悲しみのポレフ

自分に降りかかった悲しみを

過去の嫌なことを

いつまでもかみしめないこと

尽きないものは終わらないのだ

ましてや

深みにはまってはいけない

辛いときには

私は悲劇のヒロインではありません、と

神様に告げることにしよう

リセットする

生まれ変わる

真っ新な心

そして

簡単な身支度をして

旅立ってしまおう

心は広くて狭いから

手さぐると

奥へ奥へと入ってしまうので

いま生きなくてはならない旨を

天に告げておこう

涙を振り切って進むことは

私たちの義務である

生きることにしがみついてみる

新しい自分を探しに

新たな世界を創ることに

総てが燃え尽きるまで

前へ前へ

下手な笑顔は辛いけど

さまになれば本当になり

やがて

素敵なものを運んできてくれる

でないと

いつまで経っても

悲しみのポレフ

命がもったいないじゃないか!

ドラマ

光のしずくがひとつこぼれて

自分が生まれたと

思うことにしよう

私は私であって

他の誰でもないこと

かけがいのない私であること

じゃないと

生きていけないだろ?

たとえば

有り余るほどの時間と

物語を消費する歴史に

やさしさはあるのかなと

ふと考えてしまう

ましてや情が絡んでくれると

涙が出るほど嬉しいけれど

歴史って奴は

思いの外

残酷なんだ

潰されるなよと時間が笑う

いま

この舞台で生きているということ?

演じているのか

演じさせられているのか

ここはひとつ

考え所であると

いつも思いあぐねる

役者のひとりとしては(笑)

真剣に真摯に

取り組んでいるつもりなんだが

いつも吐く言葉は

単なる台詞なのか?

きのう

あのひとにつぶやいた言葉は

果たして

あらかじめ用意されたものなのか

という問題は

私という存在の意味を問う

歴史的な難問でもある

はじめに言葉ありき

その拠り所を知ることに

生きている意味が隠されている

私はその事柄にいつか気づくのだと

信じるようになった

人生のペテン氏にならないために

自分が代役しか務まらないことのないように

生きるのだ!

今朝は

初夏の日差しがまぶしいくらい

陽気な幕開けなのだが

さあ

どんなスペクタクルが用意されているのか

凡庸な一日が待っているのか?

まずは用意された

いや!

私だけの

せめて私が考えた

アドリブの台詞を

私に語らせて欲しいのだ。

風の詩

飲み干したジンのグラスから

こぼれて溢れる言葉は

踊るように庭を飛び出し

外気に乗って

風になった

風は言う

私はこれから世界を巡るけど

もうあなたの所へは

帰れない、とね

風は旅人だという

二度と帰らない旅人だと

構わない

せめてこの言葉を

誰かに届けてくれ

世界の何処かに、誰かに

風は海を渡り

草原を越え

そして

果てしなく続く砂漠に

降り立つ

遠い遠い国の風は
年をとった

もうあれから
どの位の時間が
経ったのだろう

やがて

誰もいない砂漠で

風は命を閉じた

砂の上に

言葉だけが転がっていた

誰にも届かない言葉

風は旅人

決して戻ることのない

旅人

今夜もまた

言葉はグラスに溢れ

カーテンを伝い

窓際から表へと

消えてゆく

言葉は

風に混じり

そしてまた

世界を巡る

きっと私も

一夜の旅人なのだろう

ロンサムカーボーイ

決して沈まない太陽が
山肌に垂れ下がり
ほおづえをつきながら

笑う

ちりちりと枯れ草が焦げ

溶けたアスファルトが
悲鳴をあげる

ロンサムカーボーイ

赤い土を蹴飛ばす
傷だらけの
凹んだ皮ブーツ

「ここで
純白のドレスをまとった女神に
出会うことなんて
まずないぜ」

総ての想いが干上がり
そして
オレのアタマの中は
無に帰るのか?

ひび割れた唇から
懐かしいメロディーがひとつ

それは消えてなくなる
最後の言葉

ロンサムカーボーイ

あのオトコが
わかれ際に吐いた台詞が
笑わせる

「また会おう!」

土埃を舞い上げ
やがてオレは
ここから消えてゆくのだろう

一匹のサソリが
穴から這い出て
言うには

オレという人間は
ロクデナシ
らしい

ロンサムカーボーイ

裏切り者は
遠い町で女と恋に落ち
水をたらふく飲むことを
夢見る

ここは掟の町

なにも変わりはしないのだ

なにも変えたくないのだろ?

死人の町の秩序は
いつだって
こうして

保たれているのだ

希望の詩

下弦の薄明かり
三日月の下

とぼとぼと人が行く

空には星の如く
飛行機が光ってやがて小さく
消えてゆく

何処へ?

すっと目線を上げれば
山々は遙かにたなびき

揺れて流れる雲海は
海の底に落ちてゆく

すべてが何をめざして
なぜ存在しているのかと思う

心を静寂にして想えば
知れども知れども
底なしの淵に沈み

やはり見えないものは
自分の内の行方なのか

いまだ消えない炎のように
誰も知らない秘密のように

月は東へ

悠久といえども
たったひとつの物語り
永遠といえども
限りある命

やがて月は
麓に下りれば

総てが時の溜まり場となり

そして陽は昇る

それでも
また陽は昇る

生きているって何?

