雨が激しい中、渋滞を抜け、やっと会場へたどり着く。
すでに、会場の入り口では、人がごった返していた。
あっちこっちでオジサンやオバサンがなにかペチャクチャやっている。
今日のコンサートの特徴は、若い人がいない、というところか。
腹の出たオッサンやら禿げたの、皺の目立つ厚化粧のオバサンも
みんなにこにこしているのが可笑しかった。
ドアの近くではムムッ、ペンライトを配っているではないか!
そこをスルッと抜けて、ウチのオクさんと最後部の席に座る。
ベルが鳴り、会場が徐々に静かになる。
と、カラフルなライトに照らされ、いきなり現れた生ワイルド・ワンズ!
往年のヒット曲「青空のある限り」や「花のヤング・タウン」からいきなりヒート・アップ。
ペンライトが左右に揺れる。会場は凄い熱気で、やや引きづり込まれる。
ドラムの植田君は、今年59才になり、白髪にはなったが声もドラムの勢いも、当時のまま。
うーん、いつの間にかあの懐かしい中学校時代に、私もタイム・スリップ。隣のオクさんは
口をぽかんと開けて、ステージをじっとみつめている。
曲の合間は、ステージのおしゃべりのうまさに会場も沸くが、当時と違うのは
彼らがコミック・バンドに近いという、素が見えたことか、はたまた時代の流れか?
そして彼らが、いや、グループ・サウンズがみな影響を受けたビートルズナンバーの演奏を織りこむ
親切さも忘れない。
ラスト、「想い出の渚」を聴く頃には会場が一体となり、全員ヤング(古い言葉だなー)に
戻って、黄色い声とペンライトとみんなのノッてる背中が印象的だった。
しかし、この後がさらに凄かった。
いまは亡き井上忠夫を欠いたブルー・コメッツが、三原綱木をメインボーカルに
ジャッキー・吉川の迫力のドラムで、いきなりあの「ブルー・シャトー」だ!
会場は、いきなりさらにヒート・アップ。
空気は、昭和40年代半ばへとみんなを連れて行く。
この力は、同時代を過ごした人間にしか分からない独特の郷愁なのかもしれないな、
とも思うのだが、私の脳裏は、当時のクラスメイトや部活の様子などが生々しく
蘇る。
三原綱木は、今年62才。ジャッキー・吉川は、なんと70才を越えているという。
彼らが、こう言う。
まだまだ夢を追いかけている、と。
そして唄ってくれたのが「夢の途中」という、初めて聴く曲。
私はブルコメより、いやワイルド・ワンズのメンバーよりまだまだ年下なのに
なんだか、最近年寄りじみた自分が恥ずかしくなってきた。
そして、グループ・サウンズが生んだナンバーワンバンド、タイガースの曲で
会場の熱気は頂点に達すると
なんだか、オジサンとオバサンたちが、若い若い学生たちに見えてしまったのは幻か?
みんな、どんな時代を過ごし、今日この会場に来たのか?
まだどしゃ降りの会場を後にして、オクさんと蕎麦屋に入ったのだが
お互い、言葉が途切れ途切れ。
ため息とともに「良かったネー」という、単純な感想しか出てこなかったのが可笑しい。
やっとボソボソと会場の様子やら当時のG・Sの話に辿り着き、冷静さを取り戻してゆっくり
蕎麦を食べる。
熱も程々に冷め
蕎麦屋の外に出る頃には、雨もやみ、冷たい空気がとても新鮮でうまい。
そして思うのだ。
生きてゆくってこの年になってもよく分からないが、きっとこうゆう事だと。
いろいろな事があって、泣いたり笑ったり、悲しかったり感動したり。
それが幾重にも重なって、時間が流れてゆく。
そして思い出は悲しく、美しく。
ムカシの運転を思い出して
いつもよりちょっと飛ばして、静かな夜の国道を、中年のカップルが疾走する。
