなくて、

死んで未練も残せないほどに忘れられて…

さあ、

バイクで200キロオーバーはどうだい?

やってみるかい?

走るかい?

粉々になるまで突っ走れば、

心を置き去りにできるし…

いや、それとも飛び降りてみるかい?

きっと、その脳とやらに、

永遠にさよならできるぜ!

どうだい、

そうやって生きてみると、

やがて光がみえることもある、

らしいけれどね…

まだ眠っているような居間に降りて

とびっきりうまい炭酸水をひとくち

遠くに響く空のうなりは

朝のほんのひとときの

空のあくびだ

家電の小さな騒音に

世界は動いていると確信し

なにも思うこともなく

空気でも眺めるように

ぼうっとする時間が過ぎ

炭酸のはじける音に

耳を傾ける

こうして朝は始動し

夕べの夢は彼方へ消え

朝陽がすっと入り込み

スムースにジャズは流れ

野鳥が庭の花をついばみ

人の足音が朝の正しさを刻み

遠くの国道が騒がしくなり

やがて

家人が蛇口をひねり

とんとんとなにかを刻めば

僕の朝の第一章は終わり

もう二度と訪れない

今日という

かけがえのない日が始まる

   漂う女

火を喰う男は

いつも夢をみるんだ

砂漠の真ん中で

酒を煽ると

いつも泣いて

その女のことを思い出す、とね

遠い昔

その女は海から這い上がると

体中に海草や貝をぶら下げて

その男に会いに来たというのに

「お前は抱けないな」と

その男は火を喰いながら

女を突き飛ばし

そうかねとうなだれ

そうかねと

入り江に飛び込んで

その女は

永遠に

漂う女になったそうだ

火を喰う男は

また夢をみたんだ

海を見下ろす丘で

酒を煽ると

いつものように泣いて

その女のことを思す、とね

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空を見上げて

楡の木の下

流れる雲

陽だまりに君は寝ころび

僕は空を見上げて

言葉を探している

好きとか幸せとか

そういうのじゃなくて

なんだか

突然やってくるような

たとえば天地が動くとか…

いま

世界のなかの

ここはふたりの楽園だけど

逃げる準備はいいかい?

銃は撃てるの?とか

僕は考えていて

ひらひら舞うモンシロチョウを

毒虫にみたて

パーン!とね

君は寝息をたてて

まどろんで

まるで呑気な子猫のように

夢の国の住人で

時折僕に微笑むけれど

相変わらず僕は

空を見上げ

たぶん

この世界で起こる

とても憂鬱な言葉を

探しているんだよ

イキテイル

群れのなかの僕は

人を感じ

温かく明るく

そして笑って

いつの頃からか

それは刺さるように

凍るように

視線

海辺に出ると

隙間は酸素の拠り所であり

包まれる密度は濃く

それは温かさではなく

細胞に寄り添うような粒でもあった

素粒子

森の気配は

湿度のようにまとわりつく親近感と

寄せ付けない警戒感

五感をフル回転させるほどに

それは生命の歓喜であったし

驚いたことに

森は私の細胞に

深く静かなシンパシーを送る

胞子

それは言葉ではない

感覚でもない実感に充ちて

ひとつひとつの確かな有体が

秩序正しく

論理的に

厳正に

私を振り返させ

息を吹き返す

復活

ネオン異臭

人街ガラクタ

騒音電波

ギガテラバイト

怒・悲・哀…

とりわけ

愛情という曖昧に救われ

ヤハリ

ボクハイキテイル

同時代の僕たちへ

僕たちは、

間違いなくこのステージ(時代)を生きていて

時の狭間に志や想い出

家族や愛とかを慈しんでいて

そして

時期が来れば土に帰り

空に舞い

思えば無ではなく

輪廻転生の果て

何処へ行くのかと

少なくとも

此処においての課題は

いままで、そしてこれからも

自己との戦い

そして調和

自らを苦しめる

己を自由にする

総ては我が心のなかにあるのだと

生まれたままの我

育っていく我

これらを桃源郷へと誘うのも

やはり自らなのだろう

心が整えば

そのとき自己との戦いは終わる

調和する

それは

例えば死であり安息であり

到達であり

新たな旅立ち

人はそうして何万年も生きてきた

今日

僕たちはまた歩き始める

さあ

超える力を手に入れろ

心のことばを紡ぎだせ

そして

我に幸あれ

幸抱け

ホーリー・ナイト

真夜中の

ラジオからこぼれる

クリスマスソングの

メロディに乗って

ひょこっと飛び出だしてきた小人たちはみな

色とりどりの派手な衣装を身にまとい

列をなして

テーブルを

ゆっくりと通り過ぎる

緑の帽子を被った小人が

ちらっとこちらを向いて

おどけた笑顔でフルートを吹く

真っ赤な太鼓の小人はバチを高く挙げて

どんどんと叩いて

大きな腹を突き出して

(おや

これはパーティー?)

にぎやかな行進はやがて

つめたい窓の隙間から冬の風に乗り

夜空へとのぼってゆく

そして音は徐々に遠のいて

きらきらとした階段が

やがて雲を掴み

小人たちが

そのふわふわのなかを跳ねて転んで

遠い星の光へと

消えてゆく

(神さまの処へ行くの?)

冬の空のきらめきに

静けさが戻り

ラジオからはとても素敵な賛美歌が聞こえてきて

あたりは次第に

祈るような夜となる

一人ぼっちの僕への

イヴのプレゼントは

夢の時間

誰も知らない夜話

冬の心

どこまでも続く海岸線で

もう少したてば桜が咲くよと話してくれた

おばあさん

もういないのかい

いろいろな事があって

あの人もこの人も逝った暦の春が

またくる

今年もクリスマスがやってきて

海は静かで

ああ

正月にどう笑えばいいのかな

そんなことを考えたり

そして

雪を掻いたりしているうちに

やっぱり

春はやってくるのだろう

いったい

なんの春がくるのかな

海岸に

忘れ物の弁当箱と転がったサングラス

冬は嫌だな

(静かで寒い

寡黙な日に…)