寒い寒い冬の真夜中に
コーヒーをのみながら
ふっと考えてしまったよ

生きていることに意味はないんじゃないのかい、と

ただ生きていれば、カラダのあらゆる器官が
いろいろ動いてくれて考えてくれる

泣いたりもするしケラケラ笑ったりもする
嫉妬という複雑系の動きもするし
思索となるともっとこんがらかり系だな

恐怖にかられる、夢を見る
そしてユメミル!

過去を思い出し
先を考え
現在を生きている

そのことにきっと意味はない

隣で飼われている犬だって
ときどき哲学者風に気むずかしい顔をしている

夕べ、魚を焼いて食べたが
鰺という魚に生きている意味があった

それは「美味い」と言ったら失礼か?

幼いときに雨蛙を飼ったことがあるが
カエルさんの表情にボクはドキドキしたな

意味ありげに座り込む彼は
喉のあたりを頻繁に動かしながら
やっと生きていたのを
現在でもクッキリと覚えている

みんな生きているんだなぁ!

死んじゃったらお終いだよ

生きていることに意味はないが
死んじゃったらお終いだよ

なんで?

死んじゃったらお終いじゃないよ

僕らは生き続けるんだぜ

僕らは生き続けて
他の世界に行くんだ

もうここにはいないけれど
生き続けているんだぜ

それはいろいろな人の
沢山の人の胸のなか
想い出のなかでも生きている

生きていることに意味はない?

でも生きている

生きているってなんだろう?

考えてみても別に意味はない

ただ、こう思わないと
とても悲しいんだよ

なんの偶然か知らないけれど
みんな生まれてきたんだ

そこに意味はないのかい?

生きていることに意味がある?

うん
君もボクも何で生きているのか

それを探す日々が
きっと
生きていくってことなのかな

死んでも無にならないって思いたいことが
生きていることなのかな?

生きている
生きてきたって

きっと
こんなことなんだろうな

もうすぐ夜明けがきて
辺りも明るくなる

コートを羽織っておもてにでも出てみようか

今朝も寒そうだ

きっと庭の花水木の木も
強い風に冬の枝が揺さぶられて
最後の赤く枯れた葉が
枝を離れてふわっと飛んでゆくよ

阿知山にまた陽が昇る

ヒドノハ

遠くに座る山に白いものがみえたら

私たちは支度を済ませて家を空ける

なぜって

ここの冬の平均気温はマイナス30度だし

それだけなら

まあ暮らせないこともないが

やはりあいつが下りてくるからだ

あいつはなんでも喰う

特に生きものには目がなく

人間は好物中の好物らしい

いろいろ戦ったがみんなやられちまって

もうこの辺りであいつを殺す力のある奴は

誰もいやしない

あいつと言ったが一匹じゃない

遠くで見た奴に聞くところによると

数百は優にいるらしい

これでは多勢に無勢だろ?

あいつの祖先は元々人間だったらしいが

ある時山へ入って行ったっきり

そこでなにがあったのかは誰も知らないが

あるとき目を剥き口が裂けて戻ってきた

そして家族を次々に襲って喰い散らかし

また山に戻って行ったという

あの山になにがあるのかって?

いや分からない

ただあの山の呼び名はヒドノハだ

そう

憎しみの山っていう意味なんだ

記憶

野辺に咲く花は

何を想う

それが分からないから

私は悲しいのか

空に浮かぶ雲は
何処へ行くのか

私はそれが知りたいのに

誰も教えてくれない

浜辺の波は

なぜ寄せては返すのかと思うのだが

そこに答えなどないと言われると

切なくなる

遠い遠い記憶が

語りかける

私は一体誰なの

あなたはこれから
なにを描くの

だから
くる日もくる日も

私は
途方に暮れる

ナタリー

蒼い湖の底に漂う
水のような瞳に

ゆったりとした広い額が
美しい

そんな華奢な体の何処から
あなたの情熱はうまれてくるのか?

仕事でなく趣味ではなく
あなたは少女の頃から
或る一点をみつめて
生きてきた

コスモスのように奥ゆかしくも
どんな風雨にも耐えた強さと
可憐

恥じらいながらも迫ってくる
その情熱は
いまでもその炎を燃やして
生きている

何を捨てても進むことを恐れない

何が遮っても歩くことを忘れない

恋は時にうつろいやすいのに
あなたにどんなブレが
あるというのか教えて欲しい

いつも変わらず
絶えず笑みを忘れない

あなたはあなたのままで

そのままで

だからこの愛

これからも
いつまでも

※一見キザですが、ラテン語に訳してこの詩を歌ってみてください!
 サイコーです!

心の方程式

千年も

一瞬にして過ぎる宇宙の方程式

どれ程のものか、私の一生などと
あれこれ考えているうちに
消えてしまうものだから
華々しく振る舞ってみても
空振りの心は
枯れた葉の一枚さえ落とすこと
ならず

では万年生きる
亀になりたいなどと
思ったところで
如何ほどの悦びが
あなたを戯けてみせるのか?

そのおかしさは蝉に聞いてみれば
分かるだろうが
生々しくいまは
誰もその虚しさに気づくことなく
じゃあ
長寿の象になりたいなどという

人は一瞬の旅人なりて
その場その場を汚すことなく
立ち去ることと
堅く知るべし

暴れる心は
そうして永遠に辿り着くのだが
その人
そうそう他言せず
いそいそと
次の旅へ消えていくものだから
やはり知る人なく
今日も人間は考えあぐねる

まばたきするその瞬間に
千年の時の流れを
移ろいやすい心に
染み込ませたならば
その心に敵うものなく

私もまた
蝉でもかまわないと思うのだ